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9日に公開された人気舞台を映画館で上映する「ゲキ×シネ」シリーズの最新作「劇団☆新感線」の「蒼の乱」(作・中島かずきさん、演出・いのうえひでのりさん)で主演を務めた天海祐希さん。天海さんは同劇団への出演は3度目で、松山ケンイチさん、早乙女太一さんらも出演し、2014年に上演された舞台を映像化した。国を追われ孤独ながらも優しく強い女(天海さん)が、不器用ながらも真っすぐに生きる男(松山さん)と出会い、戦火に運命を翻弄(ほんろう)される姿を描く。主人公の蒼真(そうま)を演じる天海さんに「蒼の乱」について聞いた。
◇劇団☆新感線の“人間力”に共感
天海さんが劇団☆新感線の公演に出演するのは、「薔薇とサムライ」「阿修羅城の瞳」に続き3度目で、今作も含めて3作とも「ゲキ×シネ」として映画館で上映されている。そのことを天海さんは「すごくうれしい」と喜び、「劇団☆新感線さんに出させていただいた舞台は全部ものすごく思い入れがある」と話す。
天海さん自身も出演することを楽しみにしているという同劇団の舞台公演だが、「いのうえさんの演出や人柄もありますし、劇団と支えてくださるスタッフの皆さんの“人間力”の高さ」が魅力だと語り、「この人たちと一緒に仕事をしたいとみんなが感じると思う。一緒にいて本当にすてきです」と絶賛する。
劇団の雰囲気について、「とてもいい意味で放っておいてくれない人達で、今の時代にとても素晴らしいと思う」と独特な言い回しで表現する。「例えば、ちょっと足をくじいたりしたら、みんなが『これを付けてみろ』『あそこに行ってみろ』とか言ってくれて、すごくすてきでありがたい」とその理由を説明。そして、「私もすごく(周りを)構う」と笑顔を見せる。
◇劇団☆新感線だからこそトライできる
これまで天海さんが出演してきた3作は、中島さんといのうえさんが手がけている。「出させていただいて思いましたが、いのうえさんはその人の短所までも愛しく見せてしまう人」といい、「この人のいいところを舞台に出したいという思いがものすごく強く、それでいて面白い。お客さまに対してものすごくサービス精神があると思う」といのうえさんを評す。
一方、中島さんについて、「かずきさんは一人一人の役者さんに心を傾けて(脚)本を書いてくださるので、その人その人の見せ場もちゃんとある」と称賛し、「一人一人にすごく愛情を持ってやってくださっているのが分かる」としみじみ語る。
天海さんも話す通り、今作は主要な人物だけではなく、あらゆる登場人物のバックボーンも描かれている。「皆さん、役を通して、役者さん本人が愛おしく見える」と切り出し、「たとえば私だったら、大きいこととか男役をやっていたこと、『ベルばら(ベルサイユのばら)』のオスカルをやっていないのにもかかわらずオスカルの格好をさせられるとか、そういうことであっても『ここ(の劇団)だからできる』『ここの人たちとだったら全然やっちゃうよ』みたいなふうに思える」と持論を展開。
続けて、「ちょっと自分でそれ苦手だなと思うことをやらされたとしても、やらせたことへの尻拭いはしてくれるから、変なふうには見えない」と笑顔を見せつつ、「ほかのところなら抵抗があるかもしれないけれど、このメンバーとだったら、いのうえさんとかずきさんが言うならやりましょう、となる」と同劇団への信頼感を語る。そして、「いつも友達には、舞台が初めてだったら劇団☆新感線が最初がいいんじゃないと言っている」と太鼓判を押す。
◇役者としてゲキ×シネが発奮材料に
今作で天海さんが演じるのは国を追われ孤独に生きる蒼真という女性。「蒼真はそうせざるを得なかったという部分が大きいのでは」と役柄について推測し、「人生全部が望んでやっていったことではない気がする」と話す。続けて、「自分が愛するもののために戦い、(松山さん演じる将門)小次郎とはその愛情の大きさとか深さのぶつかり合いだった気がする」と分析し、「彼女は小次郎の愛したものを守ろうとして、結果それが小次郎と戦うことになったとしても、負けるわけにはいかなかったんだと思う」と心情を思いやる。
