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第152回直木三十五賞(以下、直木賞)に決まった西加奈子(にし・かなこ)さんが15日、東京都内のホテルで行われた受賞会見に出席した。2度目の候補作となった「サラバ!」(小学館)で受賞を決めた西さんは、「シンプルにうれしいという言葉しか浮かばない」と喜びを語った。会見の主なやりとりは以下の通り。
−−まずは一言。
直後なので、とにかくシンプルにうれしいという言葉しか浮かばないですね。
−−デビューが持ち込みで、そして直木賞まで。今の気持ちをお願いします。
文学賞を取ってデビューしたのではなくて、編集の方に原稿を送りつけて読んでもらった。私はその方がいなければ作家としての自分はいなかった。とにかくその方に「西加奈子という作家を世に出してよかった」と思ってほしかった。その方がすごく喜んでくださったのでうれしかったです。デビューしたときは5冊書きたいと思っていたけど、それが何十冊も書けるとは思っていなかったのでびっくりしています。
−−林真理子さんが「外に向かって拡散するダイナミズムがある」とおっしゃっていて、それが西さんの海外生活に関係するのではないかと選評されているのですが、いかがですか?
自分のことって本当に分からない。自分以外の人生を歩めたなら、日本で生まれた私を比べられたと思うけれど、私は私としてしか生きてこなかったので、海外生まれが影響しているかどうかは分からない。でもそう言っていただけるのはすごくうれしい。
−−主人公には西さんの人生が反映されていると思うのですが、真実何%、虚構何%ですか。
虚構100%です。
−−デビュー時の自分にはどう報告したいですか?
何を言っても信じないと思います。でも、あなたはすごく恵まれているよ、と言いたい。安心して書きなさいと言いたいです。
−−つらいことはどう乗り越えてきましたか。
「サラバ!」という作品を信じて書けたり、信じるものに向かっていく力は、本にもらいました。作家になってから、たくさんの作家の方にお会いすることができて、一緒に飲んだり、一緒に飲んだ人がすごい作品を出していたりするとすごく勇気をもらえる。めちゃくちゃ感謝しています。ハッピーエンドを書けたのは、同時代にいる作家がいろいろな作品を書いているから。自分だけが作家だったら、悪について書かなきゃとか思ったと思う。同時代の作家がマイノリティーについても真実を書いてくれているから、私は自分が信じる真実を書いていくことができました。
−−土地の力について。西さんは(「サラバ!」に出てくる)イラク、テヘラン、大阪、カイロ、それぞれの土地からどのような影響を受けましたか。
それぞれですね。一言では言えないので、小説として「サラバ!」に書いたつもりです。
−−26歳で東京で仕事が見つかったとだまして東京に出てきたと聞いています。今、両親にはなんと報告したいですか?
父からは「勝手に生んだから好きに生きなさい」と、お母さんからは大事な言葉として「ありがとうはいい過ぎることはない」と言われたことがあります。両親は作家でいることにまだ驚いているけど、本当に喜んでくれて。両親の子として生まれてきてよかった、そこはありがとうと言いたい。
−−今後はどんな小説を書いていきたい?
すごくふわふわしていて。全力で自分が思うことを書きたいし、当たり前だと思っていることや当たり前だと思わされていることを問う作品を書きたい。小説はニュースにならない。大きなシャベルですくったときにこぼれ落ちるものを書くのが小説だと思う。誰かに寄り添うような小説が書きたいです。
−−プロレスが好きと聞いています。プロレスの魅力は?
私ごときが語れないというのがまず第一にあるんですが、もともとずっと好きで見ていました。プロレスの状況と作家になってから自分たちの状況を合わせることが多い。新日本プロレスが好きで、今とても盛り上がっています。それは素晴らしい選手が全力でプロレスを見せてきたから。文学界も、本が売れないと言われています。最近の作家なんて読めないと言われたこともあります。でもすごい作家がそろっていて、全力で小説を書いている。いつか「小説を信じてやってきてよかったです」と言いたい。プロレスからはすごく勇気をもらっています。
−−最後に一言。
小説が売れないという話をしましたが、とにかく1冊読んでほしいなと思います。面白い小説ってめちゃくちゃあって、私もすごく助けられました。とにかく皆さんに本屋に行ってほしいなと思います。