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マンガ「釣りバカ日誌」の原作者・やまさき十三さんが初監督を務めた「あさひるばん」が公開中だ。今作は、中年になった元高校球児3人が、当時の野球部のマドンナの病気をきっかけに30年ぶりに故郷で再会し、騒動を繰り広げる人情コメディー。國村隼さん、板尾創路さん、山寺宏一さんが、それぞれ元高校球児の浅本、日留川、板東にふんし、マドンナの幸子役には斉藤慶子さん、その娘・有三子を桐谷美玲さんが演じている。映画「釣りバカ日誌」で主人公を演じた西田敏行さんが幸子の父親役を好演している。
高校時代野球部にいた浅本、日留川、板東の3人組は、その名字から「あさ・ひる・ばん」と呼ばれていた。甲子園出場を目指すも、あと一歩のところで惜敗。30年後、3人の憧れの存在だった野球部マネジャー・幸子の娘・有三子から「入院中の母に会いに来てほしい」という手紙が届く。知らせに驚いた3人は、久しぶりに故郷・宮崎で再会を果たすが……というストーリー。
果たせなかった夢を、失敗によって失ってしまった何かを取り戻すために奔走する姿は、単純に胸を打つ。それでいて悲壮感を抱かさせることなく、むしろ笑いを交えて明るく描いているのは、脚本と演出の勝利といえるだろう。俳優陣に目を向けてみても、主人公を演じた3人はもちろん、要所要所に配置された間寛平さんや上島竜平さんをはじめとした芸人たちがいかんなく魅力を発揮し、ドラマに適度な軽やかさを与えるなど、出演者の芸達者ぶりは見事。社会や世界に影響するような大事件は起きないが、当人たちにとっては何を置いてもという一大事を軸にしたストーリーは、「釣りバカ」ファンにはおなじみの、そうでない人にもどこか懐かしさを感じさせ、笑いながらもジーンとくる、心がほっこり温まるような安定の人情劇だ。29日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(遠藤政樹/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。