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女優の有村架純さんの主演映画「ビリギャル」(土井裕泰監督)が全国で公開中だ。90万部を突破した坪田信貴さんの書籍「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」を基に実写化。偏差値30の女子高生・さやかが、塾講師の坪田(伊藤淳史さん)から心理学を駆使した指導を受けてやる気に目覚め、慶応大学に現役合格するまでの1年半を描いている。ギャル姿で主人公・工藤さやかを演じている有村さんに、自身の金髪ギャル姿について、共演者とのエピソード、映画の見どころなどについて聞いた。
◇「最初は違和感があった」というギャル姿
映画公開前から金髪とミニスカというギャル姿が話題を呼んでいたが、自身のギャル姿を「最初はすごく違和感があって、『なんだこれ』と自分の中で笑いが起きました」と有村さんは笑顔で語る。撮影を重ねていくうちに「5日もすればすっかり見慣れてきた」といい、「初日に友達役みんなとカラオケとクラブに行くシーンの撮影があり、初日からはじけて撮影できたのも結構大きかったかなと思います」と振り返る。
初日の撮影では、「一つのことをみんなで楽しんでやろうというので一気に距離が縮まった」と語り、「私もみんなもクラブは行ったことがなく、どういうふうなのかは分からなかったけど、とにかく楽しんでやろうという気持ちがどのシーンでも表れているかなと思いました」とギャルたちの友情シーンの裏側を明かす。深夜の名古屋の街を激走するシーンでは、栄の繁華街を深夜2時から5時まで封鎖して撮影。「夜中の1時入りで3時からスタートだったりしたので、腹時計も含めて何時か分からないぐらいでした(笑い)」と有村さんはいい、「すごく寒かったんですが楽しかったですし、いい思い出です」と笑顔を見せる。
◇モデル本人との対面が演技に役立つ
有村さんが演じる工藤さやかは、偏差値30から慶応大学合格を目指すようになる女子高生。方言指導として撮影に参加した今作のモデル、さやかさん本人について、「過去にちょっとギャルっぽいところを持った方という印象があったので、実際もそんな過去を匂わせるような感じなのかなと思っていましたが、実際にお会いしたら全然そんなことはなかったんです」といい、「むしろ面影がないぐらい別人みたいに柔らかくて人当たりもすごくよく、本当にギャルだったんですか? というぐらい」と驚いたという。続けて、「もともとの性格や持っているものが、きっととても純粋な方で、その根本の部分が今、すごく輝いて魅力的に出ていると思いました」と印象を語る。
実際にさやかさんと対面し家族や周囲のことを尋ね、「さやかさんは父親が自分に目を向けてくれないことについて嫌だったのではなくて、ああちゃん(母)や弟に対しての態度が嫌いだった」ということが分かったと話す有村さん。「さやかさんは自分のために頑張るとかではなくて、いつでも人のことを考えて行動できる人で、家族思いだったり友達思いだったりするのはすごくすてきだなと感じました」と本人の人物像をとらえ、「いつでも自分のために頑張るというよりかは、人のために頑張るという気持ちで演じていました」と演技の参考にしたと話す。
◇ギャルらしさを動画から学ぶ
さやか役を演じるにあたり、「金髪ギャルのイメージは皆さんいろいろあると思いますが、そういった要素をどこで出していこうか、こうれすればギャルっぽいとかいろいろ考えたのですが、あまりピンとくるものがなかった」と有村さん。「自分でせりふを言いながら違和感がないように表現するにはどうしたらいいのだろうとすごく悩みました」と打ち明け、「『~じゃね』や『超~』というのも、全部が浮いている感じがした」という。
クランクイン前日まで悩んでいたという有村さんだが、「楽しいことを全力で楽しんでやっている」というさやかさん本人の姿勢に共感し、「ギャルだからではなく、根本の部分を忘れずに演じているうちに自然と表現方法もすっと入ってくるようになり、私らしいさやかさんを演じられればいいと思いました」と覚悟を決めたという。続けて、「自分にないものを無理に出そうとすると、自然なお芝居には見えなくて台無しになってしまうと思ったので、根本を見つけて私らしいものを発信していこうと思いました」と演技面のスタンスを説明する。
ギャルらしさを出すために「『学校へ行こう』という番組の動画を見ながら勉強しました」といい、「(ギャルたちは)友達みんなといるときは盛り上がりがすごくて、一人が言ったらみんな同じことを言って連鎖していく(笑い)。友達といるときはこうなんだとか勉強になりました」と笑顔で振り返る。
