「ラスト5イヤーズ」のワンシーン (C)THE LAST FIVE YEARS THE MOTION PICTURE LLC
2度のトニー賞受賞を誇るソングライターのジェイソン・ロバート・ブラウンさんの同名ミュージカルが原作の映画「ラスト5イヤーズ」(リチャード・ラグラベネーズ監督)が25日に公開される。2001年に米「タイム」誌が選ぶ「ベストショー10」に選ばれ、オフブロードウェーでヒットを記録したミュージカルを基に、映画「P.S.アイラヴユー」(08年)のラグラべネーズ監督がメガホンをとって映画化。キャリアに悩む女優の卵と若くして成功した小説家というカップルが過ごした5年間を、女性側は別れから出会いへとさかのぼり、男性側は出会いから別れに向けてと、それぞれ逆行する時間軸で描いている。すれ違う思いが異なる時間軸で描かれることで、愛の喜びと切なさをより際立たせている。
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ブロードウェーの舞台に立つことを夢見る女優志望のキャシー(アナ・ケンドリックさん)と、小説家を目指しているジェイミー(ジェレミー・ジョーダンさん)は、ニューヨークで出会い恋に落ちる。やがて結婚した2人だが、小説家として順調に成功していくジェイミーに対し、女優として伸び悩むキャシー。こんなはずではなかったと互いに思うようになり、いつしか2人の思いがすれ違っていく……というストーリー。
ミュージカルが基になっているだけに、音楽面が充実している。登場人物の感情も音楽によって表現され、視覚と聴覚の両方から深く訴えかけてくる。今作では互いに夢に向かって歩き続ける1組の恋人同士が過ごした時間を、プロポーズ・結婚を起点に、男女の時間軸を逆にして描いている。この独特の時間軸を使ったことで一見複雑に感じそうだが、その実、スタイリッシュでテンポよい映像と交互に差し込まれる歌が2人の別れを描いているにもかかわらず、どこか心地よさを感じさせる。多くの人が経験しているであろう出会いと別れ、そして気持ちのすれ違いや価値観の相違など、映画を見ているのに次第に自分の過去に思いを巡らせてしまう、そのリアルすぎる描写にうならされる。メインを演じる2人の歌唱力が圧倒的で、ミュージカルの魅力を十二分に映画でも体現でき、愛の難しさと切なさを際立たせている。ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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