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「ザ・マジックアワー」(2008年)や「ステキな金縛り」(11年)の三谷幸喜監督最新作「清須会議」は映画では初めての時代劇だ。17年ぶりに書き下ろした自身の小説を基に映画化した。織田信長亡きあとに浮上した、後継者選びと明智光秀の領地内配分を話し合うために開かれた清須会議を題材に、駆け引きと思惑が交錯する心理戦を描いた喜劇。総勢26人のキャストを迎え、役者たちの競演が楽しい。
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天正10(1582)年、本能寺の変で織田信長(篠井英介さん)が討たれ、後見に2人が名乗りを上げた。筆頭家老・柴田勝家(役所広司さん)と羽柴秀吉(大泉洋さん)。勝家は信長の三男でしっかり者の信孝(坂東巳之助さん)を、秀吉は信長の次男で大うつけ者の信雄(妻夫木聡さん)を推す。勝家、秀吉がともに思いを寄せる信長の妹・お市は、秀吉への恨みから勝家に肩入れしている。秀吉は妻・寧(中谷美紀さん)の応援も受けながら、軍師・黒田官兵衛(寺島進さん)の策で、信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介さん)を味方に引き入れ、家臣たちの心をつかんでいく。信長、秀吉、丹羽長秀(小日向文世さん)、池田恒興(佐藤浩市さん)が集まって、やがて後継者を決める会議が開かれる……という展開。
この映画のメインは「会議」だ。時代劇といっても殺陣やアクションはほとんどない。前々作は映画セット内(「ザ・マジックアワー」)、前作は裁判所(「ステキな金縛り」)、そして今作は城の中。三谷監督お得意の室内空間で、せりふ劇が展開されていく。大きくいえば勝家VS秀吉という話。あの手この手で関係者に近づくやり方は、現代社会と変わりない。駆け引きは男性陣だけではない。場外で女性も駆け引きを繰り広げている。お市が自分を好いている勝家を手玉にとってみたり、松姫が後継者争いを後方で見ていたのかと思いきや……と女性のずる賢さや計算高さも生々しい。お市にご執心の勝家を演じる役所さんは、最近CMでもコミカルな面を見せているが、今作でもちょっとバカげた感じが出ていて面白い。また、野望を持つ秀吉を演じる大泉さんの味わいのある演技。妻の寧を演じる中谷さんもイメージを変えて、楽しそうに演じている。豪華な俳優陣に目が行きがちだが、今回三谷作品に初参加となった黒澤和子さんの衣装が色彩豊かで、室内では煮詰まりそうな絵面を、目に楽しいものに変えている。9日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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