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比嘉愛未:30歳迎え「大きなターニングポイントに」 WOWOWドラマ初主演

 女優の比嘉愛未さんが主演するドラマ「連続ドラマW 本日は、お日柄もよく」(WOWOW)が、14日からスタートする。演説する人に代わってスピーチ原稿を執筆する“スピーチライター”の世界に飛び込む主人公を演じた比嘉さんに、作品の魅力や撮影の舞台裏などを聞いた。

 ドラマは、「楽園のカンヴァス」で第25回山本周五郎賞を受賞した原田マハさんのベストセラー小説が原作。老舗製菓会社の総務部で働く二ノ宮こと葉(比嘉さん)は、思いを寄せていた幼なじみの今川厚志(渡辺大さん)の披露宴で伝説のスピーチライター・久遠久美(長谷川京子さん)の祝辞を聞いたことで、言葉の力に魅了され、新たな人生を選択する……というストーリー。映画「半落ち」(2004年)の佐々部清監督がメガホンをとる。

 ◇愛未×こと葉=“愛葉”として演じた

 --スピーチライター役を実際に演じてみて、どのような印象を持ちましたか?

 スピーチライターという職業は今回初めて知ったんですが、実際にスピーチライターの方とお会いしたり、資料を読んでも、一言で言い切れないぐらいやるべきことが多くて。誰よりも言葉を知っていないといけないですし、声の出し方や抑揚だったり、総合的に話し手を輝かせるためのことをいろいろと考える仕事なので、知れば知るほど奥が深いんです。

 私の身近なところでいうと、こういうお仕事は、お芝居の演出する方に近いんじゃないかなって思うんですよね。裏方として、舞台に立つ人の背中を押したり導いたり、サポートする仕事。自分がどれだけ頑張ってもスポットライトを浴びることはないんですけど、自分が支えた人が輝いている姿を見ることで幸せを感じられる。今回演じてみて、それこそがスピーチライターをする魅力なんじゃないかなと体感することができました。

 --脚本を読んで、役にどのようにアプローチしましたか?

 スピーチライターのお話ではありますが、こと葉という女性がスピーチライターと出会ったことで、自分の世界が広がって、成長していく奮闘記でもあるので、私は等身大で演じた感覚があります。

 こと葉とは共通点が多くて、不器用で猪突(ちょとつ)猛進、たまにぶつかってへこんだりするところも似ているし、困難をポンッと乗り越えて、また進む姿勢も共感できる。こと葉と同じように、私も今の仕事に衝撃的に出会った。お芝居を初めてやらせてもらったときに挫折したんですけど、でも克服してこの仕事を追求したいと思って。沖縄から出てきて約10年たって今ここにいられるので、こと葉とベースが一緒なんですよね。クヨクヨ悩まず、決めたら「こう!」みたいなところとか。

 役へのアプローチでは、佐々部監督と最初にお話ししたときに「“比嘉愛未”と“こと葉”を合わせた“愛葉(まなは)”になってほしい」と言われたんです。その言葉にすごく救われて。最初は、WOWOWドラマ初出演でしかも主演という責任感も感じていたんですが、「ありのままで演じてください」って優しく言ってくださったので、「“愛葉”になろう」と。現場では私の体と心を通して、こと葉の言葉で演じていたような感覚でした。

 ◇師匠役の長谷川京子 「毎日見とれてました」

 --こと葉の師匠を演じた、長谷川京子さんの印象は?

 圧倒的な美しさとオーラに、毎日見とれてました(笑い)。プライベートではお母さんでもあるんですが、そういう顔を現場では見せないミステリアスさもありつつ、でもお話しすると、気さくにお子さんの話をしてくださって。プライベートな女子トークもしてくださったり、サバサバした気持ちのいい方でした。

 仕事とプライベートの“オン・オフ”の切り替えも、すばらしいなって。京子さんは家に帰ったらお母さんのスイッチになって、現場に着いたら役のスイッチになって。難しいせりふもスマートにNGなしで毎回演じられて、「すごいな」っていつも思っていました。京子さんを普段から尊敬していたので、役の上でも自然と(長谷川さん演じる)久美さんを尊敬する気持ちになれましたね。

 --こと葉の祖母を演じた八千草薫さんの印象は?

 八千草さんは、映像でも伝わると思うんですが、直接お会いすると、その100倍くらい癒やされるんです。いらっしゃるだけで、自然と笑顔になってしまうというか。本当にすてきな方で、それこそ雰囲気に、生き方があふれ出ているんだと思います。

 まねできるものではないですが、あこがれますね。それから声に説得力があるというか、強くはないんですけど、しっかり届くすてきな声で。今回ご一緒できたことが私の財産だなって思います。

 --今回メガホンをとった佐々部監督の印象は?

