「LEE」創刊号(C)「LEE」1983年7月号/集英社
30~40代の女性向け月刊誌「LEE(リー)」(集英社)が5月に創刊40周年を迎えた。6日発売の創刊40周年記念号(2023年6月号)では、俳優の菅野美穂さんが表紙を飾り、故・夏目雅子さん(1984年1月号)や黒木瞳さん(1993年4月号)、広末涼子さん(2013年5月号)ら、そうそうたる顔ぶれが並ぶこれまでの表紙写真を掲載。平均発行部数12万2000部。安定して高い発行部数を保ってきた同誌の歩みをひもとき、長寿の秘訣(ひけつ)を探った。
◇一歩先でも半歩先でもなく、読者に寄り添った誌面作り
「LEE」は、1983年5月に創刊された。2008年から関わっている畑江貴子・LEEブランド統括、LEEweb編集長は、雑誌という“読者の一歩先を行くメディア”の中で、「一歩先でも半歩先でもなくて、本当に寄り添う形。常に顔の見える読者が身近にいて、一緒にメディアを作っている感覚」と同誌を表現する。
1998年の入社時から同誌に関わる喜多佳子編集長は「女性の生き方とおしゃれと暮らしの3本柱が40年、ぶれていない」といい、「随所随所で読者に支持される“おしゃれと暮らしのスター”がいたことが『LEE』としての深みになった」と語る。
これまでに同誌から、料理研究家の栗原はるみさん、モデルでデザイナーの雅姫(まさき)さん、モデルの浜島直子さんら“スター”が生まれた。
1985年から誌面に登場した栗原さん。料理の取材といえばそれまでは専門的に学んだ人ばかりだった時代に、「専業主婦だった栗原さんが普段作っていた家庭料理の魅力を紹介する記事が圧倒的に読者に支持されました」(喜多さん)といまだに誌面に登場する同誌を体現するスターの一人。
モデルでデザイナーでもある雅姫さんは、「インテリアのリポートなどでのすてきな暮らしぶりが編集部でも評判に。読者から雅姫さんをもっと見たいという声が上がり、何度も特集を重ねました」と2000年ごろから誌面で特集してきた。「雅姫さんが紹介したアンティークのカフェオレボウルなどの雑貨が“どこで買えるのか”という読者からの問い合わせが編集部に多くかかってきました」(喜多さん)と振り返る。
その他にも、スタイリストの伊藤まさこさん、料理研究家のコウテンケツさん、整理収納アドバイザーのEmiさんら“暮らしのスター”が生まれた。
創刊40周年記念号では、雅姫さんのすてきなインテリアの歴史を振り返る「雅姫さんの家におじゃまします!」や、浜島さんの「今、『はまじ』に聞きたい 40 のこと」など歴代の“スター”が登場している。
◇「LEE100人隊」「LEEメンバー」が誌面作りの大きな力に
同誌の一番の転機は、2007年にファンコミュニティーの先駆けともいえる、読者ブロガー組織「LEE100人隊」を結成したことにある。
「LEE100人隊」は、同誌の世界観に共感する30~40代の女性143人(2023年5月現在。3年任期の定数100人+その後も継続を希望する最長10年のトップブロガー43人)で構成され、生活者の目線でブログを執筆。100人隊の記事は、月間で少ない月でも800本、多い月では1300本の記事が更新される。
1993年に入社し、「LEE」に配属される2008年まで「MEN'S NON-NO」編集部に在籍していた畑江さんは、「読者が身近にいて、意見を聞こうと思えばすぐに聞ける。私も“MEN'S100人隊”を作りたいというくらい、うらやましい存在でした」と、同社の中でも「LEE」は最も読者に近い雑誌として知られていた。
更新された内容を編集部では随時チェックし、そこから気になるテーマを取り上げ、誌面に反映してきた。
さらにウェブで展開しているオリジナルの会員組織「LEEメンバー」も誌面作りの大きな力になっている。
会員登録しているメンバーは10万6000人に達した。「メンバーに編集部からアンケートを送ると、すごく熱い回答をくださる。編集部の一員だというくらいの気持ちで書いてくださっていると思います。これもすごく力になっている。読者が何を考え、何に興味を持ち、何に悩んでいるのかが手に取るように分かる。本当にファンの皆さんの力をお借りして、誌面作りをしてきたというのが『LEE』の強み」(畑江さん)と胸を張る。
◇働く女性が7割に 読者の変遷に合わせた内容に
徹底して読者の気持ちに寄り添う誌面作りで40年歩んできた同誌。読者の変遷と共に取り上げるテーマも変わってきた。
仕事を持っている読者は現在では7割に上る。自然と「ワーク・ライフバランス」「共働き」などがテーマに取り上げられるようになった。最近では家事シェア、子育て、そこから生まれる葛藤など夫婦で読める内容を心がけているという。
「2008年前後に夫婦に注目をするようになり、ここで浜島さんのご夫婦に出ていただいて反響がありました。2010年以降にはワーク・ライフバランス、共働きの層に向き合う特集で、夫婦や家族のテーマを大事にするようになりました」(喜多さん)
「今は『おしゃれも暮らしも心地よく』をテーマに、自分がここまでやったら心地よいというところを探し、上手に手抜きできるところがあれば手を抜けばいいというスタンスが主流です」(畑江さん)
今後は、情報があふれる中で、暮らしもファッションも「『何が自分にとって大切か』を見極めたい読者のニーズにさらに寄り添っていきたい」という。読者とともにある同誌の歩みはこれから先もまだまだ続きそうだ。