初めて魚の3枚おろしに挑戦した三浦理恵子さん(左)と横でアドバイスを送る藤田貴子先生 (C)PRODUCTION OGI
今回教えていただくのは「アジのたたき」です。人生初の魚の3枚おろしは緊張の連続でした。
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自分で一から魚をおろし、たたきを作ったことで、改めて食材に対する感謝と愛情が生まれ、出来上がったときはちょっと感動しました。
藤田先生がお魚を買うのは築地市場だそうですが、普段、スーパーや魚屋さんで役立つ新鮮な魚の見分け方も教えていただきました。
◇ヒカリモノは魚の身を持たない
三浦さん:このアジはすごく張りがありますね。
藤田さん:新鮮なアジの見立て方は、目が新鮮、えらが新鮮、おなかが張ってること。では、アジのたたきの薬味を切っていきましょう。
<アジのたたき>
材料:アジ(刺し身用)、ショウガ1片、ミョウガ、アサツキ、大葉(敷き妻)、穂じそ
藤田さん:ミョウガは厚く切るとガリガリして苦く感じるので、極薄に切って30秒くらい水にさらしてザルにあげます。ショウガは皮が香りが強いので、よく洗ったら全部の皮をむかずに気になるところだけ落として、細かいところは包丁の背でこそげおとすと、いいところまで落ちないですみます。これをそのまますりおろします。
三浦さん:なるほどー。こんなにキレイで立派なショウガは初めて見ました。味も香りもいいんだろうなあ。
藤田さん:では続いてアジにいきます。お魚をおろすのは初めてですか?
三浦さん:まったく初めてです。
藤田さん:ヒカリモノは身を持たないでくださいね。
三浦さん:なぜ身を持っちゃいけないんですか?
藤田さん:今日はたたきでお刺し身でいただきますよね。手で触るとどんどん鮮度が落ちるんです。体温でもそうだし、手で押しつぶされることによって身が割れていくんです。だから極力触らない。
ではまずは頭の落とし方ですが、胸ビレと腹ビレを頭の方につけるようにしながら、斜めに包丁を入れるのをたすき包丁といいます。頭が落ちたら、はらわたを出します。尾ビレの手前に肛門があるので、そこから開いて、包丁の先でクイッとかき出していきます。その後で水洗いするんですが、背骨の中心のところに血合いがあるのが見えますか? それを洗うんですが、その上に薄膜があるのを軽く切ってから水洗いに入ります。では、やってみてください。
◇包丁の使い方は角度が大切
三浦さん:緊張しますね……。
藤田さん:出刃包丁の持ち方の基本は、握るところと包丁の角に中指をかけて、人さし指を包丁の真上にそえて、刃先からひじまで一本の棒が入っているような感じで手首をかためて、包丁を動かすときはひじから動かす。その要領でやってみてください。
三浦さん:うっ……、かなり力がいりますね。
藤田さん:えらの下に少し硬いところがあるんですよ。片面を斜めに切ったら、裏返してまた斜めに切って、さっき包丁を入れたところとぶつけて背骨を切ります。あとは、はらわたを出して水洗いしましょう。はらわたは、固まって出てくるのが新鮮な証拠なんですよ。じゃぶじゃぶ洗うと水っぽくなってしまうから、親指の手の先で背骨の上を1、2、3となでるくらい。ごしごし洗うとうまみも流れるので、まだ残ってるなと思ったら、あとで手で引っ張って、できるだけ水につけないことが大事なんです。あとは、魚の周りにはビブリオ菌という菌が付いているので、周りをざっと洗って、まな板と包丁も洗いましょう。初の魚おろしの感想はいかがですか?
三浦さん:最初の一刀を入れる瞬間の緊張感がすごいです。
藤田さん:では魚を3枚におろしていきます。まず、まな板とお魚をふきんでよく拭いて、水っぽくならないようにしておきます。今日は大名おろしという、一気に包丁が入るおろしかたをやりましょう。魚の断面を見ると、どこに骨があるか見えてますよね。背びれは中骨についているので、上の身のところだけを一気に包丁をあてておろしていってしまいます。
三浦さん:……(真剣に包丁を入れる)。
藤田さん:包丁の刃先にはしのぎという角度があるんですが、この角度が中骨にぴたっと当たっていることが肝心なので、おろすときはしのぎに意識を集中して、そこで背骨をなでていく感じです。包丁は進行方向に対して90度だと進まないので、45度くらいにして、引くときだけ進める。一番やっちゃいけないのは、ゴシゴシ切ることですね。あとは裏返して同じように。これで、3枚におりました。大名おろしは、名前のように豪快におろすので骨に身が残ってしまうのですが、それもスプーンでかき出してください。たたきの場合は最後細かくしてあえるので、これも加えられます。
三浦さん:では、やってみます。よしっ!……呼吸を忘れてました。身が骨にいっぱいくっついちゃいました。
藤田さん:大丈夫ですよ。最初でそれなら十分です。
◇下ごしらえは繊細に、大胆に!
