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映画「ボンジュール、アン」について語ったダイアン・レインさん(右)とエレノア・コッポラ監督
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映画「ボンジュール、アン」について語ったダイアン・レインさん(右)とエレノア・コッポラ監督

ダイアン・レイン:エレノア・コッポラ監督と「ボンジュール、アン」語る 美しさの秘訣は「遺伝子」?

 米女優ダイアン・レインさん主演の映画「ボンジュール、アン」が7日に公開された。メガホンをとったのは、フランシス・フォード・コッポラ監督の妻で、ソフィア・コッポラ監督の母でもあるエレノア・コッポラ監督だ。脚本も自ら書いた今作は、エレノア監督にとって初めての長編劇映画監督作となる。作品のPRのために来日したエレノア監督とレインさんに話を聞いた。

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 ◇苦労した資金集め

 ダイアンさんは15年ぶりの来日。エレノア監督は、ソフィアさんが監督した「ブリングリング」が東京国際映画祭で上映された2013年に一緒に来日して以来。取材場所となった日本旅館「星のや東京」の畳の部屋に、「ハロー、ナイス・トゥ・ミート・ユー」と素足で入ってきたダイアンさんからは、リラックスした様子と飾らない人柄が伝わってくる。一方のエレノア監督は、静かなたたずまいの中に度量の広さを感じさせる。

 映画「ボンジュール、アン」は、著名な映画プロデューサー(アレック・ボールドウィンさん)を夫に持つレインさんが演じるアンが、夫の仕事仲間であるフランス人男性ジャック(アルノー・ビアールさん)が運転する車で、カンヌからパリに向かう“小旅行”を描いたロードムービーだ。これまで、ドキュメンタリー作品は撮ってきたが、フィクション映画は初めてのエレノア監督。自身の体験が基になっているだけに、「ストーリーを考えるのは楽にできました」と話すが、「カーチェイスもガンアクションも宇宙人も出てきません(笑い)。女性には理解されても、男性はこれでは映画にならないと、なかなかお金を出してくれませんでした」と製作資金集めに苦労したことを打ち明ける。

 夫のフランシス監督は、最初はこの企画に乗り気ではなかったという。なぜなら、エレノア監督によると、「彼はお金集めの苦労をよく知っています。製作までこぎ着けられなければ、私が悲しむことを分かっていた」からだ。しかし、フランシス監督は、最後の最後には出資者を説得するなどし、ひと肌脱いでくれたという。

 ◇ゆとりを持ち、瞬間、瞬間を味わう

 今作は、エレノア監督が、アンを演じたレインさんと同年齢、つまり50歳の時の体験が反映されている。だがレインさんは、当初、そのことを知らなかったし、撮影が始まっても、あえてエレノア監督に“真相”を尋ねなかったという。レインさんは、「アンは、エレノア自身の体験と、彼女が理想とする女性、そして友人にもらった最高のアドバイスを掛け合わせた“ハイブリット”なのです」と分析し、「エレノアは、最高の映画を作るのだという情熱を持ってこの作品に取り組みました。彼女の映画作りの経験を、アンを通して体験できたことを、私はとても光栄に思います」とエレノア監督をたたえる。

 一体、どの程度がエレノア監督の実体験なのか。その質問にエレノア監督は「確かに、フランス人男性とは、映画とほとんど同じルートをドライブしました」とした上で、「娯楽性を高めるために、ジャックのキャラクターをよりカラフルにし、また映画にあるような車の故障はありませんでした。実体験を枠組みとして使っていますが、それ以外は自由奔放に創作を入れています」と説明する。

 エレノア監督は、そのドライブを通して、「ゆとりを持つことの素晴らしさ、田舎の風景の美しさやおいしい食べ物に目覚めた」という。レインさんは、「アンは、いろいろ意見を持っていても、ジャックに言われればそれを受け入れてしまう、そういう女性ではあるけれど、その過程も含めて、新しい経験に身を任せることや、その瞬間、瞬間をしっかりと味わうこと、そういったことを、映画のメッセージとして受け止めていただけるのではないかと思います」とアピールする。

