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田中麗奈:舞台の魅力は「生」であること 無邪気といわれることに抵抗があった時期も

 明治座4月公演「きりきり舞い」が6日に初日を迎える。主役の舞役を務めながら、「座長としてまさにきりきり舞いの毎日」だと話す女優の田中麗奈さんに、今回の舞台について、また舞台に臨む気持ち、自分にとって芝居とは?などさまざまなことを聞いた。

 −−「きりきり舞い」は、個性豊かな俳優さんとお笑いの方もいて、出演者が実にユニークですね。

 そうなんです。私はほとんど全員と接するシーンがあるのですが、みなさん独自の世界観を持っていらっしゃるので、どのシーンも彩りがあります。ですが、私がどんどんその色に染まってしまっては、まとまりがなくなってしまうので、自分をビシッと持って立っていないとと思い、意識するようにしています。もちろん個々の色に染まって右に行ったり左に行ったりする楽しさもありますが、私の中で舞という役をしっかり持っていないといけないな、と。

 −−舞というキャラクターはどんなふうに位置づけていますか?

 舞は、明るさもあれば勝ち気なところもあり、自分を曲げない頑固なところ、単純なところもあるし。でもその裏では、小さいころに寂しい思いをしていたとか、父親に結婚を反対されたこととか、本当のおっかさんは小さいときに死んでしまっていて、それゆえに父親との強い絆があるとか……。そういう、舞のバックボーンも感じていただけるように、演じられたらいいなと思っていますね。そういうものをしっかりと胸に持っていれば、明るいシーンはより明るくなるだろうし。ただ単にきりきり舞いしているだけではない、舞の人間味が表現できたらいいなと思っています。

 −−舞とご自分のキャラクターで、重なるところはありますか?

 普段からよく天真爛漫(らんまん)だねとか無邪気だねっていわれるので、そういうところは舞と重なりますね。自分ではよく分からないんですが、ふとしたときに「田中さんて天真爛漫ですね」って、年下の子とか子役の小さい子からいわれたこともあって……(苦笑い)。

 −−表情が豊かだとか素直だということなんじゃないでしょうか。

 どうなんでしょうね。素直とか純粋だねっていわれることに、コンプレックスを持っていた時期もあったんです。大人になってもまだ純粋って、子どもっぽいとか、(かわいこ)ぶってるとか、きれいきれいしてるとか、そういうイメージなのかな?って想像して、それが恥ずかしくて、そういわれないように隠していた時期もありました。でも今は、それが悪いイメージばかりじゃないことも分かったし、自分にはそれだけじゃないと自信を持っていえるようになったので、いまは、それはそれで宝物として持っていてもいいのかなと思っています。

 −−見どころとなるシーンは?

 たくさんありますよ。内容的にも、ラブストーリーや友情、親子の絆、仕事に対する気持ち。暗い気持ちのときどうやって楽しくなるかなど、いろいろな要素があるので、どんな視点からご覧いただいても、楽しんでいただけると思います。とにかく明るくて、でも内容もしっかりあって、人間の喜怒哀楽がたっぷり詰め込まれていますね。たとえば私が演じる舞は、落ち込んだこととか、どうしようもないことや暗くなることがあったとき、「奇人気まぐれきりきり舞い」と、おまじないを唱えて前向きになるんです。自分の気持ち一つで、人生を面白くできるということ。見てくださる方も、自分の立場と置き換えて、一緒に唱えながら見ていただいてもいいなと思っていますね。

 −−昨年は舞台「教授」、交響劇「船に乗れ!」と、2本の舞台に出演されていましたが、今後は舞台にも力を入れていこうと考えていますか?