◇母親役・吉田羊がさやかを引き出す
さやかを指導する塾講師・坪田義孝役の伊藤さんほか出演者には多彩な顔ぶれがそろった。伊藤さんを「溶け込み方がすごく早くて、さっきまでしゃべっていたのに、(本番になると)せりふを一言も間違えないなど切り替えが素晴らしいなと思いました」と称賛し、「本物の坪田先生のように、お芝居ではないところでも同じ目線でいてくださるので、お芝居をご一緒するのは初めてでしたが距離感も感じず、すごくやりやすかったです」と感謝する。
さやかのことを見守る “ああちゃん”こと母親の工藤あかり役は吉田羊さんが演じている。「カッコよくもあり、女性らしさもすごく感じました」と印象を語り、「吉田さんだったからさやかが演じられた」と明かす。さらに、「(自分が演じた)さやかが外見がああでも真っすぐ生きられたというのは、吉田さん演じるああちゃんのお陰かなと思います」と言い、「最初に台本を読んだときはそういう気持ちではなかったのですが、吉田さんとお芝居をして、吉田さん演じるああちゃんを知ったときにそう考えるようになっていきました」と振り返る。
◇演じながら背中を押された
人気女優の一人である有村さんだが、「女優になりたいとずっとやってきた中で、オーディションに受からずやる気を失ったときもあった」と打ち明け、「家族が応援してくれてたり、いろんな自分を想像したりとか、そういう気持ちがすごく共感できた」とさやかの心情を思いやる。「さやかが受験に悩んでくじけそうになった場面はそのときのことを思い出して、さやかもきっとこういう気持ちで苦しんでいたんだろうなとか、自分の経験を思い返しながらやっていました」と役作りについて語る。
初めてはまったポップカルチャーを聞くと、「特撮ヒーローの『(五星戦隊)ダイレンジャー』がとても好きで、それにはまって何十回も見ました」と意外な発言が飛び出した。「『(鳥人戦隊)ジェットマン』と『(恐竜戦隊)ジュウレンジャー』と『ダイレンジャー』と『(忍者戦隊)カクレンジャー』の4つを見ていたのですが、一番好きだったのは『ダイレンジャー』」といい、「すごくドラマチックで、それぞれの戦士たちに物語がありすごく感動的なんです」と力説。「そこにグッときて、当時は幼稚園児なのにボロボロ泣いていました」と思い出を語る。
今作はサクセスストーリーだが、家族愛や友情、信じることや続けることの難しさなども描いている。「自分を信じるのにはかなり力がいりますし、自分自身に言い聞かせて奮い立たせている部分もある」と有村さんは切り出し、「私は自信というものがまだまだ全然ないけれど、持たなきゃいけないものでもあるから、すごく難しいとは思う」と自己分析。そして、「イメージすることが一番大事なのかなと思います。そのイメージを信じてそこに向かって頑張る」と持論を展開し、「今の自分を信じるというよりは、先の自分がこうなっているというのを信じてやっていく感じです」と力を込める。
完成した映画を見て、「こんなにみんなに寄り添えるような映画になるとは思わなかった」と驚いているという有村さん。撮影に臨むにあたり、「テンポがいいところはテンポよくやったり、面白くできそうなところは面白くやったりと思っていた」と考えていたが、「この作品が伝えたいことは面白さとかではなく、家族の愛や友達、先生など、人と人とのつながりで広がっていくということ」と確信したという。そして、「誰かが頑張ることで周りの人たちがついていきたくなる、人の心が動かせるんだという感じで、演じながら私もすごく背中を押されました」と映画の持つパワーを信じている様子だった。映画は1日から全国で公開中。
<プロフィル>
1993年2月13日生まれ、兵庫県出身。2010年に女優デビューし、13年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で脚光を浴びる。14年には舞台「ジャンヌ・ダルク」で初主演を務めた。主な出演作に、ドラマは「失恋ショコラティエ」(フジテレビ系)、「MOZU Season1~百舌の叫ぶ夜」(TBS系)など、映画は「女子ーズ」(14年)、「ストロボ・エッジ」(15年)などがある。16年公開予定の映画「アイアムアヒーロー」への出演が決まっている。デジタル写真集「FiRST TRiP ハワイの場合」が発売中。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)