NHKの情報番組「あさイチ」のチーフプロデューサーを務める木村友紀さん
NHKの朝の情報番組「あさイチ」(総合、月~金曜午前8時15分)でチーフ・プロデューサー(CP)を務める木村友紀さん。40代の木村さんは2人の子どもの母でもあり、仕事と子育てに奮闘中だ。「あさイチ」はどのように作られているのか。番組制作の舞台裏と木村さんの日常の様子、「あさイチ」への思いなどを聞いた。
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◇関わるスタッフは200人! 人数は多いが風通しの良い現場
お笑いコンビ「博多華丸・大吉」と鈴木奈穂子アナウンサーがキャスターを務めるNHKの朝の情報番組「あさイチ」。平日の朝、すぐに役立つ生活情報や、身近な社会問題、エンターテインメントまで旬の話題を取り上げ、「ツイQ楽ワザ」「プレミアムトーク」など人気コーナーも数多く生まれている。木村さんは台所から人生を描く好評企画「わたしの台所物語」などを担当している。
「あさイチ」が始まったのが2010年。木村さんは、初期の2012年から断続的に同番組に関わっている。平日、毎日生放送する番組のため、関わるスタッフの数は自然と大人数になる。
「演出陣(ディレクター、デスク、プロデューサーら)だけでトータルで100人ぐらいはいるんじゃないかと。加えて技術スタッフや、音効スタッフなどいろいろとお世話になっている方がいて、全体で200人ぐらいにはなりますね」
その中で、木村さんが務めているCPは、ディレクターと一緒に映像を作り上げ、最終的に責任を持つ仕事だという。
「ディレクターが温めてきた特集テーマを一緒に検討して提案を採択し、その後、取材の結果などを聞きながら打ち合わせをして番組の構成を一緒に立てていきます。撮影後、編集に入ったら、ディレクターと一緒に映像を見て、CPはディレクターより、もう少し引いた目で確認。こういうふうにしようかと進めていって、放送までに至ります」
1回の放送に関わる演出スタッフだけでも10人近くになるという大所帯だが、スタッフ間の風通しは良いようだ。
「スタッフ間の会話も多いですし、お互いの担当テーマについて、自分が経験したことや感じてきたことを元に意見を交わすこともよくあります。ただ一番はなによりも視聴者の方のアンケートと、放送中に送っていただいているメールやファクスが本当に番組の力になっています。視聴者の方の身の回りで起きていることを一番大事にして、役に立つ情報や共感する時間をお送りしたいという、(番組の)“まなざし”みたいなものは全員が首尾一貫してもっていると思います」
「40代以上の女性」をメインターゲットに想定しているが、「限定しているわけではない」という。一番に考えているのは視聴者に「番組を見ている私のための番組」だと思ってもらえることだと木村さんは力強く語る。
◇子育ては「後悔しかない」?
