昨年10月、「ベルサイユのばら-フェルゼン編-」の千秋楽をもって、2007年に入団した宝塚歌劇団を退団した元雪組トップスター・彩風咲奈(あやかぜ・さきな)さん。退団後は「少しだけダラダラするようになりました(笑)」とちゃめっ気たっぷりに話す彩風さんに、退団後の生活や、公開中の劇場アニメ「ベルサイユのばら」(吉村愛監督)について話を聞いた。
◇日々の稽古がなくなり“自分の時間”も楽しめるように
退団を実感するときを聞くと「それがまだ退団したのかどうか、分からないような状態が続いておりまして(笑)」と話した彩風さん。日々の稽古(けいこ)がなくなったことは「大きい」としつつ、「体を動かすことは好きなので。週に1回は踊りに行ったり。やっていることはあまり変わらないかもしれません」と言う。
一方で、「日が昇って日が沈むのを感じるようになりました」と変化もあった。
「これまでは朝、楽屋に入ったら、夜の終演までずっと楽屋にいるという日々。いつ日が沈んだのか分からなかった」と振り返り、「今は冬から春にかけての時期。だんだん日が長くなってきたなとか、日が昇るのが早くなってきたなとか。そういうことを感じるようになりました」と話した。
プライベートでは“自分の時間”も楽しめるように。出汁(だし)から料理を作ることにチャレンジしたり、毎日アプリを使った英語学習をしたりしている。
「予定を詰め込んだりとか、早起きしたりとか、逆に夜更かししたりとか、そういうことができるようになりました。やはり次の日の舞台のこととか、コンディションのことばかり考えていたので、在団中は絶対にできなかった。でもそれが今は、やりたいことがあるなら、別に気にしなくていいやと思えるようになって。それがちょっと許せるようになりました」
◇愛犬の散歩、手作り「プロテイン青汁ドリンク」が朝のルーティン
在団中から欠かさず行っているのは愛犬の散歩。公演の前、午前6時台に散歩に行くこともあったという。散歩の前に「プロテイン青汁ドリンク」を飲み、散歩の後にゆっくり朝食をとるのが毎朝のルーティンだ。
プロテイン青汁ドリンクは手作りする。「青汁の邪魔をしないように抹茶味ベースのプロテインにして、オーツミルクで必ず割って。お湯も足してホットにして。そこにコラーゲンパウダーとかを一緒に入れて、一気にシェイクして飲む」とレシピを明かした。
今後は「やはり時間ができたので海外旅行とか、いろんな世界のいろんなものを“浴びてみたい”」と話す。
「ブロードウェーに行ったことがなくて。ニューヨークに行ったことがないんですよ。だから一度はブロードウェーに(芝居を)見に行きたいなと思っています。観劇をひたすらして、そしてレッスンを受ける、みたいな。そういう日々を過ごしてみたいですね」
◇「ベルサイユのばら」に導かれた宝塚人生 劇場アニメならではの魅力とは
彩風さんにとって「ベルサイユのばら」との出会いは、「小学6年生の時に、中学校へ上がる前にテレビで観た宝塚歌劇」。それが「宝塚に入りたい」と思うきっかけになり、初めて生で見た宝塚の公演も「ベルサイユのばら」。入団後の新人公演も、卒業公演も「ベルサイユのばら」だった。
それだけに「私は『ベルサイユのばら』に導かれているんだと、ご縁を感じています」と大切にしている。
今回の劇場アニメを見た感想を聞くと「すごく懐かしさを感じると同時に、新鮮さもあり、衝撃を受けました。歌を使った演出もとても斬新でしたね。自分の好きなキャラクターたちそれぞれが、自分の心情を歌に乗せてお届けするという表現が、とてもすてきだなと思いました」と語る。
注目ポイントは「花、特にバラの使い方」。「オスカルやアントワネットの背景に、花がパーッと咲き誇り、美しくちりばめられているシーン。アントワネットとフェルゼンのシーンでも花が咲き誇っていました。華やかですし、これを舞台で表現するのは難しい。アニメーションならではの表現だなと思いました」と挙げた。
自身がフェルゼンを演じたことから「やはりどうしてもフェルゼン目線で見てしまうんですよね(笑)」とも語り、マリー・アントワネットとフェルゼンとの出会いの場となった仮面舞踏会の場面について「本当にすばらしかったですね。宮廷の場面での音楽と、パリの街での仮面舞踏会の音楽がまた違うところもすごく印象的。特に心を動かされました」と作品を振り返った。
*……劇場アニメ「ベルサイユのばら」は池田理代子さんが1972~73年に連載した同名マンガが原作。フランス革命の時代を舞台に、男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェと、オーストリアから嫁いできた王妃マリー・アントワネットらの愛と人生を美しく描いた。オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェの声を沢城みゆきさん、マリー・アントワネットを平野綾さん、アンドレ・グランディエを豊永利行さん、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンを加藤和樹さんが演じる。ナレーションを俳優の黒木瞳さんが務めた。
*…公式サイトの「News」ページで、彩風さんが「ベルサイユのばら」やキャラクターの魅力などについて語ったインタビューが掲載されている