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美食の街・台湾の台南を舞台にした料理エンターテインメント映画「祝宴!シェフ」(チェン・ユーシュン監督)が11月1日から公開される。「熱帯魚」(1995年)や「ラブゴーゴー」(97年)などの作品で90年代の台湾映画界をけん引したチェン監督の16年ぶりの最新作。2014年ニューヨークアジア映画祭で観客賞を受賞したほか世界の映画祭で話題の作品だ。料理嫌いだった女の子が亡き父のあとを継いで、宴席料理大会に挑む!
シャオワン(キミ・シアさん)は、ファッションと化粧が大好きな女の子。台北でモデルとして活動するが、まったく売れていない。父親は屋外での宴会でおもてなしの伝統料理を作る総舗師(ツォンポーサイ)で、“神”と呼ばれた伝説の料理人だった。料理を嫌ったシャオワンは、家を出て暮らしていたが、父の死をきっかけに帰省することになった。母パフィー(リン・メイシウさん)が営む食堂を手伝い始めたが、料理はからきしダメ。そこへ、父の味を求めて老カップルが訪ねてくる。困ったシャオワンの前に現れたのは、どんな料理でも教えてくれる料理ドクターの男性で、帰省途中に偶然知り合ったイエ・ルーハイ(トニー・ヤンさん)だった……。
赤が際立つポップな色調とテンポのいい語り口で、2時間半近く勢いよく流れていく。一度は家に背を向けた料理オンチのシャオワンが、父の背中をどう追うことになるのか。追っかけファンの男子や借金取りまで、さまざまな人が彼女を支えてくれるのだが、演じるキミさんがとても可愛らしく、思わず支えたくなるのもうなずける。運命に導かれるように人との出会いを果たしたシャオワンは、やがて父の思いに気づき始める。料理の思い出は、誰の胸にもあるものだ。作る人と食べる人との温かい関係の上にこそ成立する。トマトの卵炒め、焼きビーフン、レンコンのはさみ揚げ……。出てくる料理が庶民的だからこそ、湯気や炎がなおさら温かく感じられ、共感を呼びやすい。物語は料理バトルへとなだれ込むが、台湾映画らしくぶっ飛んだ演出で緊張もどこへやら。母親のパフィーを演じる台湾の人気コメディエンヌのリンさんが印象的。愛嬌(あいきょう)のある表情で魅力を振りまいている。ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで11月1日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作に出てきた台湾の“おふくろの味”トマトの卵炒めが気になり、作ってみました。おいしかったです。