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話題作に次々と出演している人気子役の芦田愛菜ちゃんの初主演映画「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」(行定勲監督)が21日に全国で公開された。西加奈子さんの小説が原作で、愛菜ちゃんの魅力と演技達者なところが存分に発揮されており、笑えてホロッとさせられる、すてきな作品に仕上がっている。
“こっこ”こと渦原琴子(愛菜ちゃん)は小学校3年生。両親(八嶋智人さん、羽野晶紀さん)と三つ子の姉(青山美郷さん)、祖父母(平幹二朗さん、いしだあゆみさん)と団地で暮らしている。家族みんなから愛されているこっこだが、孤独に憧れているためそんな環境が嫌でたまらない。そんなこっこがひと夏の体験を通して、ちょっぴり大人になっていく姿を描く。
子供は正直で純粋で可愛い。子供はまぶしい……。こっことその仲間たちを見ていると、心の底からそう思う。こっこは興味を持った言葉に出くわすと、ジャポニカ学習帳にそれを書き込む。クラスメートが眼帯姿で登校したときには、「ものもらい」や「えんきんかん」というボキャブラリーがストックされた。こっこの頭の回りでそれらの文字がプカプカと浮かび、鉛筆でぐさっと刺してくるくるっと丸め、ノートに記す。そういった演出も楽しくてにっこりさせられる。愛菜ちゃんをはじめとする子供たちが、みんなキラキラしている。とりわけ、こっこの親友ぽっさんを演じる伊藤秀優くんがいい味を出している。一方の大人たちも、八嶋さん、羽野さん、いしださん、そして、こっこにいつもとても大切なことを教えてくれる祖父役の平さんも、愛情いっぱいの家族を好演。さらに担任役の関ジャニ∞の丸山隆平さんには、こんな先生いてほしいなと思わされ、こっこの三つ子の姉をひとりでこなす青山美郷さんの怪演にも驚かされた。
大人には些細(ささい)なことでも子供には大問題。どうして眼帯のマネはよくて、不整脈のマネはだめなの?と真剣に考えるこっこたちが愛らしい。相手の心を“イマジン”することを学んだり、大ピンチに見舞われ、怖い思いをしたり、終戦記念の番組を食い入るように見つめるおばあちゃんを見て、“死”というものをちょっとだけ意識したり……そんなこっこを見ながら、ひととき子供時代の“素直な自分”に戻ることができた。21日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。