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2009年にソマリア海域で起きた、海賊による米国のコンテナ船乗っ取り事件……。その人質となった船長が書いた回顧録を基に、「ボーン」シリーズのポール・グリーングラス監督が緊迫感あふれる救出作戦を映像化した「キャプテン・フィリップス」が公開中だ。トム・ハンクスさんが船長にふんし、船の乗組員を救うために毅然とした態度で海賊と交渉する真のリーダーを熱演している。海で撮られた迫力の映像に息をのむ。
マークス海運のリチャード・フィリップス(ハンクスさん)は、妻アンドレア(キャサリン・キーナーさん)に見送られて自宅を出発。オマーンからケニアへ援助物資を運搬する貨物船「マークス・アラバマ号」に船長として乗り込んだ。乗組員は20人。アラバマ号がケニアに向けて出港したころ、ソマリアではインド洋を行く外国船を襲うため2そうのボートに若者たちが分乗。アラバマ号はいつもと変わらぬ航行をしているつもりだったが、念のため緊急時の訓練を行った。しかし、訓練は本番に変わった。猛スピードで近づいてくるモーターボートに気が付いたフィリップスは……という展開。
船長が回顧録を書いているのだから、「助かる」という結果が分かっているのに、ハラハラしてしまった。ドキュメンタリー出身のグリーングラス監督と撮影監督のバリー・アクロイドさんの、リアリティーを追求した臨場感あふれる映像に、まるでその場に居合わせたかのような気分にさせられる。巨大な貨物船の中、人質となってからは狭い救命艇の中、船長と海賊の心理戦が延々と続く。米軍ネイビーシールズによる船長救出作戦が着々と準備が進み、「いつGOが出るの?」とやきもきする。究極のピンチに苦闘するハンクスさんの芸達者ぶりに、オーディションで選ばれた海賊役の4人が迫真の演技で加わった。モーターボートを荒々しく運転し、コンテナ船に近づきよじ登るなどアクションも多いが、海賊をするにいたる元漁師の切迫感、海賊行為を成功させるための焦燥感など心理面も見事に体現し、4人の無名俳優はハンクスさんと堂々と渡り合っていた。11月29日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。