マーベルの人気コミック「X-MEN」で絶大な人気を誇るキャラクター、ウルヴァリンが新たな試練に立ち向かうシリーズ最新作「ウルヴァリン:SAMURAI」(ジェームズ・マンゴールド監督)が全国で公開中だ。2009年の「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」に続く第2弾で、今回は日本が舞台となる。ヒュー・ジャックマンさん演じるウルヴァリン(ローガン)と深い関わりを持つ女性ユキオを演じた福島リラさんら日本人キャストも数多く出演している。福島さんに、作品の見どころや、自身が演じたユキオについて聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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「ウルヴァリン:SAMURAI」の舞台は日本。かつてローガンが助けた大物実業家・矢志田(ハル・ヤマノウチさん)に請われて日本を訪れた彼が何者かのわなにはまり、治癒能力を失い、初めて自らの“限りある命”を意識しながら過酷な戦いに身を投じていくというストーリー。福島さんが演じるのは、矢志田家に仕えるボディーガードのユキオ役。ユキオは原作コミックにも登場するキャラクターで「武術にたけ、手近なものを使いすぐに戦闘態勢に入れる棒術の達人」として描かれ、ローガンとは「スペシャルな感情」で結ばれることになる。ほかに日本人キャストとしては、矢志田の孫娘マリコ役でモデルのTAOさん、矢志田の息子シンゲン役で真田広之さんが出演している。
◇アクションに体当たりもしかられてばかり…
これまでは米ニューヨークを拠点にファッションモデルとして活動してきた福島さん。ユキオ役は1年半に及ぶオーディションで手中にしたという。そのオーディションについて福島さんは「自分がこれまでどうやって生きてきたかという“人間力”を試されているような感じだった」と表現する。というのも、「演技の経験がないぶん、取りつくろおうとしても絶対見破られてしまう」からだ。だからむしろ素で勝負し、毎回の審査を「楽しむことを心掛けた」と話す。
ユキオ役に決まったと知らせが入ったのは、8年間のニューヨーク暮らしにひと区切りをつけ日本に帰国していたとき。マネジャーからの連絡に、そこが東京・下北沢駅付近の路上であったにもかかわらず、喜びのあまり絶叫したそうだ。
福島さんを驚喜させたユキオの役柄は、日本人実業家・矢志田に仕えているボディーガードで、原作にもあるキャラクターだ。ユキオについて福島さんは「強くて、武術にたけ、手元にあるものならなんでも使ってすぐに戦闘態勢に入れる女性」と表現する。福島さん自身はユキオの「人間味にあふれ、吉田家の孫娘マリコといい関係を築いているところ」がとても気に入っている部分だという。マリコを演じているのは、やはりモデルで、ニューヨークを拠点に活動しているTAOさんだ。
矢志田はかつて、ジャックマンさんが演じるウルヴァリン(ローガン)に命を救われたことがあり、そのときの礼をいうためにローガンを日本に連れてくるようユキオに命じた。それによって、ユキオとローガンの間には、福島さんいわく、「友情とは違う、ソウルメートというか、同士というか、とにかくスペシャルな感情が生まれて特別な存在になっていく」わけだが、そこで終らないところがこの作品で、ローガンはマリコと恋に落ちてしまうのだ。これについて福島さんは、「どうしてマリコなの? 私の方があなたのことを知っているのに……。ローガンに対してそういう感情もちょっと出てきちゃうのかなあ、みたいな(笑い)。それは映画を見てからのお楽しみなんですけど」と、ユキオの複雑な心境を代弁する。
そうした感情面の芝居もさることながら、難しいアクションにも果敢に挑んだ。もともとエクササイズの一環として運動やマーシャルアーツ(武術)をしていたこともあり、「スタントをやることは全然苦ではなかった」と話す福島さん。それでも増上寺(東京都港区)での矢志田の葬儀の場面では、かなり苦労をしたという。男性の頭の上に駆け上がり身を翻すという大技を、必死に練習し準備したにもかかわらず、周囲の空気感の違いから、本番でできなくなってしまったのだ。「ジム(マンゴールド監督)にはめちゃくちゃしかられるし、300人ぐらいいたエキストラの方々には申し訳ないしで、本当にあのときは近くにあった池に飛び込みたくなりました……」と当時のつらさを告白する。
