「群青色の、とおり道」のワンシーン(C)「群青色の、とおり道」製作委員会、太田市
「仮面ライダーW」(テレビ朝日系)に出演した俳優の桐山漣さんが、売れないミュージシャンを演じた青春映画「群青色の、とおり道」(佐々部清監督)が11日から公開される(群馬県内では先行公開中)。夢半ばの青年が、故郷に帰って自分を見つめ直す姿を、自然豊かな群馬県太田市の風景とともに爽やかに描いた。同市合併10周年記念作品。
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ミュージシャンを夢見て東京で暮らしていた佳幸(桐山さん)は、勘当同然だった父親(升毅さん)から連絡を受けて、10年ぶりに故郷に帰ってきた。工場を営む父親は病を患い、以前の厳格さを失っていた。明るい母親(宮崎美子さん)、小学校教師になった唯香(杉野希妃さん)たち同級生は、佳幸を故郷に温かく迎え入れる。ただ、高校に行きながら家業を手伝う妹(安田聖愛さん)だけは、兄にわだかまりを持っていた。佳幸は、地元のお祭り「ねぷた」の出し物として歌うことになった。唯香たちの応援を受けながら、10年間未完成だった曲の制作にとりかかる……という展開。
二度と戻らないと思って故郷をあとにした青年が、複雑な思いを抱えた表情で電車に乗っている。主人公の佳幸は、ミュージシャンになる夢の途上にある。道半ばだったことがもう一つ。それは、故郷に置いてきた人間関係だった。「半落ち」(2004年)や「ツレがうつになりまして。」(11年)などで知られる佐々部監督は、人と人のつながりを丁寧に描写することで、周りに支えられていることに青年が気づくまでの道のりを、じっくりと描き出した。唯香をはじめとする同級生たちと町を歩き、故郷の風を感じ、そして反目していた父親と久々に将棋を指す。とりわけ、溝があった妹とのシーンは、空白の10年間という時間を感じさせ生々しい。同世代は佳幸に親近感を持ち、中年以上には、佳幸の意地を張るような青くさい雰囲気に遠き若い頃を思い出すかもしれない。クライマックスでの「尾島ねぷた」の描写が美しい。木崎駅やギターをかき鳴らす利根川の土手、実家の工場、同級生と立ち寄る焼きまんじゅう屋などの太田市の風景がしっかりと心に焼きついた。その風景の一つ一つに、青春の通過点にある青年の気持ちがにじみ出ている。太田市出身の橋本剛実さんがプロデュースと脚本を担当。劇中歌を群馬出身のバンド「back number」が歌っている。ユーロスペース(東京都渋谷区)ほかで11日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。イラストにも描きましたが焼きまんじゅうが気に入りました。
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