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彼女がキレイな理由:広瀬すずさん 「自分に制限をつけない人はカッコいい」

 女優の広瀬すずさんが、公開中の劇場版アニメ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(新房昭之総監督、武内宣之監督)でヒロインのなずなの声を担当している。今作は1993年に放送され、95年に劇場公開もされた岩井俊二監督の名作ドラマが原作。アニメ化にあたっては、映画「バクマン。」(15年)などの大根仁さんが脚本を手がけ、アニメ「化物語」「魔法少女まどか☆マギカ」などで知られる新房昭之さんが総監督を務めた。広瀬さんが演じる中学1年生のなずなは、俳優の菅田将暉さんが声を担当したクラスメートの典道を「駆け落ち」に誘う、という大人っぽい女の子。広瀬さんに、収録のエピソードや作品について、また女優の仕事について聞いた。

 ◇時間が巻き戻る不思議な体験

 「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」は、とある海辺の町で、中学校のクラスメートたちは花火大会を前に「打ち上げ花火は横から見たら丸いのか?」と盛り上がっている中、クラスのアイドル、なずなは母親の再婚のため転校することになった。なずなに思いを寄せる典道は、なずなから「駆け落ち」に誘われ、時間が巻き戻る不思議な体験をする……というストーリー。典道の親友の祐介を声優の宮野真守さん、なずなの母を女優の松たか子さんが演じている。

 ◇共演した菅田将暉は「天才肌」

 典道役の菅田さんとは一緒に声を収録したという。菅田さんの印象を「天才肌。テレビで見ていてもすごいなと思っていたのに、(お会いしたら)やっぱりこの人本当にすごい人なんだと思って」と驚きを語る広瀬さん。菅田さんに対しては「『(アニメの声優は)初めてで全然分からない』って言ってたんですけれど、『なんでも来い』というか構えて受けて、出す力みたいなものが、こんな人初めて見たかもしれないと思うくらい“強い”。あんなに堂々とマイクの前でお芝居しているのを見て、『置いていかれないようにしなくちゃな』と思わせてもらえて、すごく刺激的でした」と影響を受けたという。

 そんな2人の収録時は「せりふ以外はほぼ会話なく……。差し入れをたくさんいただいて、おいしいものだらけだったんです。2人で黙々と食べるという感じで(笑い)。話した内容も、『食べに行こう』と言われたことと、たまに関西弁の話をしたり。1、2日くらいしか収録日がなかったので。あんまり会話はしなかったですね」と“残念”な状況だったようだ。

 ◇歌うシーンに「どうしましょう…」

 今回、広瀬さんは劇中で松田聖子さんの「瑠璃(るり)色の地球」を歌うシーンがある。歌には苦手意識があったという広瀬さん。歌のシーンは一人で録(と)ったといい、「本当にどうしましょうっていう感じでしたけど……(笑い)。なずなはお母さんが歌っていたのを聴いて、うろ覚え的な感じで歌っているという、(鼻歌のような)あの軽さがあったから、まだ気が楽だったというか」と照れ笑いしつつ語り始めた。

 「“完コピ”(元の歌を完全コピー)まではしてなくて、なんとなくマネして歌っていたら、だんだん(歌うのが)気持ちよくなって、楽しくなって……。映像は、一気にあそこでファンタジーに世界に入るので、どんどんなずなの人間像みたいなものが広がっていくすてきなシーンだなと思いました」と映像とマッチした仕上がりに納得しているようだ。

 ◇男性から見たらミステリアスななずなに共感

 男性から見たらミステリアスななずなだが、同じ女性として広瀬さんには共感する部分があったという。「性格的な部分は似ていて、共感できるというか。なずなの行動や、典道や祐子介君は(なずなが)何を考えているんだろうと思うんですけれど、私にはそれが分かるなという感じでした」と共感を寄せる。

 脚本の大根さんや武内監督ら男性スタッフは「分からないから面白い」となずなのことを表現する。広瀬さんは「多分、男性には探っても探っても一生分からないんじゃないかなって思います(笑い)。年頃の中学生の女の子の気持ちって複雑じゃないですか。特になずなのような環境にいる女の子は、勝手に大人になっちゃっている部分と、何をしても自分の今の力では変えられない、子供だということも分かっている。私も割とそういうタイプで、焦っていても顔に出ないし、だけど、客観的に自分のことも見えている。感覚として心情としてなずなのことが分かるなという部分が、私には多かったです」と女の子特有の感覚を繊細に演じた。

 ただ、男性スタッフが作った作品だからこそ、「なずなのつかめない感じというか、雲の上にいるような存在……。あと強さというか、あのなずな像は男性でないと作れないんだろうなと思います」と思いをはせる。

 今作はアニメーションスタジオ「シャフト」が制作しており、花火や水の表現などアニメならではの美しい世界が広がっている。広瀬さんは「(原作がドラマなので)動きがリアルで、でもアニメーションだからファンタジー色が強くて、色もすごくきれい。一つ一つが芸術のようで本当に美しいなと思います。同世代はもちろん、多分、大人の方も絶対楽しめるし、いままでにないアニメーションだなと思います」とアピールする。

 ◇女優の仕事は今の自分の「全部」

 広瀬さんにとって女優の仕事は「今は全部です。目の前にあるもの全部なので。それがなくなったら何も残らないだろうなと思うくらい、今は本当にプライベートも仕事と関わってくるものなので、(今春卒業して)学校も行かなくなって、本当に自分が今、没頭しているものだと思います」と語る。

 今後、やってみたい役として「人格を変える役柄はいままであまりやってなかった。どこか自分に近い要素があったり、元気というイメージだったので。だから、仕草から作って、作り込んでやる役を演じてみたいなとも思います。コメディーやアクションもやってみたい」と目を輝かせる。特にアクションは「いままで体を張ることはあったんですけれど、本格的なアクションまではなかったので、楽しそうだなと思って」と意欲を見せる。

 そんな広瀬さんに「10年後、20年後、どうなっているか?」と想像してもらうと、「分からないですね。没頭するものが見つかったらそっちに走っていってしまうタイプなので、でも、自分に制限や限界をつけない人は男女関係なくカッコいいなと思うし、そうなりたいなと思います」と“女優”の枠にとどまらない活躍を期待させた。

 次回は、プライベートの過ごし方や気になるファッションなどについて聞く。

 <プロフィル>

 ひろせ・すず 1998年6月19日生まれ、静岡県出身。2012年、雑誌「Seventeen」の“ミスセブンティーン”に選ばれ、専属モデルに。13年に「幽かな彼女」(フジテレビ系)で女優デビュー。映画「海街diary」(15年)で、第39回日本アカデミー賞新人俳優賞ほか数々の賞を受賞。主な出演作に「ちはやふる-上の句・下の句-」「四月は君の嘘」「怒り」(すべて16年)、「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」(17年)など。今後、「三度目の殺人」が9月9日、「先生!」が10月28日に公開予定。劇場版アニメの声の出演は、15年の「バケモノの子」に続いて2度目。

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