藤田さん:ここまでお魚をさばくと、はらわたの洗いが十分じゃなかったのが出てきますよね。でも、じゃぶじゃぶ水洗いするより、この段階で取った方が水っぽくならないですむのであとで取っても大丈夫です。私は残った中骨は骨せんべいにしたりするんですよ。骨を軽く塩水につけて、そのあと乾燥させて、油であげて。
三浦さん:むだがない。お話を聞いただけでおいしそう!
藤田さん:では次に腹骨と中骨を抜きましょう。腹骨は腹腔膜ごと取ります。包丁を上に反らして、腹骨に沿って包丁の裏側を入れて、腹骨と身の方についている骨とのつなぎ目を切ってから、腹骨をすきとります。これも引くときだけ包丁を進めます。この薄皮が腹腔膜といって、生食でいただくときは残してはいけないんです。
なぜならはらわたを抱いていたので、食中毒の原因になりかねないんです。焼くときはそのまま残していても大丈夫ですよ。では次は頭に向かってピンセットで中骨を抜きます。指先で触ると骨に当たるので分かりますよ。
三浦さん:先生、やってみましたが、このコたちは全部骨が取れてますでしょうか?
藤田さん:このへん全然取れてないですね(笑い)。指の先で触ると分かりますよ。
三浦さん:ホントですね。
藤田さん:では次は皮を引きます。一般的には頭の背から手で引くんですが、初心者の方はいろんなところを触ってしまって鮮度が落ちるので、極力触らない方法を考えました。まず皮を一枚持っていただいて、包丁の背を垂直に立てて、ぐっと引いてください。これでよくケガをなさる方がいますが、注意点は、まな板の真ん中でなさらないことと、左手はまな板の外においておくこと、それから間違えても包丁を手の方に倒さないこと。皮を引くのは結構気持ちいいから、やってみましょう。
三浦さん:すっごく力まかせなんですけど……。コツをお願いします……。
藤田さん:鮮度がいい分だけしっかり皮がついてますね。では一度まな板を洗って、たたきにできるように棒状に切っていきましょう。切るときは魚の体なりに合わせて引き切りです。しっぽのすじっぽそうなところは捨ててもいいので、切ったらバットに戻して、薬味と合わせていきます。手でやると身がくずれてしまうので、今日はお好み焼きのコテを使いますね。薬味と合わせたら、食べる前に冷蔵庫で冷やします。あら? 切れていないところがありますよ(笑い)。
三浦さん:あら、すみません~(笑い)。あんなによく切れる包丁なのに、どういうことだろ(笑い)。
藤田さん:包丁の角度が上がりすぎているかもしれないですね。最後に上がっちゃうと切り逃しちゃうんですよ。あとは盛り付けたら、おろしショウガを添えて、穂じその花の咲いたのを添えます。ショウガの盛り方ですが、お刺し身のときにワサビが三角錐(すい)の形で出てくるのは、お坊さんが座禅を組むときの形に似せてるんですね。そうすると安定がよくなる。なのでショウガも、ワサビほど三角錐にしなくてもいいですが、頭の中ではそういうイメージで。
三浦さん:日本料理って本当に見た目も美しいですね。
藤田さん:では皆さんで試食しましょう。
◇食べる人を考えた盛り付け
藤田先生の教え方はとても丁寧で、初心者の私でも、楽しんで作ることができました。
先生の教室は清潔感と愛情にあふれて、とても落ち着く空間で、無心になって料理するのは幸せな時間でした。
作った料理をキレイな器に盛り、お膳に配していただいた味は、どれも驚きのおいしさで感動しました。出汁(だし)を取った昆布で作ったつくだ煮も本当においしかったです。
先生はひのきのまな板を使ってらっしゃいましたが、やはり木のまな板の方が包丁のなじみがいいそうで、私も使っていて実感しました。プラスチックのモノは包丁が跳ね返されて、切り残しが出やすいそうなんです。
酢のモノを盛り付けるとき、残ったタレを全部かけてしまったのですが、そうすると食べるときにしずくがたれる「涙箸(なみだばし)」になってしまうので、「タレは各器で大さじ1杯くらい、底にあるかな、と思えるくらいの量をかけると、涙箸にならない」と教えていただきました。ただ作って食べるだけでなく、少しの心配りで料理はもっとおいしくなるんですね。「梅ダレは、夏に食欲がなくなったときに食べると食欲が回復しますよ。タコ刺しにも合うし、余ったらご飯にかけてもおいしいです」とも教えてくださいました。
藤田先生には興味深い“和”についていろいろお話をうかがえたので、次回はそのお話もお届けします。
心も体もキレイになって、毎日キラキラしましょう! できることは今からスタートですよ!
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