しかし、もともとポジティブシンキングな性格のため撮影中、マンゴールド監督からしかられるたびに、徐々に「しかられているうちが花」と考えるようになった福島さんは、そのときもマンゴールド監督に浴びせられたキツイ言葉を、「私にもう何テークかやらせるためのものなんだ」ととらえて気持ちを鼓舞し、ついにはそのアクションを成功させることができた。今は「監督には感謝の気持ちでいっぱいです」と笑顔を見せる福島さん。その一方で、「私にはあそこまで叫んでいたジムが、なぜTOAちゃんには天使のように接していた(笑い)」と苦言を呈するのも忘れていなかった。
◇ヒューの忠告で「食べることの大切さを実感」
福島さんは今回演技とアクションを初めて体験すると同時に、「ご飯を食べることの大切さ」を痛感したという。それは、撮影が始ってまだ間がなかったころ、「自分だけが、ほかの人より一足先に食事をとるのって気が引けますよね。もちろん、ランチタイムなどの食事の時間は決まっていて、そのとき食事はとるんですが、当時の私はアクションシーンの撮影でエネルギーを消耗して、おなかがすいて仕方がなかったんです。あるとき、エナジードリンクを飲みながら、パワーバー(エネルギー補給食)を食べていたら視線を感じたんです。そっちを見るとそこにはヒューがいて……」と苦笑交じりに振り返る福島さん。そのときのジャックマンさんの言葉を福島さんは忘れられないという。「『僕は、君のそんな姿は見たくないな。食事はきちんととったほうがいい』。そして周囲の人に向かって、『リラも食事をした方がいいから、遠慮しないで食べさせてあげて』と言ってくれたんです」としみじみと思い出していた。
福島さんによると、当時ジャックマンさんは「食べるのも仕事」と言いながら、「2時間おきに食事をとっていた」という。福島さんがジャックマンさんを見るたびに手に持っていたのは、「お皿かダンベル。ときどき脚本(笑い)」で、ときには「笑ってしまうくらいの量のチキンを食べていた」と話す。そんなジャックマンさんのアドバイスのお陰もあり(?)、福島さんも3時間おきに食事をとれるようになり、今は元の体形に戻ったが、当時は4キロほど体重が増えたそうだ。
ジャックマンさんにまつわるエピソードにはこんなこともあった。それは夜の撮影でのこと。待ち時間に福島さんが棒術の練習をしていたところ、どこからともなく歌声が聞こえてきた。声の主はジャックマンさん。どうやらバン(車)の中で歌っているらしい。歌っていたのは、「レ・ミゼラブル」の楽曲だった。「ローガンが『レ・ミゼ』を歌っているってすごくないですか(笑い)。あのときはいろんな人が、聴いた? 聴いた?と興奮気味に話していました」と笑顔で語る。
福島さんは、ジャックマンさんの今作での肉体美を「ヒューの体はビジュアルエフェクトではありません。本物です。すごいです!」と興奮気味に証言する。ジャックマンさんの息を吸ったときの波打つ筋肉を目にしたときには、そのすごさに 「萌(も)えた」そうだ。映画の序盤のローガンの入浴シーンでは、セットの間から「カットがかかっても、そのままずーっと見ていたらヒューの視線とぶつかって、まだそこにいるの?みたいな顔をされました」と笑う。福島さんは「世界中のヒュー・ジャックマンのファンの方すみません」と恐縮しつつ、その素晴らしい筋肉を誰よりも間近に見ることができた体験に感謝ししていた。
今作の見どころとして、各キャラクターに与えられたテーマカラーを生かした衣装やビジュアルやアクションと、美しい女性陣、そして「私のユキオ(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに語る福島さん。また、撮影をした広島県福山市の鞆の浦について「本当に美しい場所なので、外国の方も見たら行ってみたいな、行ったことがある人はまた行こうかなと思うようになってもらえたらいいですね」と語る。そんな見どころたっぷりの「ウルヴァリン:SAMURAI」は全国で公開中。
<プロフィル>
2003年、ニューヨークに移住し、ドルチェ&ガッバーナの04年初夏キャンペーンモデルとして契約。その後、国内外の新聞や雑誌、CMなど数々のレーベルや高級ブランドの広告キャンペーンで活躍。ミュージシャンのレニー・クラヴィッツさんやベン・テイラーさんのミュージックビデオなどにも出演した。11年帰国。映画「ウルヴァリン:SAMURAI」のユキオ役に抜てきされた。
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