「シネマの天使」のワンシーン(C)2015 シネマの天使製作委員会
2014年8月に閉館した映画館「シネフク大黒座」(広島県福山市)を舞台にした映画「シネマの天使」(時川英之監督)が7日に公開される。今作は、映画館の閉館をめぐる人間模様を実話やフィクションを織り交ぜながら描き、122年続いた同映画館が取り壊される間際に撮影が行われた。閉館間近の映画館で働き始めたヒロインを藤原令子さんが演じ、その幼なじみで映画を撮ることを夢見るバーテンダーを本郷奏多さんが演じる。映画館に対する人々の心情を描いたストーリーだけでなく、館内の壁に書き残されたメッセージや閉館セレモニーや工事の模様などが郷愁を誘う。
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閉館が決まった老舗映画館の大黒座で働き始めたばかりの新入社員・明日香(藤原さん)は、ある夜、館内で謎の老人(ミッキー・カーチスさん)と出会うが、老人は奇妙な言葉を残して姿を消してしまう。一方、バーテンダーのアキラ(本郷さん)は幼い頃から大黒座に通い、いつか自分の映画を作りたいと夢見るも踏み出すことができないでいた。閉館に反対する人々をなだめる支配人(石田えりさん)が気丈に振る舞い続ける中、ついに閉館の日を迎え……というストーリー。
122年も続いたという老舗映画館を映像に残したという劇場関係者の熱意がきっかけとなって誕生したという今作は、全編を通して“映画愛”にあふれている。特筆すべきは、映画そのものへの愛や劇場を愛する映画ファンはもちろん、映画館で働くスタッフへの愛情がたっぷり込められている点が興味深い。劇場に関わる人々の悲喜こもごもが描かれていく物語でありながら、今作の主役はやはり大黒座という映画館なんだなと感じさせられる。大作映画のように派手な動きや展開こそないが、情熱や時間の重みといったものをじっくりと描き、優しくて美しく、それでいて温かみのある映像でしっとりと見せる。ノスタルジックでハートウオーミングな気分に満たされた。映画館で映画を見るということ、映画というものについて再認識させられる映画だ。ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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