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注目映画紹介:「プロミスト・ランド」マット・デイモンが田舎町の財政再建と環境保全の板ばさみに

 「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(97年)から17年。マット・デイモンさんが脚本家兼主演として、ガス・バン・サント監督と3度目のタッグを組んだ「プロミスト・ランド」が22日に公開される。デイモンさんは主演だけでなく製作にも関わった。脚本は、環境活動家を演じたジョン・クラシンスキーさんと共同執筆。シェールガス革命を背景に、エネルギー会社のエリートコースを歩んできたデイモンさん演じる青年が、財政再建と環境保全の板ばさみになる田舎町で人生の岐路に立たされる。共演は「ファーゴ」(96年)のフランシス・マクドーマンドさん、「イントゥ・ザ・ワイルド」(07年)のハル・ホルブルックさん。

 スティーブ・バトラー(デイモンさん)は、大手エネルギー会社の幹部候補。シェールガスの採掘権を農場主から買収するため、仕事のパートナーであるスー(マクドーマンドさん)とともに、マッキンリーにやって来た。ここは農場しかないような田舎町。2人は町に溶け込むため、スーツからネルシャツに着替え、不況で困窮している町を救うことができると説明しながら、採掘権を安値で買い占めるために農家を戸別訪問し始める。手応えを感じていたはずだったが、翌日の住民集会で予期せぬことが起きる。高校教師のフランク(ホルブルックさん)が、ガス採掘による環境への影響を唱え始めたからだ。採掘は住民投票によって決められることになった。さらに、環境活動家のダスティン(クラシンスキーさん)が乗り込んできて、採掘によって受けた被害を語り出し、対立があおられていく……という展開。

 主人公のスティーブは、大手エネルギー会社の幹部候補。金にものをいわせ、住民から採掘権を買い占めていく勝ち組側の人間なのだが、その野望は真っすぐな信念に裏打ちされ、どこか人のよさを思わせる。一緒に働くスーは、物事を少し斜めに見ている。マクドーマンドさんが絶妙なユーモアも交えて演じ、スティーブの真面目さがさらに強調されている。冷静な高校教師を演じるホルブルックさんの存在感のある演技が印象的。そんな達者な役者たちが、米国の地方都市で起こっている現実的な問題を演じるのだから、見応えは十分だ。祖先からの土地を守りたいが、経済は困窮。未来に向けてどうしたらいいのか。苦しいジレンマが、スティーブのジレンマと重なっていく……。自然保護か町の再生か。単なる対立軸としてでなく、青年の中の一つの葛藤として描き出され、ともに考えさせられる。どこまでも緑が続く広々とした景色が、地下に眠るガスの存在を静かに物語り、町に持ち上がった喧騒(けんそう)と対比されて深く印象に残る。22日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。

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