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[Alexandros]川上洋平:「ウチカレ」で話題も「ブレないように」 「おいで」シーンの裏側、主題歌への思いも明かす

 北川悦吏子さんが脚本を手がけ、菅野美穂さんが主演する連続ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(ウチカレ、日本テレビ系、水曜午後10時)でテレビドラマ初出演を果たしたロックバンド[Alexandros](アレキサンドロス)のボーカル&ギターの川上洋平さん。その演技に“胸キュン”する視聴者が続出し、話題を呼んでいる。同作の主題歌の作曲も担当した川上さんに、ドラマへの思いや主題歌の制作秘話、音楽のルーツや、バンドの近況などについて聞いた。

 ◇北川悦吏子ドラマの大ファン 橘漱石との共通点は「仕事への愛」

 川上さんは「ウチカレ」で、菅野さん演じる小説家・水無瀬碧(みなせ・あおい)の担当編集者・橘漱石(たちばな・そうせき)を演じている。

 「僕、北川さんのドラマがもう大好きで。ドラマというものを最初に体験したのが、北川さんの『愛していると言ってくれ』だったんです。『素顔のままで』も好きで。北川さんのドラマだったので、オファーをいただいたのなら『出るしかないな、断りたくないな』って。橘漱石という役柄も最初から決まっていて、これは絶対に他の人に譲りたくないな、手放したくないなと思ったんです」と出演を決めたときの心境を振り返る。

 ドラマの撮影現場では「演じることの楽しさを感じています。自分にない人間像や架空のキャラクターを作り上げる作業はすごく楽しいですね」という川上さん。同時に「表現という意味では音楽と同じだし、見てくれる人を楽しませるエンターテインメントの世界というのも同じ。でも、自分が普段やっている音楽は、いかに自分を出すか、ということなんですけど、演じることは逆で、いかに自分を消して、与えられたキャラクターを演じるかだと思うんです。そういう点では真逆なので、違うスイッチを入れながらやっています」とミュージシャンならではの言葉も。

 「橘漱石は、表舞台か裏方かで言ったら裏方の人間。普段、僕は表舞台のステージに立つ側ですけど、漱石は、表舞台に立つ人間を支える側なので、僕が『こういうふうに支えられているんだな』ということが垣間見られる役でもあると個人的には捉えています。あと、漱石って仕事にすごく真面目で、情熱や愛をしっかり持っている人だな、ということが分かってきて。僕も、仕事に対して同じようにすごく愛を持っているので、そこは共通点だと思っています。愛情の対象や生き方は違うかもしれないけど、仕事に対する真摯(しんし)さは表現したいなと思いました」

 川上さんが「漱石の一番好きなセリフ」と言うのが第4話でのシーン。碧(菅野さん)の小説の映画化が決まるが、主演を務める人気バンドのボーカル・ユウト(赤楚衛二さん)が、自分が目立つように原作の内容を勝手に変えようとする。そこで、漱石がユウトに直談判してそれを止めさせようとする……という場面だ。

 漱石は、バンドマンであるユウトに対し、もし自分が思いを込めて作った作品が自分の意図と違うように変えられたら、どんなにつらいかという意味で「あなたなら分かるんじゃないですか? 命があると思われるものを生み出すために、どれだけの苦労や悩みの時間があったか」と諭す。

 川上さんは作品を生み出すミュージシャンという立場からも「このセリフは自分でもグッときて。“そうだよな、分かるなあ”って。自分で言っていて、ちょっと泣きそうになりました」と明かした。

 ◇「おいで」シーンの“裏側” 魅力を感じるのは「尊敬できる女性」

 第1話では、恋愛小説を依頼されるものの、恋愛から遠のいて弱気になっている碧に、「おいで」と両手を広げる“キュン”シーンが話題に。このシチュエーションについて川上さんは「自分なりの解釈ですけど、あれは、まだ恋愛感情の『おいで』ではなくて、『碧さんの仕事がはかどるなら、僕でよければ何でもしますよ』という意味だと思うんです。碧さんに対して『抱きしめたい』という意味ではなかったんだと思う」と分析する。

 だが、視聴者からは「『おいで』されたい」「イケボすぎる」といった声が上がり、ツイッターでは「川上洋平」「洋平さん」がトレンド入り。大きな反響を呼んでいるが、川上さんは「(反響が)あるかどうかも分かっていなくて。“緊張感の糸”が途切れないように、見ないようにしているっていうのもあるんですけど……。撮影では緊張はしていないんですけど、その糸が途切れてしまった瞬間に、緊張しちゃうと思うんです。『俺、菅野美穂さんと一緒にいる! 北川悦吏子さんの世界にいる!』みたいなことを意識してしまうと、たぶん崩れてしまう。ドラマの世界では、今、橘漱石としているので、いろんな感想はあると思うんですけど、自分としてはブレないようにしないと、とは思っています」と思いをのぞかせる。

 自身が魅力を感じ、“キュン”とする女性の姿については「すてきだなと思うのは、一生懸命、仕事をしているとき。例えば、力仕事系の人が汗をかいていたり、取材で(ライターの人が)紙に書きとめていたり。すごく熱中して仕事をしていて、人目もはばからず没頭している姿を見ると、カッコイイなと思いますね。いわゆる“キュン”と言われるものは、中高生の頃はあったかもしれないですけど(笑い)、今は恋愛感情が先というよりも、まずカッコイイかどうか、尊敬できる部分があるかどうか。そこにひかれますね」と笑顔を見せる。