そもそも木村さんが放送業界に入ったのはひょんなことからだった。
「調査のアルバイトをやったことがあって、その時にいろんな感情を寄せてくださる方がいて。でもそれを統計データにすると、数字がカウントされるだけなんですね。文章で寄せてくださったことをちゃんと形にして、誰かに伝えるという仕事ができたらいいなあって思っていました」といい、「人前で話すことよりも、人の話を聞くことが楽しいと感じるタイプ。日の当たる場所が苦手で、調べ物をするのも割と好きだったので、自分で調べて文章を書くみたいなことを仕事にしたいなと、うっすらと思っていたんです」とメディア業界を目指したという。
「放送業界は正直言うと、すごくキラキラしていて私の場所じゃないなと思っていたんですけれど、就職活動の時にふとスタジオでカメラを回している人たちを見て、すごいなと思っちゃったんですね(笑)。NHKは自分で取材して自分で台本を書く場面が多いので、そこは自分が挑戦したいことと同じと思って入ったのですが、今も私は向いてるとは思ってないです」と苦笑を交えて振り返る。
そんな木村さんも今やCPとなり、また2人の子どもの母として日々奮闘している。
「朝は7時ぐらいに起きて、子どもに朝ご飯を食べさせて、洗濯ものを干して家を出る、という感じですね。帰宅時間は本当にバラバラで。共働きなので、夫が早く帰宅できる時は私は残業して、逆に私の方が早く帰れるようにコントロールできる時は、とにかく早く帰って、1人でできる作業は自宅でやるようにしています」
子育ては「うまくいかないみたいなことばっかりで後悔しかないですね」と悩みもあるようだ。
「多分、働いていてもいなくても、悩んでたと思うんですけど、仕事から帰ってイライラしてると、『ちょっと後にして』みたいなことを言ってしまうし、家族って本当に難しいなと思っていて。家族のことは好きだし、大切にしたいんだけど、やっぱり(関係が)近いので、その分、お互いに遠慮のない言葉を言ってしまうことがあって。態度が悪かったなと思ったら、子どもには正直に謝るようにしています。『イライラしてた、ごめんね』って」
そんな日常の中で、一番リラックスする時間は?
「子どもが完全に寝たなと思った後に、ぼーっとスマホを見ている時間です。何も考えずに、可愛い動物やおいしそうな料理の動画などを見ています(笑)。あと、ベランダでレモンやゆず、ブルーベリー、木イチゴを育てています。今の季節はアゲハチョウの幼虫との戦いですけど(笑)」
◇毎日たくさん届くメールやファクスが励みに 視聴者から寄せられるアンケートが取材の発端にも
木村さんが「あさイチ」に関わって「やりがいを感じること」を尋ねた。
「取り上げるテーマが多様で幅が広く、また放送時間も比較的長いだけに取材範囲も広いので、それを一人でやっていくディレクターは正直大変だと思うんですけど、その分、一つのテーマを深く掘り下げることができるのが、この番組のいいところなんじゃないかなと思っています」とやりがいの一つに挙げる。
さらに、「メールやファクスが毎日たくさん届くことが私たちの励みになっています。見てくださる方が今、こういうふうに感じたんだとか、ここが分からなかったんだとか、必ず全部、スタッフみんなで読んでいるので、放送中に瞬時に生かすこともできますし。私はメールやファクス読んで、これは次回以降も気を付けた方がいいポイントだなと思ったことなどは、その日のうちにメモしてときどき自分の仕事を振り返るようにしています。視聴者からの反響がリアルタイムでたくさん届くのが、この番組の大きなやりがいの一つになっています」と力を込める。
特に「番組の方向性を決める大きな柱はアンケート」だといい、「特集のテーマだとしても、自分が経験してないことを100%理解することは難しい。専門家の話を聞くことも大事なんですけれど、それだけじゃ分からない、経験した人の感情に少しでも近づこうとすると、アンケートが最初にそれを教えてくれるんですね。アンケートの中身を読んで、皆さんがどう感じているのか、テーマについての方向が分かるし、それが本当に番組に生きています」と実感を込めて語る。
「あさイチ」は「視聴者発信」の番組だといい、「番組に伝えたいことや これのテーマをやってほしいということがあったら、ぜひ番組に寄せてください」と呼びかけた。
<プロフィル>
きむら・ゆき NHKコンテンツ制作局第2制作センターのチーフ・プロデューサー。東京都県出身。2007年NHK入局。ディレクターとして大分放送局に赴任。その後、2012年からはNHK生活食料番組部で「あさイチ」を中心に情報番組を担当。そのほか名古屋放送局では東海・北陸地方にフォーカスしたドキュメンタリーや4K自然番組「中部ネイチャーシリーズ」などを担当。私生活では2児の母として仕事と育児の両立に日々、奮闘中。担当した番組「サンクスonデリバリー」が7月16日午後7時56分から総合テレビで放送。
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