検索

いま、推されてます

水曜日のカンパネラ・詩羽:「20歳になったらこの世を去ろう」と決意した過去 初の書籍で赤裸々に明かす 

 2022年リリースの「エジソン」がSNSで話題となった音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」の2代目ボーカル、詩羽(うたは)さんが初の書籍「POEM(ポエム)」(宝島社)を3月15日に発売する。同書では、両親の離婚、いじめに悩み死を考えた日々、口にピアスを開けた日の記憶など、これまで誰にも語ってこなかった、重く鮮やかな記憶を赤裸々につづっている。過去を振り返って発信することへの思いや、個性あふれるファッションについて聞いた。

 ◇過去を「よかった」とは思えないが、経験したから他者を受け止められる

 出版の翌日、16日には「水曜日のカンパネラ」として2度目、詩羽さんにとっては初の日本武道館での単独公演を控えている。このタイミングでの書籍出版について「活動を始めて2年半。武道館ライブというのが自分の中で一つの区切り」と考えたからだという。

 「あらためて多くの人に知ってもらえる機会なので、いつも口にしている『愛を大事にする』という言葉の重みが変わってくるし、響く人も変わってくる。ファンの人にもちゃんと届いてほしいし、私をポップな人間だと見えている人にも届けられ自分のやりたいことが伝わるようにと思いました」

 過去を振り返ることについて、迷いや怖さはなかったのだろうか。

 「決めたらやれるタイプなので、書くことへの覚悟はできていました。日記などに残していたわけではないけれど、記憶にあることで、思い出したくないこともちゃんと思い出しました。過去に経験してきたことが『よかった』とはみじんも思えないけど、ほかの人の苦労やマイナスを受け止められるのは、いろいろ経験してきたからこそ。何も経験していなければ……と想像すると、怖いです」

 他者の言葉で傷つく経験をしてきた詩羽さんだからこそ、言葉を発し、伝えることへの意識も高い。

 「絶対に、悪意をもって人を傷つけないようにしたいし、悪意を持たずに人を傷つけてしまうのも結局は悪だと私は思っています。でも、誰も傷つけないというのはすごく難しい。例えば、自分の感情でしかないのに否定する言い方をすると、無意識に人を傷つけてしまうことが多いので、『あれはダサい』というより『私は好きじゃない』と、単に“自分はこう思う”という意見を伝え、それが正解だと思い込まないようにしています」

 「分かり合えないことって人間なら必ずある」という詩羽さんは、「22歳でこうやって考えられるのは、いろんな経験をしてよかったと思えること。なにも知らないで大人になってしまわなくてよかったな、って」と笑顔で振り返る。

 ◇知ることの恐怖を覚えた10歳 22歳の今、“知らない”ことを楽しむ

 書籍の中に、「知らなかったことを知りすぎてしまったことに恐怖を覚えた」という一文がある。

 「10歳のころ、物心がしっかりついて、平和であるべき時期に、姉と自分の父親が違うという、現実を知ってしまった。離婚する親のどっちについていくかを決めるタイミングで、知らなくちゃいけないし、理解しなくちゃいけなかったんです」

 そんな経験をした詩羽さんは現在、「いろんなことを“知らない”ようになった」という。

 「周りには、知っている1を10まで伸ばして、もっとよくしていこう、もっと知識を得ようという人が多い。でも、私は知らないことがすごく多くて、情弱(情報弱者)だし、知識がない。だから、逆にそれを楽しんでいます。知りたくないことを知らなければいけなかった10歳のころがあったからこそ、知ることをやめる、知らないことの楽しさを覚えるようになったのかも」

 2023年からはドラマや映画にも出演し、活動の幅を広げている。

 「これからも演技の仕事はいろいろしていきたいし、音楽以外の表現の仕方もしていきたい。自分の声で届けるのが好きなので、ラジオにも挑戦したい」

 「20歳になったらこの世を去る」ことまで考えていた詩羽さんが今、生きていてよかったと感じる瞬間を聞くと、「ライブですね」と即答。

 「ファンのみんなの愛を浴びる時間。あの瞬間は本当に生きててよかったと思う。いいお仕事に出会えました」

 ◇ファッションは武装 ぬいぐるみに囲まれてよく眠れる

 取材当日、たくさんの装飾があしらわれた、ピンクの可愛らしいファッションで現れた詩羽さん。ピンクのヘアや個性的な衣装は詩羽さんのトレードマークにもなっている。

 「ファッションやヘアスタイルは武装の一つ。元気になりたいときは元気な格好をするし、落ち着きたいときは落ち着いた服装にする。自分の気持ちを変動させるものだからこそ、強くなるために、自分らしい強いスタイルを選ぶようになりました」

 この日のコーデのポイントをたずねると、「きょうは『POEM』についてちゃんと話す日なので、変にきれいな格好で緊張感があるよりは、部屋着寄りのゆるっとした服で、とスタイリストさんにお願いしました」と話した。

 斜めがけしたウサギのバッグも目を引く。

 「ぬいぐるみがめっちゃ好き。家でもぬいぐるみと寝るタイプなので、きょうはウサギがいてくれてよかったな。ベッドには、抱き枕のほかに大きいぬいぐるみ2個とヘビ2本で周りを囲って、重みのあるネコのぬいぐるみを抱いて寝ています。そのおかげでゆっくり寝られています」

 <プロフィル>

 うたは 2001年8月9日生まれ、東京都出身。 2021年9月、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」に2代目主演&歌唱担当として加入。2022年リリースの「エジソン」がSNSで話題となる。2023年、日本に加え、北京、上海など8都市のアジアツアーを実施。俳優、モデルなどマルチな方法で自己表現を行う。2023年には、映画「アイスクリームフィーバー」、連続ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(日本テレビ系)に出演。

*……「POEM」(宝島社)は、詩羽さんが今まで誰にも語ってこなかった、重く、しかし鮮やかな記憶をつづった自叙伝。詩羽さんが信頼を寄せる3人のフォトグラファーが、「違和感」をテーマに台湾や日本各地で撮り下ろした写真を掲載する。192ページ。2200円。

本・シネマ 最新記事

アクセス上位記事