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和月伸宏さんの人気マンガを実写化した映画「るろうに剣心」(12年)の続編「るろうに剣心 京都大火編」(大友啓史監督)が1日に公開された。今作は、原作でも人気の「京都編」をベースに前後編の2部作で製作された前編にあたり、主人公・緋村剣心の後継者として“影の人斬り役”を引き継いだ志々雄真実(ししお・まこと)らとの戦いを描いている。剣心役の佐藤健さんら前作のキャストに加え、今作から新たなキャラクターも多数登場している。そのうちの一人で、剣心を倒して最強の称号を仲間にささげるという執念に取りつかれた御庭番衆最後の御頭・四乃森蒼紫役を演じている伊勢谷友介さんに、役柄やアクションについて話を聞いた。
◇殺陣の練習に多くの時間を割く
原作でも人気の高い蒼紫役を演じた伊勢谷さんは「何よりもアクションが大変すぎたので、(撮影について)あまり覚えていないというのが正直なところ」と出演した感想を冗談交じりに語る。蒼紫の印象を「死んでしまった仲間の気持ちや(仲間に対する)責任感を背負って一人で暴走しているという状態」と評し、「そこで僕はシンプルな状態で(蒼紫を)やらせていただいた。だからやらなきゃいけなかったのは、とにかく殺陣の練習という感じでした」と振り返る。
伊勢谷さん自身もアクションが大変だったというように、蒼紫は御庭番式小太刀二刀流の使い手だ。「二刀だと片方で討っている間、もう一方は別の軌道を動いていたりする。動きが独特なので、(刀を)2本(同時に扱う)というのは結構大変でした」と二刀流の難しさを実感したという。また役作りについて、「(大事なのは)ルックスの印象だと思う」と語り、「衣装部さんとメーク部さんたちが作ってくれて、あとは完全に丸投げ(笑い)。こだわりがないわけではないですが、気持ちとしてはお任せするというのが役者の役目だと思っているので、基本的にはプロにお任せしました」とスタッフに全幅の信頼を寄せる。
衣装のあまりの完成度だったからか、伊勢谷さんは「衣装がアクションがしづらい厚めのスウェードの服だったので、マントを着たまま後ろ回し蹴りするシーンなどは意外と大変でした」といい、さらに激しいアクションシーンの連続のため、「撮影ではひざに水がたまりました」といって豪快に笑う。田中泯さん演じる翁役との決闘シーンでは「翁と戦った時に泯さんがひざに水がたまったとおっしゃっていて大変だなと思った」と感じていたが、「剣心と戦ったら今度は自分がそうなってしまいました」と撮影エピソードを打ち明ける。
◇翁と蒼紫の決闘に全力
ビジュアル面で完成度に自信を見せる伊勢谷さんだが、蒼紫を語る上で欠かせないのが奥義「回転剣舞六連」の存在だ。再現するのには苦労したそうだが、「回転剣舞を1日で覚えたのですが、奥義って1日で覚えるのかい……と」と自分でツッコんで笑い、「冗談めかしてそう言っていたのですが、やっている本人は大変で、(小太刀を)くるくると回しているので体が覚えてスムーズに動くのが意外と難しい」と語る。そして、「必殺技は気合を入れて出すものではないと思いますが、芝居的には気合を入れて繰り出しているようにしないといけなかったのが難しかった」と感情とアクションのバランスにこだわりを見せる。
「京都大火編」では翁との殺陣が蒼紫の最大の見せ場となっている。翁役の田中さんについて、「泯さんは『もっとやりたい』という思いが強い方。これ以上やっても実際にはもうあまり変わらないだろうという状況でもあきらめない」と演技に取り組む姿勢に感銘したという伊勢谷さん。「倒れるシーンも倒れてもまた立ち上がるという独特なものだったりとか、70歳近くでいらっしゃるのに思い切りやる力強さはすごかった」と驚嘆する。「殺陣のシーンでも、どこかドライになって割り切るのではなくて、自分もそういうふうにやれたらいいなと(泯さんを見ていて)思いました」と敬意を表す。さらに「そもそも(泯さんは)すごくカッコいい。背も高く背筋もシャキッとしていて、筋骨隆々で重力にも負けていなくて驚き。出すエネルギーの強さに圧倒されました」と手放しで褒める。
◇自身が演じた蒼紫を受け入れてほしい
剣心や藤原竜也さん演じる志々雄真実など、蒼紫以外にもさまざまな背景を持ったキャラクターが登場する。登場人物たちについて「(今とは)時代が違うので……」と慎重に言葉を選びながら、「時代が変わった時、歴史上に残らないネガティビティーを剣心が背負っていく。(そういった生き方を)ある種、尊敬しないわけではなく、時代に残された人たちと“不殺(ころさず)”で向き合っていき、自分を賭していくというのは、とても必要な役目なんだなと思います」と剣心の生き方に理解を示す。
撮影を振り返って、「戦っているシーンが多くて、芝居をいまいちした覚えがないんですよね(笑い)」と笑みを浮かべる伊勢谷さんだが、自身が蒼紫を演じることに「僕がやることに対して原作ファンの人は厳しいですから、アレンジされた部分もありますので余計に皆さんに満足いただけるものになっているかという不安はある」と神妙な面持ちで語る。そして、「原作よりも修羅や狂気的な部分というのが表情を通して出ている部分はある」と自身が演じた蒼紫像を語り、「大友監督の演出の中では原作の蒼紫は結構静かめに描かれているところが、もうちょっと狂気に出ているところがある。原作とは違う部分だと思うので、受け入れてもらえるとうれしい」と映画を見る人に向けてメッセージを送った。前編「京都大火編」は1日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開中。後編「伝説の最期編」は9月13日公開予定。
<プロフィル>
1976年5月29日生まれ、東京都出身。99年公開の「ワンダフルライフ」でデビュー。その後、「嫌われ松子の一生」(2006年)や「十三人の刺客」(10年)などの話題作に出演し、「あしたのジョー」(11年)の力石徹役でブルーリボン賞助演男優賞をはじめ数々の賞に輝く。そのほかにNHK大河ドラマ「龍馬伝」(10年)、映画「カイジ2−人生奪回ゲーム−」(11年)、映画「清須会議」(13年)といった作品で幅広い役柄を演じ、個性派俳優としての地位を築く。監督業にも進出し、これまで「カクト」(03年)と「セイジ−陸の魚−」(12年)を手がける。出演作として「ザ・テノール 真実の物語」(14年)、「新宿スワン」(15年)などの公開が控えている。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)