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中園ミホさんが脚本を手がけた篠原涼子さん主演の連続ドラマ「ハケンの品格」のワンシーン(C)日本テレビ
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中園ミホさんが脚本を手がけた篠原涼子さん主演の連続ドラマ「ハケンの品格」のワンシーン(C)日本テレビ

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中園ミホ:「ハケンの品格」「ドクターX」…人気脚本家の逆境に負けない生き方

 「やまとなでしこ」(フジテレビ系)、「ハケンの品格」(日本テレビ系)、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)、NHK連続テレビ小説「花子とアン」、大河ドラマ「西郷どん」など、数々のヒットドラマを生み出してきた脚本家の中園ミホさん。父親を早くに亡くし、19歳の時には母親も他界、「記憶がないくらいつらかった。ドラマがなかったら生きていけなかった」とテレビドラマに救われた経験を持つ。占師として活動後、28歳で脚本家デビュー、34歳で未婚の母となり、「脚本家をやめないと腹をくくった」いう中園さんの生き方とは……。

 ◇テレビドラマは「人生のピンチのときの命綱」

 中園さんは、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業後、広告代理店勤務、コピーライターを経て、14歳の頃から師事していた占師・今村宇太子さんのもとで、占師として活動を始める。1988年に脚本家としてデビューし、数々のテレビドラマを手がけてきた。

 あるインタビューで、テレビドラマについて「人生のピンチのときの命綱」と表現していた中園さん。その真意を聞いてみると、「父が早くに亡くなって、母も19歳で亡くなったときに、記憶がないくらいつらかった。お医者様に聞くと、人間あまりに精神的につらいことがあると記憶がなくなることもあるそうなのですが、その頃に見たドラマ、映画は鮮明に覚えているんですよ。その世界にひたることで、なんとか一番つらい時期を乗り越えられたと思う。そういう意味で『命綱』と言ったんだと思う」と振り返る。

 脚本家の倉本聰さん、山田太一さん、向田邦子さんのドラマは鮮烈に覚えているといい、中でも、向田脚本のテレビドラマ「阿修羅のごとく」(NHK)は、「母と夢中で見た最後の作品。今も見返すと、ドラマを見ながら母とかわした会話がよみがえり、幸せな時間を思い出します」と特別な存在だ。

 同じく向田脚本の「寺内貫太郎一家」(TBS系)は、「子供のときから大好きだった」といい、「大人っぽいコメディーで、『なんかこれ、子供が見ちゃいけない世界だな』とか思いながらすごく憧れて。ゲラゲラ笑えて、色っぽくて、大好きですね」と話す。

 放送中のドラマ「ハケンの品格」では、篠原涼子さんと大泉洋さんのコミカルなやり取りも話題だが、「コメディーを書きたがるのは、『寺内貫太郎一家』のようなのを、いつか書きたいという気持ちがあるから。理想ですけどね」と話す。

 ◇34歳で未婚の母に 出産直後、息子から…

 占師として活動しながらも、ものを書く仕事に憧れがあったという中園さん。著書「占いで強運をつかむ」(マガジンハウス)では、26歳の頃、思いを寄せていた脚本家に失恋したことをきっかけに、「同じ職業に就けば、またあの人に会える」との思いで、図書館に通い、失恋した相手の脚本を書き写したとつづっている。その後、知り合いの脚本家に誘われて、脚本の世界へ。28歳のときに、テレビドラマ「ニュータウン仮分署」(テレビ朝日系)で脚本家デビューを果たす。

 「脚本家になってもほんと才能ないし、構成も下手だし、刑事ドラマを書いても犯人がつかまらないドラマを書いちゃうし、本当にダメでつらかった。コツコツ書き上げるということも苦手だったので、なんかもっと楽な仕事があるはずだと、ずっと思っていた」と当時を振り返る。

 そんな中、34歳のときに男の子を出産した。未婚の母だった。「胎教は、『生まれてくれば、楽しいこといっぱいあるから、大丈夫、大丈夫。私も生まれてきたら楽しかったから。おいでおいで』と能天気に毎日おなかに言っていたんです」と明かす。「結構難産で、38時間かかっちゃったんですけど。助産師さんが『男の子ですよ』って連れてきてくれて、息子と目が合ったの」と出産直後の様子を明かす。

 「『生まれたばかりのときは、赤ちゃんは目が見えません』という人もいるんだけど、ぱちっと目が合って。息子がものすごくシリアスな顔をして、こっちをじっと見ていて。『お前、あんなふうに(胎教で)言ったけど、本当だろうな?』って声が聞こえたような気がして。その声も、赤ちゃん声じゃなくて、美輪明宏さんみたいな太ーい声で、『本当に大丈夫なんだろうな?』と言われたような気がして」

 それまでは「自分のことは好きじゃなかった」という中園さんだが、「本当に自分自身がまずは幸せにならないと、この子を幸せにすることなんてできない。そのためにはつらいことから逃げてばかりいないで、本当に気合を入れて生きないとまずいぞこれは、と思って。そこからは、過酷な連続ドラマの執筆も断らないで、腹をくくりました」と大きな転機となったことを明かす。

 ◇先が見えないときこそ…

 出産後、子育てと両立させながら、中山美穂さんが主人公のシングルマザーを演じたドラマ「For You」(1995年放送、フジテレビ系)を書き上げた中園さん。その後も、「やまとなでしこ」「ハケンの品格」など次々と話題作を生み出していく。

 2013年には、優れた脚本家に贈られる向田邦子賞を受賞した。当時の授賞式で、中園さんは、若くして両親を亡くし、未婚の母となった過去を振り返りながら「ついていない人生を送ってきたんですけど、こんなにいいこともあるんですね」と受賞の喜びを語っていた。

 その授賞式を取材していた記者が、当時のスピーチ内容を伝えると、「よく覚えていてくださったわね! 私、びっくりしちゃった! スピーチまで書き留めてくださってありがとうございます」と驚きつつ、「人生暗かったです(笑い)」と続けた。

 たとえ逆境でも、中園さんは立ち向かってきた。「花子とアン」で登場したせりふ「曲がり角の先に何があるかわからないの。でもきっと一番いいものに違いないと思う」が座右の銘だ。

 「先が見えなくなったときこそ、人は必死に夢を見る。『見たこともない美しい景色が、その先には広がっている』と思うことで、前を向いて歩いていけるんじゃないかな。今も大変な時代ですが、そういう先が見えないときこそ、あしたはすてきなことが起こるって、自分の体験を信じています。それが一番自分を支えてくれているんです」。

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