あなたにおすすめ
松下洸平:「たまごっち」「デジモン」にハマった子供時代を語る 「放課後カルテ」で地上波ドラマ単独初主演
「ホームレス中学生」(2008年)や「武士道シックスティーン」(10年)など、10代を主人公にした作品を得意とする古厩智之監督の最新作「『また、必ず会おう』と誰もが言った。」が28日、公開された。喜多川泰氏の同名小説の映画化。ささいなうそをきっかけに、一人旅をすることになった高校生の出会いと成長を、温かく見守るような視点で描き出す。JUNONスーパーボーイ・コンテストのグランプリの佐野岳さんが映画初主演を飾った。
熊本の高校生・香月和也(佐野さん)は、同級生と軽い会話を楽しむうちに、とりあえずうそをつくようになった。東京に行ったことがないのに、友だちの前で「東京はくさい」と言ってしまう。証拠をつくるために、両親にうそをついて一人で東京へやって来たが、帰りの飛行機に乗り遅れてしまう。空港で寝ていると、売店員の昌美(杉田かおるさん)に声をかけられ、家に泊めてもらうことに。その出会いを皮切りに、予期せぬ旅が始まる。行く先々で大人たちと接するうちに、和也は自分と向き合い始める……という展開。
10代とその親に見てほしい映画だ。周囲に合わせるために小さなうそをつく高校生でなくとも日常でありそうな行為だ。それは、実は大人の本来の姿なのかもしれない。ここに出てくる大人たちは、情けなかったり、現実から逃げていたりする。しかし、愛情深く人間味があふれている。大人たちから、何かを感じ取って生き方を学んでいく和也の姿がさわやかだ。世代の差を表すやりとりが軽妙で、その空気が心地いい。和也役の若い佐野さんをベテラン俳優ががっちりと支え、和也の成長と映画初主演の佐野さんの姿がオーバーラップする。トラックの運転手役のイッセー尾形さんの演技は名人芸の域で期待通り。「HAWAII」と書かれた真っ赤なキャップもその役らしさがあって、笑えた。28日からシネマート新宿(東京都新宿区)、シネマート心斎橋(大阪市中央区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。