 佐々部さんとはずっとご一緒したくて、願い続けていたんです。作品も全部見ているんですけど、何よりも周りの役者仲間が、みんな口をそろえて「絶対、一度は佐々部さんと仕事したほうがいい」って。佐々部さんの作品に出た方たちからの支持率がすごいんですよ。そして実際、お会いしたら、会った初日にファンになってしまいました。

 現場では、誰よりも熱くて、涙もろくて、繊細で、すごくチャーミングな方で。けっこうこわもてなのに、いい芝居を見ると泣いてるんですよ。それがいとおしくて。それから、役者にそっと寄り添ってくれるんですよね。べったりじゃなくて、絶妙な心地よさなんですよ。「みんなが言っていたことは、これか!」と思って。

 1カ月半にわたった撮影は、濃厚なかけがえのない大切な思い出になりました。最高でした。「また監督の作品に、ぜひ呼んでいただけるように」という目標もできましたし、今回は支えられてばかりだったのですが、次は力になれたらと思います。話しているとまた会いたくなっちゃいますね(笑い)。

 ◇大先輩・草笛光子の言葉に「目から鱗」

 --“言葉が持つ力”を描いたドラマ。挫折したときなど、これまで周りからもらった言葉で心に残っている言葉はありますか?

 10年前、朝ドラに出演(NHK連続テレビ小説「どんど晴れ」のヒロイン役)したときに、共演した草笛光子さんからいただいた言葉が、今も心に残っています。すごく大好きな女優さんなんですが、当時、ド新人だった私に対していつも優しく励ましてくださっていたんです。

 タイトなスケジュールで、せりふ量も多くて、結構きつくて悩んでいたときに、草笛さんに「これだけ1年近く同じ役をずっと演じているのに、いっこうに成長できていない。どうしたらいいか分からないんです」と弱音を吐いたら、笑って、「あなた何言ってるの? 私は女優を50年以上続けているけれど、1回も満足したことないわよ」っておっしゃって。そのときに“目から鱗”というか、「そうだ、満足したら終わりだ!」って思えたんです。

 それからは、いろんな作品、役柄をもらって壁にぶち当たっても、「今、自分が乗り越えるべき課題だからこそ与えられたもので、一歩一歩前に進むことで、草笛さんみたいなすてきな女優さんになれるのかもしれない」と思って、その言葉を思い出すようにしています。

 --プライベートでは30歳に。心境の変化は?

 昨年6月、30歳になったとき、ちょうど撮影の真っ最中だったんですが、この作品に出会えたことが、大きなターニングポイントになりました。

 撮影期間中、親友と仲たがいをしてしまう出来事があったんです。そのとき私は相手が悪いと決めつけて、言い分を聞かずに一方的に自分の気持ちをぶつけてしまって。そんな中、ドラマのあるシーンで「相手の心に寄り添って、相手が一番ほしいと思う言葉を届けてあげることが大事なんだよ」というようなせりふが出てきて、ハッとさせられました。

 反省してその日のうちに親友に電話して謝ったら、「こっちこそごめん。でもあのとき私の思いを聞いてほしかったんだ」と言われて、私ものすごく泣いちゃって。あのとき、彼女の言い分を聞いてから話をしていたら、また違っていたなと。家族や友人にはどうしても感情的になってしまって、愛情が深ければ深いほど、その人のためにと思って言ったことが実は間違っていたり。

 そういうことに気づけたことで、人に対して優しくなれたような気がします。それだけで全然違うんですよ。たとえばタクシーに乗って「ありがとうございます」と言われたら言葉を返すとか。当たり前のことが普段見えなくなってたりするじゃないですか? そういうことを考えさせられたので、ものすごく変わりました。

 ドラマは14日から毎週土曜午後10時にWOWOWプライムで放送。全4話で第1話は無料放送。

 <プロフィル>

 ひが・まなみ。1986年6月14日生まれ、沖縄県出身。2005年に「ニライカナイからの手紙」で女優デビュー。07年、NHK連続テレビ小説「どんど晴れ」のヒロインに抜てきされ、その後、NHK大河ドラマ「天地人」や「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」シリーズ(フジテレビ系)、「マルモのおきて」(フジテレビ系)、「DOCTORS 最強の名医」シリーズ(テレビ朝日系)、「石川五右衛門」(テレビ東京系)などに出演している。

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