検索

いま、推されてます

吉田羊:主演としての「色のなさ」で勝負 日本版コールドケースへの思い

 22日にスタートするWOWOWの連続ドラマ「連続ドラマW コールドケース~真実の扉~」で、主人公の刑事・石川百合を演じる女優の吉田羊さん。世界的に人気を博した米刑事ドラマの日本版として話題を集めている同作だが、今回がWOWOWでは初の連ドラ主演となる吉田さんの「色のついてなさ」がキャスティングの一つの決め手になったという。現場では「対外的に私は座長で、自覚を促されていく部分は少なからずあり、主役をやらせていただいて気づけること、見える景色はあるなって思えた」といい、百合を演じるにあたって「(米国版ヒロインの)キャスリン・モリスをなぞることだけはすまいと思った」と相応の覚悟を持って臨んだことを明かしている。吉田さんに、ドラマに込めた思いや共演者の素顔を聞いた。

 ◇まねでもなくリメークでもない日本版 主人公は「自分と似ている」

 「コールドケース」は、未解決殺人事件(通称コールドケース)の真相を解明する捜査チームの活躍を描いた刑事ドラマ。2003~10年に全7シーズンにわたって米CBSで放送され、全シリーズの平均視聴者数が1000万人を超える大ヒット作となった。日本版はWOWOWの開局25周年記念企画として、神奈川県警を舞台に、全編4K・HDR(ハイダイナミックレンジ)で制作された。

 現在、原作ファンからシビアな評価を待つ身でもある吉田さんだが、クランクインする前から「日本で作るドラマの丁寧さや繊細さがすごく好きで、原作とは違う面白さ必ず作れると信じていた」という。米国版との比較についても「私はキャスリン・モリスではないし、逆にいえば彼女が持っていないものを私は持っているかもしれないという期待もあった」といい、「原作へのリスペクトがきちんと根底にありながら、まねでもなく、リメークでもなく、日本のコールドケースとして独り立ちした作品になっている」と仕上がりに自信を見せる。

 今回演じた百合については「自分とすごく似ているなと思った」という吉田さん。「人とお付き合いする時、ある一定の距離を保つ癖があるというところ。かといって心を開かないかというとそうではなく、自分が『この人は』と思った人には甘えも見せる。あとは自分が気持ちが悪いと思ったことに対して妥協できない、融通の利かなさと頑固さは自分自身に通じるものがある」と明かす。「現場ではどこからが百合でどこからが吉田羊か分からなくなるくらい心地よくて、無理なくそこに存在できたと思えた。やっぱりこの作品は私にとって大きかったですし、百合として生きる機会がまたあればなって思っています」と早くも続編を望んでいた。

 ◇「SCOOP!」に続く同僚役 滝藤賢一さんは「自信家で真面目」

 同ドラマには神奈川県警捜査1課の指揮官・本木秀俊役で三浦友和さん、百合の同僚役で永山絢斗さん、滝藤賢一さん、光石研さんも出演している。吉田さんは「滝藤さんと光石さんは何度か共演させていただいて、あの2人が現場にいる安心感は絶大だった」といい、「三浦さんも、絢斗君もみんな自立した俳優さんばかりで、スタッフさん含めて、本当に素晴らしい職人が集まった奇跡のようなチームだったので、このチームで仕事をやり続けたいと思わせてくれた宝物のような現場でした」と周囲に感謝する。

 滝藤さんとは公開中の映画「SCOOP!」(大根仁監督)でも同僚役で共演。映画「ビリギャル」(土井裕泰監督)での吉田さんの演技を見て「俳優魂をくすぐられ、この人が主役なら」と今ドラマへの出演を決めたという滝藤さんだが、吉田さんが知る素顔は「自信家なんですけど、臆病」といい、「今回の台本もかなり早い段階から8、9話までのせりふが入っていて、できない自分を知っている、臆病だからこそ準備をするという、すごく真面目な方」と感心する。一方で「滝藤さんって褒めると絶対に謙遜はしない」と明かすと、「実は『SCOOP!』ですごく体重を上げたんですけど、このドラマに合わせて(体を)絞ってきて。それで『体触る?』って筋肉を触らせるのは、ちょっとやめてほしいなって」とクレームも忘れない。

 また主人公・百合と捜査でタッグを組む高木信次郎役の永山さんについて、吉田さんは「台本を読んで腑(ふ)に落ちないと芝居ができなくなる、とても不器用な方。事前に監督さんやプロデューサーさんと夜な夜なディスカッションを重ねて重ねて、それは最終回まで続いていましたが、その不器用さは役にそのまま出ていて、とてもいい俳優さんだなって」と印象を語り、「実際に彼の絞り出すようなせりふ、表情から受けるものは大きかったです」と共演を喜んでいた。

 ◇撮影で“神”と対峙? 仲代達矢との震えるような体験

 吉田さん演じる百合が捜査の過程で、さまざまな関係者と対峙(たいじ)していくのも今作の大きな見どころで、ゲストの数は45人にも上る。吉田さんは中でも仲代達矢さんとの芝居が「もっとも印象深かった」といい、「せりふのない“間”こそが、仲代さんとの芝居の醍醐味(だいごみ)で、神に対峙しているようなおそれ多さと神々しさを感じました。かといって威圧感なわけではなく、純粋に役として、何なら背景としてそこにたたずんでいるという風情があって……。俳優としてここに到達するのに私はあと何年かかるのだろうって、震えるような体験をさせていただきましたね」としみじみ語る。

 この秋は、人気シリーズの「相棒」(テレビ朝日系)や「THE LAST COP/ラストコップ」(日本テレビ系)、「コールドケース」同様、海外ドラマの日本版となる「スニッファー 嗅覚捜査官」(NHK総合)など、奇しくもさまざまなタイプの刑事ドラマが放送されるが、吉田さんは「アプローチの仕方はいろいろとありますけど、間違いなくいえることは事件が必ず解決をするってこと。それですっきりして、来週また見るぞってなる」と魅力を語る。

 「現実社会で気持ち悪さが残る事件が多い中、虚構であったとしても、すっきりとさせてくれるっていうのは刑事ドラマの醍醐味かなって思います。あるものはチーム戦、あるものはスタンドプレーと、数多(あまた)の捜査の仕方があるっていうのも、刑事ドラマの可能性でもあると思いますし、これからまだまだ可能性を持ったジャンルでもあるのかなと思います」と話していた。

 ドラマは、22日から毎週土曜午後10時にWOWOWプライムで放送。全10話で初回は無料放送。

 *……スタイリスト:梅山弘子、ヘアメイク:paku☆chan(Three PEACE)、衣装協力:ブラウス、リング humoresque、パンツ CINOH(MOULD)、イヤーカフ PLUIE(Stroller )

エンタメ 最新記事

アクセス上位記事