「あさイチ」に出演した糖尿病や肥満症を専門とする国立病院機構「京都医療センター」の医師、浅原哲子さん
NHKの朝の情報番組「あさイチ」(総合、月~金曜午前8時15分)の「今度こそやせる!不要な食欲を抑えるコツSP」(3月17日放送)に出演した糖尿病や肥満症を専門とする医学博士で、国立病院機構「京都医療センター」の医師、浅原哲子さん。肥満・メタボリックシンドローム外来を約20年にわたって担当し、3000人以上のダイエットを成功させた浅原さんに、肥満を改善する四つの療法や、お菓子の誘惑に打ち勝つ方法などについて聞いた。
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◇糖尿病や肥満に興味を持ったきっかけは?
「あさイチ」に出演後、浅原さんは「非常に多くの方が見ている番組なので、ダイエットの重要性や、肥満のこと、食事療法につながる大切な情報をお伝えできる機会をいただいて大変うれしく思います」と実感を込めて語る。生放送が初めてだったため、緊張したというが、「スタジオの雰囲気が良くて、情報伝えるだけではなくて、視聴者の方が共感できるような内容になってすごく良かったなと思っています」と顔をほころばせる。
浅原さんが糖尿病や肥満といった研究分野に興味を持ったのは、京都大学の大学院で「レプチン」という、脂肪細胞から分泌される摂食抑制ホルモンについて知ったことがきっかけだった。
「大学院2年目で、眠っている臓器だと思われていた脂肪細胞から『レプチン』という摂食抑制ホルモンが出ていて、それが脳に働き、満腹感を味わわせる。そんなホルモンが発見されて、大学院の研究テーマになりました。肥満について興味があって、レプチンがあるからこそ人間は体重が維持できていることや、ラットにレプチンを打つと、次の日に20グラムぐらい痩せていたことにとても感銘を受けまして。そこから研究を進めていきました」
◇肥満外来を訪れた人に伝える四つ食事・運動療法
肥満によって糖尿病、高血圧、脳梗塞(のうこうそく)、狭心症などの冠動脈疾患、睡眠時無呼吸症候群、非アルコール性脂肪性肝疾患などを引き起こすリスクが高まる。特に若い女性は、肥満によってホルモンバランスが崩れ、無月経になるなど体の不調の原因になるという。
「若い女性の場合は、肥満によって無月経になったりするんです。11合併症の一つと学会では言われていて、健康障害の一つなんですね。体重が80キロや90キロになってくると月経不順や無月経に悩む人が多く外来を訪れます。無月経から不妊にもつながり、産婦人科から紹介されてくる方もいます」
その上の世代の女性では「40代、50代では、30代から出産するたびに太ってしまって、自分でダイエットを何度も試みるけれどリバウンドを繰り返しているという悩みや、50代以上では糖尿病やその合併症が出てきて、60代になると膝が痛いなどの整形外科疾患があり、数々の合併症を抱えて診察を受けに来られる方が多いですね」と話す。
外来を訪れた人たちにはどんなアドバイスをするのだろうか。
「そういう方たちには、まず今の自分の体重が肥満度1なのか2なのか知ってもらいます。その他、たくさんやらなければいけない食事・運動療法がありますが、四つに絞ると、できれば1日8000歩を歩くこと。とにかく間食をやめること。それが難しそうでしたら野菜から食べること。そしてフライ、揚げ物、天ぷらなどの油ものをやめること。この四つを実践し生活習慣を変えていくと、毎月1キロは減り、普通にやれば1年で12キロ減ります。3、4カ月で13キロ痩せたという人もいました」
◇さまざまな分野の専門家が考えた「お菓子の誘惑に打ち勝つ方法」
四つの中でも最も悪影響があるのが“間食”だ。浅原さんは、食事以外にお菓子やアイスを毎日のように食べている人に対して、「ご飯の食べ過ぎより、お菓子の食べ過ぎが体に良くない」と指摘する。
「お菓子の方が、糖の吸収が早くて、血糖値がすぐに上がり、インスリンも上がりやすくなって、内臓脂肪が溜(た)まりやすくなるんですね。内臓脂肪はいろんな合併症につながります」と注意を促す。
番組では浅原さんのほか、行動学や脳科学などさまざまな分野の専門家からの助言をもとに、「お菓子の誘惑に打ち勝つ方法」を提示した。
利き手の親指に絆創膏(ばんそうこう)を貼ってお菓子を取る手を止めさせる方法や、非常持ち出し袋に入れる、普段開かない戸棚にしまうなど、目に触れないようにする方法、「誰かに見られている」ことを意識させるために両目のステッカーをお菓子置き場の目立つところに貼るなどの方法が紹介された。
浅原さんは「外来に来る人にポテトチップスを買わないように厳しく指導しても、リバウンドしてしまうことが多い」といい、「(自分以外の)家族でも友人でもいい、他人にダイエット宣言をする」ことを勧める。脳科学の専門家からは五感を使いながら、ゆっくり食べることによって「少量でも満足感を得られる」方法も紹介した。
◇肥満症を防ぐ三つの“知る”
その上で、肥満症を防ぐには「体重計に乗って現実を知る」「記録して何を食べたかを知る」「重大な病気につながることを知る」の三つの“知る”を提唱する。浅原さんは「自分の現実を知るために何を食べたか小さいメモ帳に書くだけでもいいですし、最近は体重管理のアプリもありますので、できれば体重を量るところからやってみてください」と呼びかける。
外来では、「とにかくダイエットノートに食べたものを記録してもらう」という。
「書いてきてもらうと、この日はラーメンで太ってるなとか、カレーで太ってるなとか、菓子パンで太ってるなとかが分かるんです。30分歩いて、もうかなり歩いたなって感じになるけれど、80キロカロリーしか消費できてないんですよ。だからケーキを食べちゃったら400キロカロリーだから、30分を5回歩かないといけないんです。まずはお菓子を食べる回数を減らす。できれば買わない、手の届くところに置いておかないことですね」
自分が病気かどうかわからないけれど、もしかしたら将来、肥満や糖尿病になってしまうかもしれないと不安に思ってる人に向けては?
「まずは健康診断をちゃんと受けていただきたいですね。健康診断では当日に生活習慣病の問診をするんですが、『はい』と答えた中で一番、脂肪性肝疾患(脂肪肝)につながる質問項目は、『20歳のときに比べて、10キロ以上太った人』。40、50代では多くなってきますので、体重を測ってBMI25以下ならいいんですけど、それ以上ですと食事や運動の見直しをしていただきたいです」と呼びかけた。
<プロフィル>
浅原(旧姓:佐藤)哲子(あさはら・のりこ) 国立病院機構「京都医療センター」臨床研究センター内分泌代謝高血圧研究部部長。京都府出身。九州大学医学部卒。2019年度日本糖尿病学会第一回女性研究者賞受賞。京都医療センターの肥満・メタボリックシンドローム外来を約20年にわたって担当し、3000人以上を診察・指導しダイエット成功に導いている。専門分野は糖尿病 、肥満症(メタボリックシンドローム)、内分泌。
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