NHK朝の情報番組「あさイチ」の「夏こそ『適塩』!?塩との正しい付き合い方教えます!」の回に登場した医師の八田告さん
NHKの朝の情報番組「あさイチ」(総合、月~金曜午前8時15分)の「夏こそ『適塩』!?塩との正しい付き合い方教えます!」(6月放送)の回に出演した腎臓・高血圧の専門医の八田告さん。番組では、汗をかく夏に知っておきたい“適塩”という塩の適切なとり方や塩の替わりに使うのにふさわしい調味料などについて伝えた。放送後のインタビューでは、予防医学に取り組む八田さん自身の喜びや苦労、広く伝えたいことなどについて聞いた。
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番組では、自分に合った適切な塩分量をとる「適塩」について紹介した。国が定める1日の食塩摂取量は、成人1日あたり男性は7.5g未満、女性は6.5g未満。だが、男性で平均10.5g、女性で平均8.9gと塩分を多くとりすぎている傾向にあるが……。
八田さんは「夏は汗をかきやすいので、水分だけでなく塩分も失われます。よかれと思って減塩しすぎると体の塩分バランスが崩れやすくなります。猛暑で汗をたくさんかくと、必要以上に塩分が体の外に出てしまう。脱水症状を起こす方も多いです。特に減塩されている方は要注意です」と警鐘を鳴らす。
自身が“適塩”かどうか、簡単にチェックする方法も紹介された。「経口補水液」を常温で一口飲んでみて、おいしいと感じた人は塩分が足りてない、おいしくないと感じた人は塩分が足りているという。
ちなみに、塩分が足りていない時は、経口補水液で分かるが、水分が足りていない時は、のどが渇く以外に、尿の色が濃くなるという。八田さんは「特に夏場は尿の色を必ず毎回見てほしい」と話す。
塩分の話に戻すと、塩味に慣れてしまうと、塩分を感じる感覚が鈍くなり、しょっぱさを感じにくくなる。また、塩が入っていると食欲が出てしまい、食べ過ぎる傾向にあるという。そのために塩分をとり過ぎてしまう悪循環に陥る。八田さんは「意識して塩分を減らしてみると、どんどん味に慣れてくると思います」と話す。
街頭で塩分を含ませたろ紙を使って66人に調査したところ、味覚が正常な0.6%で塩味を感じた人が30人と半数に近い結果が出た一方で、1.2%でやっと塩味を感じた人が18人もいた。
八田さんは「味覚は改善することができる」といい、以前は1.6%でやっと塩味を感じることができた人が、減塩食のおかげで、0.6~0.8%で感じられるようになった例を紹介した。「塩分摂取量の7割は調味料からなんです。だから調味料を変えるだけでかなり変わってきます」と八田さんはアドバイスする。
以前はおかずにしょう油やソースを大量にかけ、納豆に豆板醤をかけて、1日9.2gの塩分を摂取していた人が「病院からある調味料ならいいといわれ乗り越えられた」という。塩分を6.0gまで減らすことができたのは、マヨネーズのおかげだった。
八田さんは「マヨネーズは調味料の中で比較的塩分少ないんです。ただ取り過ぎるとカロリーは多めなので注意が必要ですが。マヨネーズはコクがあって、食べたときの満足感が高い」と話す。大さじ1杯の塩分量は、濃い口しょう油が2.6グラム、めんつゆ(三倍濃縮)が1.7gに比べ、マヨネーズは0.3gだという。
「味を感じる舌の細胞は1週間で入れ替わっているんですね。だから1週間、頑張ればかなり味覚は変わってくると思います。以前勤めていた病院で調査したところ、56人の腎臓病の患者さんに1週間の病院食(減塩食)を食べてもらうと、0.6%の正常味覚の人が11人から35人に増えました」と八田さんは語る。
八田さんは、日本人の特徴として、「欧米人に比べると日本人は、同じだけ塩分を取っても欧米人は血圧が上がらなくても日本人は非常に上がる。“食塩感受性”と言われています。逆に言うと減塩すれば血圧は下がりやすいですし、なかなか自分では減らせない人に関しては利尿薬というか塩抜きの血圧の薬が良く効くと言われています。日本人は塩に対して敏感ということですね」と語る。
減塩しながらカリウムをたくさんとることで血圧など循環器疾患が減少することも分かってきた。
カリウムを多く含む野菜や果物は、可食部100gあたりにつき、ホウレンソウが690mg、納豆が660mg、アボカド、枝豆、山芋が590mg、ジャガイモ、カボチャが420mg、バナナ360mgなど。1日の目標摂取量は成人女性が塩分であるナトリウム2559mg、カリウム2600mg。男性はナトリウム2953mg、カリウム3000mg(日本食品成分表八訂)。1日のカリウム摂取量の目安はホウレンソウ1束、ジャガイモ2個、アボカド1個、納豆2パックとなる。
番組では、減塩しながらカリウムが比較的多くとれる「キーマカレー」のレシピが紹介された。一般的なカレーは塩分量3gを超えることが多いが、このレシピだと半分以下の1.5g、ナトリウムの量は600mgとなる。味付けに使うのはウスターソース、ブイヨン、サラダ油、カレー粉、ケチャップなどで、追加の食塩は使用しない。材料となるニンジン、リンゴ、ピーマン、パプリカ、タマネギ、ナスなどの野菜や果物にはカリウムがたっぷり含まれているという。
