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永遠の青春小説として読み継がれているボリス・ビアンの「うたかたの日々」を、「エターナル・サンシャイン」(2004年)のミシェル・ゴンドリー監督が映画化した「ムード・インディゴ うたかたの日々」が公開中だ。原作を大事にしながら、アナログと現代的な感覚が融合した独自な世界を構築し、キュートで切ない一作となった。「タイピスト!」(12年)のロマン・デュリスさん、「アメリ」(01年)のオドレイ・トトゥさん、「最強のふたり」(11年)のオマール・シーさんが出演している。
パリ。裕福なコラン(デュリスさん)は人の言葉が分かるネズミと暮らし、専属のシェフ・ニコラ(シーさん)の料理を楽しみながら、自由気ままに過ごしていた。ある日、周囲に影響されて恋がしたくなったコランはパーティーに出向き、クロエ(トトゥさん)と出会って一目ぼれする。雲に乗って楽しくデートをし、やがて結婚した2人。だが、幸福な生活もつかの間、クロエが病気になってしまう。高額な治療費を払うために働き始めたコラン。だが、人生が狂い始めて……という展開。
原作を映像にするとこうなるのか、というような魔法の世界が目まぐるしく展開されていく。カクテルを作るピアノ。雲に乗ってデート。ゴンドリー監督の作品を見ていると、昔テレビで「できるかな」のノッポさんを見ていたころの童心に帰ったような気持ちになり、ワクワクするのだが、今作にもそんなワクワクがこれでもかと詰まっていた。コランとクロエのほかにシックとアリーズというカップルが登場し、破滅に向かう2組のカップルが描かれる。金銭的にも余裕があり、恋する喜びに満ちあふれている前半。恋人が病気になって暗転する後半。人生の変化を映像の色調を変えて表現し、強烈な印象を残している。コランのクロエへの献身、そして愛を受けるクロエの可愛らしさがせつない。ファンタジーとロマンがありながら、チクチクとした痛みがあるのは、原作のイノセンスと人生のリアルが表現されているからだろう。人生は残酷だが、美しいと感じた。5日から新宿バルト9(東京都新宿区)、シネマライズ(東京都渋谷区)ほかで公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。