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第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。第4回は映画監督の河瀬直美さん。当時の思い出や、アラサー時代をより輝かせるためのアドバイス、公開中の映画「再会の奈良」などについて聞きました。(全3回、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
◇30歳は自分を深く見つめて。比べるなら人ではなく昨日の自分と
恋愛、キャリア、結婚、出産……“30歳のころ”は人生の選択肢も多く、思い悩むことも多い。
「アラサー時代は、自分を見つめ、突きつめていくほどに、自己を深められるときだと思うんです。恋愛をするのもいいですね。お互いが真剣に見つめ合えるような。ある意味、遊びじゃない恋愛です。友人にしてもそう。30代で深いつながりができたものは、その後、生涯の関係性へと続いていくと思うんです」と話す。
自分を見つめるとき、ぜひ気をつけてほしいのは、「他人と比べないこと」だという。河瀬さんが自身の体験を語る。
「20代でカンヌ映画祭から日本に戻り、東京へ出てきたときは、成功した人がうらやましいと思ったり、ハウツー本を読んだり。他人への嫉妬と執着を繰り返していました。結局、自分を人と比べていたんですよね。アラサーのみなさんには、比べるのは“昨日の自分”にしてほしい。自分を高めていくことにフォーカスしていけば、他人が気にならなくなる」
◇30代はトライ・アンド・エラーの連続だった
30代になると、人によっては責任のある仕事を任されて、生活習慣が乱れたり、ストレスがたまったりすることもある。河瀬さん自身も仕事で体を壊した体験から、長いスパンで健康管理に取り組むことの大切さを感じたという。
「30代で奈良に戻った後、健康オタクになったんです。東京に住んでいたころは、食べるものなんて何でもいいと思っていたのですが、奈良に帰ってから自分の体と心に向き合い、きちんとした食事をするようになりました。半身浴をして、着るものもオーガニックなものに変えたり。長く続けることで、体が“整って”きました」
そんな河瀬さんが30代でやっておけばよかったと思うのは英語学習。
「40代で一気に勉強したのですが、撮影の現場などでも、通訳を介して話すと、やっぱり深いところまで話ができない。ときどきまどろっこしい気持ちになります。英語が話せると、日本の価値観だけではなく、外から日本が見えることによって視野が広がります。もっと自分自身の言葉で英語を話せたらと思いますね」と真摯(しんし)に語った。
最後に、河瀬さんにとって、30代はどんな時代だったのかを尋ねた。
「思えば、30代はトライ・アンド・エラーの連続でした。うまくいかないことも多かったし、いい作品ができればうれしい。今も順調なことと、そうでないことの繰り返しです。……人生は振り子みたいなものですね(笑い)。ただ、失敗の振り幅が大きいほど、表現者としての幅になります。それに、とことん沈んだらジャンプするしかないんです」
◇プロフィル
かわせ・なおみ 映画作家。生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続け、一貫したリアリティーの追求は、カンヌ映画祭をはじめ、国内外で高い評価を受ける。映画監督のほか、東京2020オリンピック公式映画総監督、2025年大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー兼シニアアドバイザー、バスケットボール女子日本リーグ会長、ユネスコ親善大使を務める。プライベートでは野菜や米も作る1児の母。
*……「再会の奈良」▽監督:ポンフェイ▽エグゼクティブプロデューサー:河瀬直美、ジャ・ジャンクー▽出演:國村隼、ウー・イエンシュー、イン・ズー、秋山真太郎、永瀬正敏▽2月4日からシネスイッチ銀座ほかで全国公開
*……河瀬さんの「瀬」は旧字体が正式表記