松山さん演じる小次郎を「コロコロ変わっているけれど、彼の中では一本筋が通っている」と評し、「小次郎がそういうふうに見えるから、蒼真が一本筋が通っているように見えるのかもしれない」と語る。そして「なくなった祖国・故郷を蒼真に故郷をあげるよと言ってくれたような人」といい、「小次郎が故郷のようなものだったから、余計に彼女は負けられなかったんだと思うと、すごい切ない」と感じ入る。
舞台を映画館で体感するというゲキ×シネの魅力を、「すごくアップになったり、ここを見てくださいと(映像で)誘導もしてくれるから、楽に見ていただけるかもしれないし、話が分かりやすいかもしれない」と天海さん。さらに、「東京や大阪の劇場まで足を運ぶのが難しかったり、時間が合わないという方もいらっしゃる」と観劇できない状況に理解を示し、「そういう方も、どこか皆さんの街の近くまでゲキ×シネとして映画館に行くと思うので、近い街で大きなスクリーンで見ていただけるというのもすごくうれしい」と笑顔で語る。そして、「本当は劇場で生の舞台を見ていただいて、ゲキ×シネで見ていただいて、あともう一回、DVDで見ていただいてというのが一番理想(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに語る。
天海さんは、演じる側としてゲキ×シネは「舞台をやっている役者の一人としては、すごく自分を叱咤(しった)激励してくれる一つの材料かもしれない」と感じ、今作を見て「まず自分の芝居を見てがっかりして自己嫌悪に陥り、すごく落ち込みました」と明かす。「でもそれがなくなったらお仕事を続けている意味はないと思うし、成長しないと思う」と言い切り、「そういうことの発奮材料にもなる」と感謝する。
◇真っ白な状態で見てほしい
今作の見どころを、天海さんは「もちろん最初から最後まで全部」と自信をのぞかせる。「いくつも好きな場面がいっぱいある」という天海さんに、一つお気に入りのシーンを挙げてもらうと、「一番最初の『蒼の乱』という演目が出てくる場面は、何回自分でやっていてもいつも泣きそうになっていた」という。その理由を「(蒼真と小次郎の)2人が正面を切って流れ星を見ているというのは、ここ(この場面)でしか見られないと思うと、だんだん悲しく切なくなってくる」と説明し、「あそこのシーンは歌とともにとても好き」と笑顔を見せる。そして「2人が横に並んで流れ星を見ている景色を覚えておいていただくと、後半に行くにつれて2人の関係がどうなっていくのかというのも、苦しみを伴う切なさをもって見ていただけると思う」と観賞ポイントの一つを提示する。
好きなシーンではあるものの演じているときは、「すごくしんどかった」と振り返り、「出てきてからずっと走り回っているので、お寺に隠れるところまではずっと汗をかいてました」と言って笑う。好きなシーンは「ほかにもいっぱいある」そうだが、「見てくださった方が『あそこ好きでした』と言ってくださるのが好きなので、『ここ好きですよ』『ここすてきですよ』と先に誘導してしまうよりは、真っ白な状態でゲキ×シネを見ていただき、そこも楽しんでいただけたらいいなと思います」とメッセージを送った。映画は9日から全国で公開。
<プロフィル>
1967年8月8日生まれ、東京都出身。87年宝塚歌劇団に入団し、93年に史上最短で月組男役トップスターに就任。95年の退団後はドラマ、映画、舞台、CMなど幅広いジャンルで活躍し、95年度第33回ゴールデン・アロー賞演劇賞はじめ受賞歴も多数。出演映画には「アマルフィ 女神の報酬」(2009年)、「清洲会議」(2013年)などがある。7月公開予定の劇場版アニメ「ミニオンズ」では、最強最悪のボス、スカーレット・オーバーキルの日本語吹き替え版の声優を担当することが発表されている。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)