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「あやしい彼女」のワンシーン(C)2016「あやカノ」製作委員会 (C)2014 CJ E&M CORPORATION
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「あやしい彼女」のワンシーン(C)2016「あやカノ」製作委員会 (C)2014 CJ E&M CORPORATION

注目映画紹介:「あやしい彼女」 多部未華子が“女優魂”開眼!? 昭和の歌とファッションが彩る若返りコメディー

 女優の多部未華子さんの主演映画「あやしい彼女」(水田伸生監督)が1日に公開された。2014年公開の韓国映画「怪しい彼女(英題:Miss Granny)」(ファン・ドンヒョク監督)を、「舞妓Haaaan!!!」(07年)や「謝罪の王様」(13年)の水田監督がリメークした。73歳の毒舌おばあちゃんが、ひょんなことから20歳の姿に若返り、歌手デビューのチャンスをつかむ………というコメディー作。多部さんは撮影前に約3カ月間、歌の特訓をして、自ら「見上げてごらん夜の星を」(1963年)、「真っ赤な太陽」(67年)、「悲しくてやりきれない」(68年)など懐メロの名曲を劇中で自ら歌っているのも見(聴き)どころだ。

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 女手一つで娘を育て、自身が望むような人生を送ることができなかった73歳の毒舌おばあちゃん・カツはある日、娘(小林聡美さん)とケンカして家を飛び出し、吸い寄せられるように1軒の写真館にたどり着く。そこでカツは、写真を撮り、店を出ると20歳の姿に戻っていた。かつての美しい姿を取り戻したカツは髪形や洋服、さらに名前も節子と変えて、新しい人生を楽しみはじめる。あるイベントで歌っていると、その天性の歌声に引かれたイケメン音楽プロデューサーにスカウトされ、歌手デビューのチャンスをつかむが……というストーリー。ヒロインの20歳の姿を多部さん、73歳の姿を倍賞美津子さんが演じ、恋のお相手のプロデューサーは要潤さんが演じている。

 映画を彩る音楽は、水田監督が演出したドラマ「Woman」(13年)や「Dr.倫太郎」(15年)なども手がけた三宅一徳さんが担当し、劇中歌は「スワロウテイル」(96年)や「リリイ・シュシュのすべて」(01年)、またMr.ChildrenやMY LITTLE LOVERらアーティストのプロデューサーとしてヒット曲を世に送り出してきた小林武史さんがプロデュースした。

 この手の人生リセット劇や心と体の入れ替わりというモチーフは映画やドラマでこれまでもいくつか作られてきたが、今作はそこに60年代の名曲が加わり、さらに70年代ファッションが全編を彩っていて一際華やかだ。ただ根底に流れるテーマは、親子や地域との絆だったり、戦中派が自分の人生を生き直すという“生き方”を考えさせられる奥深いもので、コメディーだからといってただ笑い、ファッションを目で楽しむだけでなく、ほろりとさせられ、自分の人生を振り返るのに最適な作品に仕上がっている。

 出演者は、倍賞さんや小林さん、要さん、志賀廣太郎さん、温水洋一さん、あの「他人の関係」(73年)を歌った歌手の金井克子さんら芸達者がそろっているが、一番驚いたのは多部さんの芸達者ぶりだ。歌はもちろん、ライブシーンでの堂に入ったステージング、演技も心は本当に73歳なんじゃないかと思えるべらんめえおばあちゃんぶりにはおそれ入った。多部さんの“女優魂”が感じられる良作。1日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(細田尚子/MANTAN)

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