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俳優の東出昌大さん主演の映画「OVER DRIVE」(羽住英一郎監督)は、自動車競技「ラリー」の世界を舞台に、レースに情熱を注ぐ若者たちの姿を描いたエンターテインメント作だ。東出さんは、天才ドライバーの弟をメカニックとして支える主人公、檜山篤洋を演じている。東出さんに、役作りや今回の経験が自身にもたらしたもの、さらに30歳になった今の心境を聞いた。
◇弟役・真剣佑とは「なんでも話せる仲に」
東出さんは演じた篤洋の魅力を「無骨なんですけど、信念を持って仕事をしている、頼りがいのある男。一生懸命なところ、働く男を代表するような男らしさに引かれました」と語る。その半面、「一人で重圧を抱え込んでいて、ある意味、独りよがりなところがある。そういう責任感の強さがあったから、チーフメカニックになれたと思うんですけど、その一歩先、柔軟性みたいなものがあると、さらにいい人物になれるのではないか」と欠点を指摘しつつ、「でも、割と好男子だと思います(笑い)」と篤洋像を紹介する。
東出さんが演じるのは、ラリーのチームでチーフメカニックを務める檜山篤洋。新田真剣佑さん扮(ふん)する、リスクを顧みない勝気なドライバー、檜山直純を陰で支える実直な兄だ。新田さんとは、「なんでも話せる仲になりたい」と、「お互いの生い立ちから、普段何を考えているのか、お芝居に対して思っていることなどパーソナルな話」を多く交わすことで関係を築いていった。
自身、性格は「基本的にネアカ」だという。だが、新田さんが演じる直純ほど「元気はつらつではありませんし、どちらかというと末っ子タイプ」と自己分析。実生活では、新田さんに弟がいるのに対し、東出さんは2人兄弟の弟。「お互い、日常とは逆だねと言いながら」演じていったという。半面、「男兄弟がいる役なので、すごくやりやすかったです」と振り返るが、「兄というのはなんでもできると思われていますし、矢面というか、みんなの責任感が集まるところにいる、そういう兄ゆえの呪縛」を今回、疑似体験したようだ。
◇見どころは「背中」
ドライバーが主人公のカーレース映画は多いが、メカニックに焦点が当たっている点が、今作の「面白いところで、新しいところ」と東出さんは指摘する。実際のラリーにおいても、「女性ファンはまず、ドライバーに興味がある。イケメンドライバーもいるし、ドライバーは花形」なのに対して、サービスパークで車を整備するメカニックの人たちを熱中して見ているのは「男しかいない」と笑う。「すみ分けがなされているというか。ですから、メカニックのよさは男臭さであり、泥臭さ。そこで格好つけてもしょうがない」と考え、今作では「花形はドライバーのマッケン(新田さん)と(直純のライバル新海彰役の)北村匠海に任せて」、自身は「リアリティー」を追求し、「愚直にやっている『車バカ』」を演じることに心血を注いだ。
そんな篤洋の注目してほしい部分を聞くと、「自分で言うのもおこがましいし、恥ずかしいんですけど」とした上で、「羽住監督と対談したときに、監督が、篤洋の見どころは『背中』だとおっしゃっていたんです。いろんなアングルで撮ったけれど、背中を使ったシーンが多いと。僕としては背中でのお芝居とか、背中で語ろうとかはまったく思わないのですけれども、“表”を見せていない分、何を考えているのだろうとか、思うところがあるということを感じ取っていただければ」と語る。
篤洋は、東出さんいわく、「不安や憂鬱にさいなまれて、悩みを持っている」という役。それを演じながら東出さん自身も、「羽住組という大規模な作品の中で、また、素晴らしい台本というプレッシャーがもう一つあって、自分のこのお芝居で大丈夫なのだろうか、あのシーンとの整合性はとれているのだろうか、といろいろ考えることがあった」そうで、「そんなときに背中を押してくれたのが、監督であり共演者でした」と胸の内を明かす。
完成した作品を見たときは、「自分の想像を超える面白いものになっていたし、200%人に薦められる作品だ」と自信は持てたが、それもまた、「周囲の人の力があったから」こそのものと考えた。「ありきたりな言い方ですが、人を信じること、人に助けてもらうことの大事さを痛感した作品でした」としみじみ語る。
◇30代は「第一に仕事」
20代のころは、仕事もプライベートも忙しく、「常に不安や焦燥感みたいなものに駆られていて、自分にこの仕事ができるのか、続けられるのかとかずっと思っていました」という。しかし、2012年の俳優デビューから6年がたつ中で、「他者と比較したり、自分はこれでいいのだろうかと考えたりしても、なるようにしかならない」と考えられるようになった。そして30歳になった今、30代の目標を「まず、第一に仕事。いただいた仕事を一生懸命やるということを、20代のころにも増して愚直にやっていきたいです」と掲げる。そして「あとは余暇を大事にする。その余暇でいろいろな発見をして、いろいろなことを考え、人間的に大きくなっていきたいと思っているところです」と続ける。そこには、人間的な成長が、俳優としての成長も促すという考えがのぞく。
余暇には、読書したり、最近は忙しくてなかなか実現できていないが、旅行をしたりするという。「いろいろな地方に行って、いろいろな職業の方と、いろいろな話をするのが好き」なのだという。子育てにも参加しているが、世にいう“イクメン”ではないという。「自分は割と古臭い人間で、大黒柱ではないですけど、頼りがいのある男になることが最優先と思って日常を送っています」と話す。10年後の自分は「想像できないです」としながらも、30代は、その「頼りがいのある男」になるべく、一層仕事にまい進していくつもりだという。映画は1日から全国で公開中。
<プロフィル>
ひがしで・まさひろ 1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。映画「桐島、部活やめるってよ」(2012年)で俳優デビュー。「クローズEXPLODE」(14年)で映画初主演を務める。最近の映画出演作に「聖の青春」「デスノート Light up the NEW world」(共に16年)、「関ヶ原」「散歩する侵略者」(共に17年)など。18年の公開待機作に「パンク侍、斬られて候」「菊とギロチン」「寝ても覚めても」がある。
(取材・文・撮影/りんたいこ)