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15歳でCDデビューし、今年30周年を迎えたクラシックギタリストの村治佳織さん。10月18日にファン投票で選曲されたベストアルバム「Canon~オールタイム・ベスト」(ユニバーサルミュージック)がリリースされた。ギターを始めてからこれまでの向き合い方、30代で大病を経験し感じたことなどを聞いた。
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村治さんがギターを始めたのは、父がギター教室の先生で、身近な存在だったから。赤ちゃんのときからギターが手に届くところにあった村治さんにとって、弾くことは「食べることやお風呂に入ることと同じレベル」だったという。
「ご飯を食べる、歯磨きをする流れで、ギターをちょっと弾くのが当たり前の日々。長女で、親や周りの期待を察するタイプだったのと、負けず嫌いな性格が、いい形でミックスされて頑張れました。『やめる』という選択肢があることに気付いたのが二十歳ぐらいのときだったんです(笑い)」
実際は、音楽での挫折の経験はなく、やめたいと思ったこともなかった村治さんを、体の不調が襲い、休むことを余儀なくされる。
「楽しい心を優先して忙しくしていたら、体が『休んで』とブレーキをかけてきました」と振り返る。
「20代後半の不調は、高校のときにお世話になった校長先生が『神様は乗り越えられない試練は与えない。ということは乗り越えられる』と教えてくださり、すぐに前向きになれました。デビュー20周年目前の30代半ばで大病を経験したときも、やめることは考えませんでしたが、人生には1ミリも予測していない状況になることがあるんだな、と感じました」
「ギタリストの自分」を休み、とにかく健康体に戻ることだけを意識していた中で、気付いたこともあった。
「人前でギターを弾くということはものすごくエネルギーがいることなんだな、と。ステージは相当なパワーを蓄えないと出られない場所だし、半端な状態で立たないほうがいいと思いました」
休んだ経験はコロナ禍でも生かされ、「予期せぬことが起きても、いつかは過ぎ去っていくはずだから、思い悩むことなく、今できることをしよう」と思ったという。
◇40代、基礎練習の重要性を再確認
45歳、誰もが体力の衰えなどを感じる年齢になり、楽器との向き合い方も変化してきた。
「ギターは実は筋肉をたくさん使って弾いているので、筋力をどう保つかなど、体のケアには心掛けています。若い頃は基礎練習をしなくてもなんとかなっていましたが、今は子供時代に戻った感じで、基礎練習の時間を大切にするようにもなりました」
「休みを余儀なくされるのではなく、元気な状態で休みたい」と願う村治さんにとって、癒やしの時間は大好きな旅をすること。先日、3年ぶりに海外旅行に出掛けた。
「たまたまコロナ禍に入る直前に長い旅を3回していたので、その思い出で生きてこられました。今年の夏は忙しかったので、秋休みで台湾に初めて行きました。歴史を学んで、今、世界で起きていることに置き換えて考えてみたり、ホテルの部屋は別々で1人の時間も楽しんだり、女友達との大人の旅です」
◇「目に見えないところ」が音楽の魅力
10月にリリースしたベストアルバムは、ファンの投票によって収録曲が決まり、14位までがランキング順に収録されている。さらに、弟でギタリストの村治奏一さんとのデュオも2曲収録した。
「何度も演奏しているし、お客様の反応もよく愛されている感覚があったので、1位は『カヴァティーナ』(スタンリー・マイヤーズ作曲)なんじゃないかな、とは思っていました。いろいろなアルバムから収録されたので、10~40代の録音がバランス良く入りました。それだけで長く聴いてくださる方がいるというのも実感できました」
村治さんにとって、40年以上の付き合いになるギターは「一生のパートナー」。「弾かなくても文句を言わない“良い子”ですし、ちょっと離れていても弾けば応えてくれる、とても信頼できる良き理解者です」
「おばあちゃんになってもギターを弾き続けていたい」といい、「老後は、弟の子供に助けてもらおうと思って、今めいっぱい可愛がっています」とちゃめっけたっぷりに話した。
最後に、音楽の魅力を尋ねると、「目に見えないところ」という答えが返ってきた。「目に見えないのに、聴くと人の気持ちが目に見えて変わったりする。不思議で楽しいものです」と実感を込めて語った。
<プロフィル>
むらじ・かおり 1978年生まれ、東京都出身。幼少期から数々のコンクールで優勝を果たし、1993年、CDデビュー。高校卒業後、仏パリに留学。2003年、英の名門レーベル「DECCA」と日本人初の長期専属契約を結ぶ。2018年にリリースしたアルバム「シネマ」が第33回日本ゴールドディスク大賞インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。出光音楽賞、村松賞、ホテルオークラ音楽賞、ベストドレッサー賞などを受賞。テレビ番組やラジオ番組ナビゲーター、CM出演も多数。