 ◇美しい娘たちに監督が身をもってアドバイス

 1936年生まれのエレノア監督と、65年生まれのレインさん。共に、一人の女性として、妻として、母として、そして、監督、あるいは女優として長いキャリアを歩んできた。その姿は今も輝いている。美しさを保つ秘訣(ひけつ)、輝いていられる秘訣を尋ねると、レインさんは、「睡眠とお水かしら。あと、遺伝子もあるわね。私の場合は母がきれいだったから、それを引き継いだだけ。だからズルしてるのよ(笑い)」とちゃめっ気たっぷりの答えが返ってきた。その上で、「『ボンジュール、アン』から学んだのは、やっぱり、いつでもどこでも楽しみ、また、ゆとりを持つということ」と話し、「そういう姿勢は周囲に感染していくものだと思います。人というのは、自分の物の見方や感じ方を広げていけるものですから」とアドバイスした。

 レインさんのコメントに、エレノア監督も「睡眠と水、これは大事ね(笑い)」と同様にうなずいてから、「自分の心が命じる“好きなこと”をやることだと思います。皆さん、そういうことに背を向けて忙しい日常に巻き込まれてしまいがちですが、そうではなく、自分の魂の声に耳を傾けて、そちらの方に導かれていくべきだと思います。人は、雪の結晶のように一つ一つ違うもの。ですから、自分はどういう性格なのかを自身で見極めて、それに従っていくことが重要なのではないでしょうか」と語った。

 実はエレノア監督は、今作にワンシーンだけ出演している。アンがカンヌのホテルから荷物を運び出す場面で、椅子に座り雑誌を読んでいる婦人がエレノア監督なのだ。エレノア監督によると、撮影準備が整うまで椅子に座っていたところ、「準備ができたのでモニターを見ようとしたら、スタッフからそこに座っていなさいと言われて。スケジュールが押していて、時間を無駄にできなかったので、つい私もそれに乗ってしまった」のだとか。「もっと美しい人がカンヌにはいっぱいいるんだから、そういう人を使えばいいのにね」と照れ笑いしながら、「ですから、こう自分に言い聞かせています。『あんなおばあちゃんをあそこに置いたのは、美しい娘(こ)たちもいずれこうなるのよ、ということを示すためよ』と(笑い)」と愛嬌(あいきょう)たっぷりに撮影の裏話を語った。映画「ボンジュール、アン」は全国で公開中。

 <エレノア・コッポラ監督のプロフィル>

 1936年、米カリフォルニア州生まれ。カリフォルニア大学卒業後、フリーのデザイナーとして働き、インスタレーションのためにファブリックのコラージュや刺しゅう画を制作。62年、フランシス・フォード・コッポラ監督と映画製作を介して出会い、その後、二男一女が生まれる。「地獄の黙示録」(79年)の製作現場の裏側を撮影した「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」(91年)で共同監督を務め、エミー賞はじめ数々の賞に輝く。以降、家族が監督した映画の現場を映したドキュメンタリーを手掛ける。ほかに2冊の著書がある。

 <ダイアン・レインさんのプロフィル>

 1965年生まれ、米ニューヨーク州出身。「リトル・ロマンス」(1979年)で映画デビュー。その後、フランシス・F・コッポラ監督の「アウトサイダー」「ランブルフィッシュ」(共に83年)、「コットンクラブ」(84年)、「ジャック」(96年)に出演。「運命の女」(2002年)で、米アカデミー賞主演女優賞にノミネート。ほかの主な出演作に「ストリート・オブ・ファイヤー」(84年)、「トスカーナの休日」(03年)、「最後の初恋」(08年)、「マン・オブ・スティール」(13年)、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(15年)、「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」(16年)など。今年は「ジャスティス・リーグ」の公開を控える。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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