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松坂桃李:「不能犯」主演インタビュー(上) 口角上げた不適な笑みは鏡の前で研究

 俳優の松坂桃李さんが主演を務めた映画「不能犯」(白石晃士監督)が全国で公開中だ。マンガ誌「グランドジャンプ」(集英社)で連載中の宮月新さん原作、神崎裕也さん作画のマンガを実写映画化した。松坂さんは、次々と起きる変死事件の現場に現れるが、誰も犯行を立件できない=不能犯という謎の男を演じた。マンガ原作の実写化の難しさ、目指す俳優像などについて松坂さんに聞いた。

 「不能犯」は、都会で変死事件が連続して発生し、警察が証拠を見つけられない中、事件現場では必ず黒スーツの男・宇相吹正(うそぶき・ただし=松坂さん)が目撃されていた。男は、ある電話ボックスに殺人の依頼文を残しておくと、どこからともなく現れてターゲットを確実に死に至らしめるとうわさされているが、死因は病死や自殺に事故などで警察は犯行を立件できない=不能犯といわれていた……というストーリー。

 「見つめるだけで相手を死に追いやる」という宇相吹の人の心を操る能力が効かない刑事・多田友子役を沢尻エリカさん、その部下・百々瀬麻雄役を新田真剣佑さんが演じているほか、間宮祥太朗さん、真野恵里菜さん、水上剣星さん、安田顕さんらが出演している。

 ◇主人公のダークヒーローは「人間の負の感情の現し身」

 松坂さんが演じた宇相吹正は人の心を操り、死に追いやるという役どころ。目的を果たしたあとは目が赤く光り、「ニタァ」と笑う。「原作が結構な笑い方しているんです。台本にも『ニコッ』とか『ニヤッ』ではなくて『ニタァ』と書いてあって、そういう表現はいままでやったことがないので、そこは自分の中で研究しました」という。

 かなり口角を上げて笑う表情はインパクトがある。この表情について、松坂さんは「ここまで口角を上げたことはないですよね。上げ方や(下から見上げる)顔の角度は鏡の前で研究しました」と明かす。

 中畠義之プロデューサーは「原作の宇相吹のビジュアルを見たときに松坂桃李さんしか思いつかなかった」という。その言葉を伝えると松坂さんは「そんなことないと思いますけど……」と照れ笑いしつつ、“ご指名”に「ありがたいです」と喜ぶ。

 松坂さんの中で、宇相吹のキャラクターは「人の感情をより助長させて死に追いやっていくという“誘い役”といいますか。そういう立ち回りでもあるので、依頼人が自分の感情に負けて死に向かっていく瞬間に立ち会うと、思わずニタァとする気持ちも分かるなと思いますね。そりゃあ(口角も)上がるわ」と笑う。

 宇相吹には目的を果たした達成感がある一方、「自分の中で裏設定があるんですけど、宇相吹はどこかで(対象者が)自分に打ち勝ってほしいという思いがある。だから、ニタァとしたと同時にちょっとがっかり感というか。『やっぱりあなたもそう(自分に負けた)ですか。残念ですね』という」と表情の裏に隠された感情を読み解く。

 そんな中、沢尻さんが演じた多田刑事は唯一、宇相吹の術中にはまらない人物だ。松坂さんは「多田刑事と会うときは、『あっ、もしかしたらこの人だったら自分に勝てる人なのか』という希望と出会うんです」と一種、喜びの「ニタァ」であることを表しているという。

 松坂さんは、宇相吹について「本当は、自分は存在しない方がいいと思っていて、宇相吹は人間ではなく、人が作り出したもの、人の感情が大きくなって見えてしまっている存在といいますか、(人間の弱い部分の)現し身(うつしみ)といいますか」と分析した。

 ◇沢尻の初挑戦に驚き

 共演の沢尻さんは刑事役初挑戦。現場では「僕は『えっ、初めてなんですか』と。意外だったんですよ。第一線で活躍して、ある程度地位も確立している沢尻さんが、まだそういうチャレンジをするんだと。初挑戦って、年を重ねるとできにくくなるじゃないですか。(これまでやったことのある役など)やっぱり安心材料を持って現場に入りたいという思いはきっと皆さんあると思う。そんな中で沢尻さんは逆を行っているのが、すてきな感じがしました」とある意味、驚いたという。

 現場での沢尻さんは「ビンタ(のシーン)は男前でしたね。本当にあの役のことを考えて現場にいたといいますか、一本筋が通った現場の立ち姿というのが印象的でした。わりと誰とでもフランクにお話をされたり、現場ですごく愛されている感じでしたね」と役柄同様にカッコよかったという。部下の新人刑事役の新田真剣佑さんが「『姉御ついていきます』みたいな感じになっていた」というのもうなずける。

 映画はTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開中。

 <プロフィル>

 まつざか・とおり 1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。テレビ朝日系の特撮ドラマ「侍戦隊シンケンジャー」(2009年)でデビュー。映画「ツナグ」「麒麟の翼~劇場版・新参者」「今日、恋をはじめます」(すべて12年)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後も映画「マエストロ!」「日本のいちばん長い日」(共に15年)、「秘密 THE TOP SECRET」「真田十勇士」(共に16年)、「キセキ -あの日のソビト-」「ユリゴコロ」「彼女がその名を知らない鳥たち」(すべて17年)、ドラマは「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」(15年)、「ゆとりですがなにか」(16年)、「視覚探偵 日暮旅人」(17年)など数々の話題作に出演し、幅広い役柄を演じ分けている。「パディントン2」では声優を担当。公開待機作に「娼年」(4月6日公開)、「孤狼の血」(5月12日公開)がある。放送中のNHK連続テレビ小説「わろてんか」では主人公てんの夫役を演じた。

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