女優の鶴田真由さんがナビゲーターを務める特別番組「イーハトヴの渚から~宮沢賢治が追い求めたドリームランド」(IBC・TBS系)が18日午後2時から放送される。鶴田さんが岩手県出身の作家・宮沢賢治の足跡をたどりながら、賢治が求めた「イーハトーブ(=理想郷)」を、東日本大震災後の岩手に探すドキュメンタリー。そこで発見した新しい賢治像やイーハトーブについて話を聞いた。
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番組は、IBC岩手放送が開局60周年を記念して制作した特別番組。明治三陸大津波が起きた1896年に生まれ、昭和三陸大津波の1933年に亡くなった賢治に焦点をあて、鶴田さんは、賢治の故郷・花巻やよく訪れたという小岩井農場、大津波が襲った陸前高田など各地を旅し、そこに生きる人々と触れ合った。
◇人間・宮沢賢治を発見
これまで「どんぐりと山猫」を朗読するなど、賢治の作品に触れてきた鶴田さんは今回の旅で「『賢治ってこういう人だったんだ!』という発見がいくつもありました」と語る。「いつも速足で歩いていたり、ものすごくおしゃれだったり……。人間・宮沢賢治が見えてきた。想像していた人とは違って面白かった」と目を輝かせた。
「賢治の育った花巻に行って、田園風景を見て『なんて穏やかで優しい場所なんだろう』って思いました。この場所から宇宙を見ていたんだなとか、ここで取れた食べ物が作品に出ているんだなとか、背景を知ることで作品の世界がより深く分かりました」と、賢治が生きた土地や体験を知ることで作品に描かれた風景を感じることができたという。
また番組では、テレビで初めて賢治の母・イチさんの貴重な音声を流す。同局が61年に、賢治の二九回忌のラジオの特別番組のために録音した。鶴田さんは「私は方言がわからないのでリズムがあって音楽のように聞こえたし、強い声でした」と話した。
◇岩手の人が見た“イーハトーブ”
鶴田さんは今回の旅を「震災後に被災地と呼ばれるところに行くのは初めてでした。震災直後の様子を見ていないので、陸前高田に行った率直な感想は『大きな草原が広がっている』というものでしたが、土地の人たちに会ったことで、『まだ全然終わっていない』という震災の大きな爪あとを感じました」と振り返る。
印象に残っているのは、津波で流されてしまった神社の跡地にできた子供のための図書館「にじのライブラリー」の責任者・荒木奏子さんの言葉。「『賢治がいうイーハトーブっていうのが、どういうものなのか震災直後に垣間見た気がする』って。それは誰かが歩いていたら声をかけたり、車で通りかかればみんなを乗せて走ったり、物を分けあったり……。みんながお互いのことを思いあって、みんなで頑張ろうという世界。『雨ニモマケズ』で賢治が語っているようなことですよね」と語った。
そして「私にとっての理想郷も、みんながみんなを思いあって一つになっていく世界」と賢治に思いを寄せる。さらに「お互いに自分を殺して一緒になるのではなく、それぞれを受け入れながら一つになっていく世界。個性をお互いに認めて尊重しあえたら、すてきな世界ができるんじゃないかなって思います」と思い描いていた。
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