「あさイチ」出演後の八田さんに、これまでの活動や“適塩”を提唱する思いを聞いた。
八田さんが予防医学の大切さを知ったきっかけは、「腎臓とか高血圧の領域で、循環器内科としても一時期働いていたんですが、悪くなってから医者にかかる人が本当に多くて、脳卒中で半身麻痺(まひ)になったり、人工透析をしなくてはならなくなって、人生の大半を治療に費やしてしまうような方をたくさん見てきたんです」といい、「これは医療が後手に回ってるんじゃないかと。医者になって10年目ぐらいからでしょうか、なんとか自分が前に回って、先制的にくい止めたいという思いでやっております」と語る。
街頭に立って尿の試験紙を配るなどの啓発活動も行った。「ある時は滋賀県の近江八幡駅前に立って試験紙を配りました。検尿の試験紙を日本で初めて配ったのは私なんです。病院関係のボランティアスタッフとみんなでおそろいのジャンパーを着ましてね。結果を見て、タンパクが出ている人は、塩分を多く取り過ぎていたり、高血圧や腎臓病の人が多かったりするので、それを自分で気づいてもらおうと」と話す。
活動によって、「本当に勉強になったとおっしゃっていただけることが喜びですね。あとは、岡山や東京、大阪でもやりたいと仲間が増えました。それが世界腎臓デーのキャンペーンとなって全国に広がったことも印象に残っています。苦労といえば、一般の方からしたら敷居がどうしても高くて、なかなか広めるのは勇気のいることでしたし、駅前で配っているときに立つ位置が悪かったと思うんですけど、邪魔だと言って突き飛ばされたこともあります。そういう苦労はありますけども、楽しんでやっております」と手応えを感じているようだ。
今回、番組内で伝えられなかった思いとして、以下の二つを挙げる。
「一つ目が“ナトカリ比”です」といい、「ナトリウム(塩分)とカリウムの比率です。尿の中でナトリウムとカリウム比を測定すると、いわゆるナトリウムが多くてカリウムが少ない人の場合には循環器疾患が多いということが言われています。番組内では、分かりやすくするためにカリウムをとにかく取りましょうと伝えたんですけれど、高血圧学会的にはナトカリ比っていう言葉を広めたいと思っています。単に減塩するだけじゃなくて、カリウムもしっかりとりましょうというものです」と説明する。
もう一つは「日本の減塩対策っていうものがまだまだ不十分で、減塩食品は非常に高価です。健康になるために頑張っているのに、余計にお金を払わなきゃいけないという社会の構図がちょっと問題かなと」と問題点を指摘する。
「英国では、医学者や栄養学者が設立した「CASH(キャッシュ)」(塩と健康に関する国民会議)という第三者機関の市民団体が、食品に塩を使いすぎないよう業界に働きかけて、食品に含まれる塩分を徐々に減らしていき、企業が目標の塩分を数年かけて達成したという事例がありました。国としても塩分の高い食品に対しては課税率を高くした。この二つが要因となって、英国人の塩分摂取量が8年間で1g程度減ることで心臓血管病になる割合が数10%ほど減ったという、世界的にも有名になった減塩対策がありました。ですので、日本ももう少し国主導で動いてもらってもいいのではないかなと思っています」
女性の読者に向けて、「これは余談ですけど、パリコレクションに出場するモデルは本番の1週間ほど前からかなり塩分を減らすそうです。脚がすっきり、顔もすっきりするといって、むくみを取ることができると。そこにカリウムを合わせると、美容にもいいのかなと思います。ただ、単に減塩を叫ぶだけでなく、熱中症の危険を回避するには塩分をとらないといけないというバランスが難しい。塩分不足に関しては経口補水液でのチェックの方法を参考にしてください」と呼びかけた。
最後に「今回のテーマの“適塩”、減塩するだけじゃなくて、必要な時には塩分をとる癖をつける。自分の体に耳を傾けて、体に塩分が足りてるのか足りていないのかをちゃんと見極める。今回の話を生かして“適塩”を学び、自身の生活のルーティンとして身につけていただければと思います。基本は塩分が多い方が多いので、減らす必要はあると思いますけれど、大量に汗をかく人は要注意。“適塩”でお願いします」とメッセージを送った。
<プロフィル>
八田告(はった・つぐる):八田内科医院(京都市左京区)院長。1967年3月生まれ、1992年に島根大学卒業。京都府立医科大学附属病院の臨床准教授、近江八幡市立総合医療センター腎臓センター長などを経て、2013年から現職。京都府立医科大学臨床教授も兼任。Best Doctors in Japan、ドクターが薦める専門医など受賞多数。高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)委員会執筆委員。著書に「俺流! 血圧ベストコントロール」(日本医事新報社、2025年)などがある。ちなみに高血圧学会では「朝活キャンペーン」を実施中。血圧が一番上がる“朝イチ”に血圧を測りましょうと提唱している。
(取材・文:細田尚子/毎日キレイ)
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