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注目映画紹介:「アバウト・タイム 愛おしい時間について」タイムトラベルをからませたロマン

 タイムトラベルができる青年が家族と過ごす日々を描いた英映画「アバウト・タイム 愛おしい時間について」(リチャード・カーティス監督)が、27日から公開される。英国南西部の海辺の美しい町を舞台に、平凡な青年が恋におち、愛を勝ち取り、人生の不運に見舞われたときの選択の仕方を見せていく。ラブストーリーでありながら、人生の深さをも語り尽くした「ラブ・アクチュアリー」のカーティス監督の最新作。

 ティム(ドーナル・グリーソンさん)は女の子に奥手で、少々さえない青年だが、父(ビル・ナイさん)、母(リンゼイ・ダンカンさん)、妹(リディア・ウィルソンさん)、おじさん(リチャード・コーデリーさん)と一緒に、浜辺に近い家で幸せに暮らしていた。年越しパーティーの翌日、父親からとんでもないことを聞かされる。それは、一族の男性陣は代々、一定のルールのもとで、自分の過去に戻ることができるということ。その能力を駆使して、恋人をゲットすることにいそしみ、やがてメアリー(レイチェル・マクアダムスさん)の愛を勝ち取るティム。だが、タイムトラベルによってアクシデントが生じ、メアリーとの出会いもなかったことになってしまう……という展開。

 ラブストーリーにタイムトラベルをからませてロマンたっぷりの作品。前半は、恋人ゲットに必死なティムと、輝くような笑顔のメアリーを見ているだけでほほえましく、気分がホカホカしてくる。見ている方もティムと一緒にやり直したい過去に戻る体験を共有するうちに、何通りもの選択肢の中から偶然選んだことによって人生が形作られていく不思議さに触れていく。うって変わって後半は、不幸がティムを襲う。恋人から夫婦となったティムとメアリー。子育ての日常がナチュラルにつづられて、安定した幸せの日々を感じる。幸せそうだからこそ、「時間は戻せない」という真実がグサリと突き刺さる。何気ない日常が、どんなにかけがえなく、きらめく時間なのか。海辺での一家だんらんのアフタヌーンティーが、どんなにすてきで輝いている時間なのか……。ティムと父の時間も使って二重に語りかけてきてホロリとさせられる。父親役は「ラブ・アクチュアリー」にも出演したナイさんが、家族思いで知性派の父親を好演していて印象に残った。TOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほかで27日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。映画「フランシス・ハ」(ユーロスペースほか全国で順次公開中)のラストには「ハッ!!」とした。

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