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「亡国のイージス」の阪本順治監督と原作者の福井晴敏さんが再びタッグを組んだ経済サスペンス「人類資金」が19日公開された。出演者には佐藤浩市さんやSMAPの香取慎吾さん、森山未來さん、観月ありささんら、阪本監督作品に縁のある俳優陣が並ぶ。敗戦直後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって接収され、その後、日本の戦後復興や反共計画に極秘に運用されてきたとされる「M資金」。都市伝説ともいわれるこの資金をめぐるやりとりが、硬派の作家、福井さんのアイデアと、社会派ならではの阪本監督2人の脚色によって描かれていく。
M資金専門の詐欺師、真舟雄一(佐藤さん)は、“M”と名乗る謎の男(香取さん)から、「M資金を管理運営する日米の秘密機関からM資金を盗み出してほしい」という依頼を受ける。最初は取り合わなかった真舟だが、Mの壮大な計画を聞き、その話に乗ることにする……という展開。
佐藤さんのこれまでにないおちゃめな演技や、観月さんの長い足が映えるキック、森山さん、暗殺者役のユ・ジテさんのアクション、さらにビンセント・ギャロさんの怪演が見られる点で娯楽性は十分にある。舞台は日本、ロシア、カペラ共和国(架空の国。撮影はタイで行われた)、さらに米ニューヨーク、しかもニューヨークでは国連本部までがからむことでスケール感も壮大だ。ただ、今作ではM資金だけに焦点を絞るのではなく、それを足掛かりに「世界にはびこるマネー経済のあしきルール」についても触れている。経済に疎い人間にはクラッとくるほど手に余る話だ。経済事情に詳しい人なら深いところまでを見通せ、本当の面白さに迫れるのかもしれないが、そうでない私は正直なところ、Mの計画を見ながら、そんなに単純な話なのか?と疑問に思うのが精いっぱいだった。19日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌の制作会社、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。