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注目映画紹介:「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」日本の寓話を基に少年が運命に立ち向かう 川栄、ピエール瀧らが声優

 「コララインとボタンの魔女」のスタジオライカの最新作「KUBO クボ 二本の弦の秘密」(トラビス・ナイト監督)が、18日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開される。日本の寓話(ぐうわ)を基に、三味線で折り紙に命を与える不思議な少年クボが運命に立ち向かうさまを、ストップモーションアニメーションで描き出した。どのシーンも光と闇が美しく、郷愁を呼び覚まされる。

 少年クボは、村外れで母と2人暮らし。1人で村に下りては、三味線の音色で折り紙を自由に操る大道芸を披露していた。幼いころ、闇の魔力を持つ祖父に狙われて父と自らの片方の目を失ったクボは、さらなる刺客によって母も失い、独りぼっちになってしまう。母が言い残した「三つの武具」を見付けて、月の帝・祖父と戦うために、道中出会ったサルと、クワガタの姿にされたサムライと共に旅に出る……という展開。

 声優は、シャーリーズ・セロンさん、レイフ・ファインズさん、ルーニー・マーラさん、マシュー・マコノヒーさんらハリウッド俳優が担当。日本語吹き替え版は矢島晶子さん、ピエール瀧さん、川栄李奈さんら、豪華な顔ぶれがそろった。

 片方の目の少年と、しゃべるフサフサのサル、呪いによってクワガタにされたサムライ。顔を照らし出すほのかな光は、まるで本物の月明かりのように繊細だ。少年が真実を求めて闘う姿が、おとぎ話風の冒険譚(たん)となって、光と闇の絶妙な美しさの中にひもとかれていく。葛飾北斎などの日本の美術から影響を受けたという背景には、お盆や灯籠流しなどの伝統行事が織り込まれ、生と死の日本的なつながりや、失われつつある地縁のつながりを改めて感じ、熱いものがこみ上げてくる。

 ストップモーションアニメーション史上最大の4.9メートルの巨大がい骨から、折り紙でできた5センチの小さなサムライまで、人形を1秒24コマずつ動かすという気の遠くなるような方法で、圧巻の映像が出来上がった。3Dプリンターを使用し、顔の上下のパーツを分けて、顔全体を取り換えることなく表情の幅を広げている。ナイト監督は、黒澤明監督や宮崎駿監督を敬愛する大の日本マニア。今回特に黒澤映画の構成や照明だけでなく、その精神をも取り込もうとしたという。第89回アカデミー賞で長編アニメーション部門にノミネートされた。(キョーコ/フリーライター)

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