 演技の経験によって「今までの自分になかった“新しい自分”が構築された。自分の中の“役者の根”みたいなものが芽生えたことは間違いない」という川上さん。今後の俳優業にも期待が高まるところだが、「僕は映画やドラマがすごく好きで、でもだからこそ、役者さんという職業に対してすごくリスペクトを感じていて、常にそれを見ていたい人なんです。自分がやるってなったときは、どうなんだろうって。もしお話をいただいて、自分ができそうだと思えれば……」と謙虚に語った。

 川上さんは、家入レオさんが歌う同ドラマの主題歌「空と青」の作曲も担当。「ドラマはラブコメっぽい感じもあるんですけど、親子の関係性が軸になっていて、いろんな捉え方ができるような曲が必要だなと。そう思ったとき、バラードすぎず、アップテンポすぎないものがいいかなと思って」という構想から曲が制作された。

 「僕は、“生”に対する喜びや厳しさ、といった感情をメロディーに詰め込んだつもりです。特にこのご時世、生きることに対して(意義や希望を)見出せない人が多いと思うんです。僕の場合はライブができなくなって、人前で表現する機会がなくなり、“じゃあ僕がやってきたことって何なんだろう”って。どんな職業でも、そういう思いをした人がいると思うんです。そんな中で『この人生、ムカつくけど、たまに笑えるよね』ということを組み込みたかった。“生きる”ということの闇を捉えつつ、何かを見いだしていこうよと。やっぱり“希望”というものは散りばめました」

 ◇音楽好きの兄姉や海外生活の影響で洋楽バンドに夢中に

 川上さんは、神奈川県出身。小学3年から中学3年まで海外で過ごし、アメリカンスクールに通った。バンドを組んでいた兄、ピアノや歌が好きな姉の影響で、幼少の頃から音楽に慣れ親しみ、初めて楽器に触れたのが「小学5年のとき」。アメリカンスクールでクラシックギター教室があり、民謡やクラシック、当時流行していたバンド「ニルヴァーナ」などの曲を習った。「日本語の勉強をするために家庭教師の先生もいて、その先生が僕にフォークギターを本格的に教えてくれました。勉強よりもギターレッスンをしていた気がします(笑い)」

 小中学時代を過ごした海外では娯楽が少なかったといい、「自分で遊ぶものを作るという方向にいって、その一つが音楽だったんです。自分を満足させるもの、楽しませるもの=“口ずさむ”ということから始まり、それがメロディーになり曲になっていく……という感じでした。それをテープに録音して、そのときなりの“レコーディング”をしていました」と曲作りの原点を明かす。

 兄の影響で「ガンズ・アンド・ローゼズ」を知り、「オアシス」などに心酔。日本に帰国した後は、高校や大学で知り合ったメンバーで[Champagne]を結成し、2010年にデビュー。2014年3月にバンド名を[Alexandros]に改名し、昨年デビュー10周年を迎えた。

 ◇ 今後も「一つになる瞬間の美しさ」追求したい

 [Alexandros]の活動では、今年3月17日にデビュー10周年を記念した2枚組みのベストアルバム「Where’s My History?」をリリース。「ファーストアルバムが『Where’s My Potato?』(2010年発売)というタイトルだったので、10周年に至るにはここから始まったんだよ、ということを伝えるために、それに掛けたタイトルにしました。直訳すると『俺の歴史はどこに行った?』という意味ですけど、“自分にとっての[Alexandros]はこれだな”という年表みたいに捉えてもらえると面白いかなって。[Alexandros]時代の[A]盤と[Champagne]時代の[C]盤があって、年代順風に曲も組まれているし、『私はこの曲から知ったのよね』とか『彼女にフラれた時にこの曲を聴いていたな』みたいな感じのアルバムになれば」と思いを語る。

 ベストアルバムは、昨年リリースされる予定だったがコロナ禍で発売が延期になった。「10周年で出そう思っていたものが出せなくなって、絶対に忘れられない、本当に記念すべきベストアルバムになるんじゃないかな。11周年になったので、さらに新曲も入れて、“ベストアルバム、プラスアルファ”な作品になったと思います」

 収録曲の中で思い出深い曲は「全部」としつつ、特にバンド初期の楽曲だという。「ファーストアルバムの曲とかはやっぱり思い出がありますね。あとは、『温度差』というアマチュア時代の曲があって、路上ライブとかでCDを無料で配布していたんですけど、デビューしてから、この曲は正式には発売していなかったんです。でもファンの人にリクエストを募ると、名前が挙がる曲だった。それなら、アマチュア時代の自分たちを支えてくれた曲でもあるし、感謝を込めて、再レコーディングをしてもう1回出そう、ということになりました」

 今回のベストアルバムのリリースをもって、ドラムの庄村聡泰さんが勇退し、[Alexandros]は一つの節目を迎える。今後、掲げる目標は「もっとデッカイ会場でライブをやりたい。ドームツアーもやりたいです。でも同時に、ライブハウスでやる楽しさも忘れたくない。どこでもライブができるバンドになりたいんです。アイドルやアニメのイベントでも、日本語が通じない海外のイベントでも。海外に住んでいた頃、いろんな国の人の前でパフォーマンスしたときに、みんなが喜んでくれたり褒めたりしてくれて、そのときの喜びってやっぱり今でもあるんです。環境や思想が違っても、一つになる瞬間の美しさってやっぱりあるので、それはやり続けていきたいです」と力を込めた。

 10年後の未来像について聞くと「そこを想像しないようにしているんです。でもちゃんと目標は持っているので、そこに対して情熱を持ってやっていきたいです。その結果どうなっているかは、楽しみにしておきたいですね」と目を輝かせた。

(取材・文・撮影/水白京)

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