(C)ROBOT
多数の映像作品を製作するプロダクション「ROBOT」が手がけたオリジナル短編アニメーション「ゴールデンタイム」が11日に劇場公開された。今作は、高度経済成長期からバブル期に向かい、目まぐるしい発展を遂げていた1980年代の日本を舞台に、捨てられた60年代製の古いテレビがたどる数奇な運命を描いた悲喜劇。アニメーションスタジオ「CAGE」の稲葉卓也さんが、監督、脚本、キャラクターデザインなどのすべてを1人で担当した。
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東京都写真美術館(東京都目黒区)で開催される「手仕事のアニメーション」の一本として、日本屈指のVFX技術を誇る白組制作のコマ撮りアニメーション「タップ君」(アンマサコ監督)、09年に第81回米国アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した「つみきのいえ」(加藤久仁生監督)と同時上映される。
映画は、廃品置き場に捨てられた60年代製の家具調テレビが、捨てられた事を受け入れられず廃品置き場から脱出を試みる「ゴールデンタイム」、第二次世界大戦前後の欧州のある街で、靴職人のスミスの元にタップダンサーの靴が持ち込まれたことをきっかけに靴たちの秘めた物語が語り始められる「タップ君」、水かさが増すたびに家を高く積み上げながら水没した土地で暮らす老人が、ある日、大事な落とし物を探しに海に潜ることに……という「つみきのいえ」の3本立て。
「ゴールデンタイム」は手描きで、「タップ君」は人形によるコマ撮りと両作とも手作り感のある作風で、「手仕事のアニメーション」を実感できる。「ゴールデンタイム」はせりふがないにもかかわらず、擬人化されたテレビの表情が豊かで、ハートウオーミングな日常や苦悩などを描き出し独特な世界観へ誘う。物に魂がないことは分かってはいるが、本当にあったかもしれないと思わせる魅力がこの作品にはあり、ユーモアを含み、どこか懐かしく切ない物語だ。マットペインティングや3DCGといった最新のデジタル技術も組み込まれた「タップ君」や1人の男の人生の思い出を情緒深い映像で描き世界中で共感を呼んだ「つみきのいえ」と合わせ、どれも丁寧な仕事が光り、日本のアニメメーションのレベルの高さを再確認できる。東京都美術館ホールで期間限定で公開中。26日まで。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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