 舞台は定期的にやっていけたらと考えています。苦労したり、努力したり、自分を追い込んだり、恥をかいたり、そういうことが自分の力になると思っているので。それだけ勉強になると思うし。地に足をしっかりつけていくためには、必ず通っていかなければならないものだと思っています。

 −−そう思わせてくれる舞台の魅力はどんなところですか。

 「生」であるということです。その場で起きていることを、みんなが目撃する、それこそ大事件みたいな感覚。公演期間中は、同じ内容でも毎日少しずつ違っていて……。昨日はこうだった、今日はこうだった、昨日はこうやってダメだったから、今日はこうやってみよう。基準があるから違いが分かるし、それがすごく心地いいんです。今日は平均だ、いい感じだった、昼よりよくなかったとか。あくまでも自分の中の感覚ですけど。1本のお芝居を毎日続けてやることで、自分のいろんなことが見えてくるんです。

 −−舞台という緊張感のあるお仕事の合間で、癒やしになっているものはなんですか?

 セージのお茶です。水筒に入れて持ち歩いています。よく家で、セージのお香をたいていたんですが、インターネットでセージのお茶があることを知って、さっそく取り寄せて飲んでみたら、すごくリラックスできるんですよ。集中力アップにもいいそうです。

 −−セージのお茶を飲んで集中力アップしたらせりふもすぐ頭に入りそうですね。

 すぐではないですよ(笑い)。やっぱり、こればかりはコツコツやらないと。私の場合は、本当に少しずつ何ページずつか覚えていって、長い時間をかけて全体を覚えていくんです。これは、今回の舞台のやり方で、ドラマなどのときの覚え方とは違うんですけど。

 −−学生時代暗記は得意なほうでしたか?

 いえ、まったくですよ。それは今もそうで、必要に迫られているから頑張っているんです。覚えるのは、むしろ大嫌いです。だけど芝居がやりたいから、そのために覚えているというか。

 −−それだけお芝居が好きということでしょうね?

 う~ん、これだけ長く付き合ってきたものなので、「好き」とか単純な言葉ではいえないですね。好きだと思うこともあれば、憎いと思うときもあるし。やっと分かった!と思えば、まったく分からなくなるときもある。身近な存在に感じるときもあれば、すごく遠くに感じられるときもあって……。

 −−恋愛と似ているとおっしゃる方は多いですよね。

 でも、私は少し違う気がしていて、答えはまだ出ていないんですが……。一ついえるのは、いい意味ですごく怖いものです。なんの保証もないし正解もないし、でも責任は常にある。いつもできなかったらどうしよう、ダメだったらどうしよう、次こそみんなからこてんぱんにいわれるんじゃないかって、恐怖におびえているんです。その恐怖心を少しでも自分の中からなくしたい、早く安心したい、だからせりふを必死で覚えてけいこを頑張るわけで……。でも、やっていく中で、どこかでパーンってハジけて、楽しい!って思える瞬間がある。その瞬間が、すごくクセになるんだと思いますね。

 昨年、舞台「教授」に出させていただいたときの初日なんか、くちびるまで真っ青になるほど緊張して、呼吸ができなくなって大変だったんです(苦笑い)。でも、回を重ねるたびにどんどん自信がついていって、ちょっとしたミスをしても冷静に見られるようになっていきました。舞台特有の、初日のあの恐ろしさっていったらなくて、もう二度と嫌だって思うくらいなんですけど、それを乗り越えたところにこそ楽しみがあるんです。私は、そうやって生きていくことを選んで、ほかのことをやるなんてまったく考えもしなかった。これを続けたいし、人から求め続けられたいし。そのために、もっともっと自分を高めていきたいと思っています。

 <プロフィル>

 1980年5月22日生まれ、福岡県出身。18歳のときに出演したサントリー「なっちゃん」の初代CMキャラクターとして注目を集め、以降CMやドラマ、映画などに多数出演。映画「がんばっていきまっしょい」(98年)では、数多くの映画賞に輝いた。5月から放送のドラマ「ダンナ様はFBI~愛のミッション~」(NHK BSプレミアム)に主演する。舞台公演「きりきり舞い」は4月6~26日に東京・明治座(東京都中央区)で上演予定。

 (取材・文・撮影:榑林史章/フリーライター)

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