あなたにおすすめ
マックスマーラ:波瑠、柔道・阿部兄妹、内田理央、のん、ローラがドレスアップ! 8年ぶり公の場になった3児の母・加藤あいも
女優の鈴木京香さんが出演するドラマ「連続ドラマW 荒地の恋」(WOWOW)が、9日からスタートする。直木賞作家・ねじめ正一さん原作の大人のラブストーリーで、鈴木さんは夫の親友との許されざる恋に陥る女性・三田村明子を演じている。クランクアップを迎えた鈴木さんに、今作の魅力や、恋人役の豊川悦司さんの印象などを聞いた。
◇少女性と母性 明子の中の「二面性」
主人公・北沢太郎は、かつて詩人仲間と詩誌「荒地」の創刊のため、戦後日本の現代詩運動の中心として活動していたが、現在は53歳となり、新聞社の校閲部に勤務しながら細々と詩作を続けていた。妻と子供2人との平凡な幸せをかみしめながら生活していたが、親友であり戦後詩の代表的人物である三田村貴一の妻・明子と恋に落ちたことで、仕事と家族を捨て、これまでにないほどの情熱と「言葉」を取り戻していく。
鈴木さんが演じる明子は、50代の安定した男の人生を激変させる、ある種“魔性の女”ともいうべき女性。しかし、鈴木さんは「悪女として演じたくなかった」といい、「彼女は、どちらかというと少女のまま大きくなった感じで、細かいことにこだわらなくておおらかな人なんですよね。そして、自分の感情にうそをつかないことを大事にして、男の人に対しても自分の感情も押しつけない。自由奔放な男の人を受け入れる母性みたいなものを持っている。その不思議な二面性を演じたいと思いました」と語る。
さらに、鈴木さんが感じた明子の魅力は「細やかな女性らしさ」と評する。「明子は、料理がすごく上手。太郎さんの収入が少ないので、材料自体は高価なものを使っていないけれど、丁寧に下ごしらえして、あくを抜いたり、細かく刻んだり……とても手の込んだ料理を作る。家のお掃除もよくするんですよ。悪女なのではなく、自分ができることをその人のためにしてあげたいという気持ちに素直に従っているだけ」だといい、「同じ女性としてすてきな人だと感じたので、そのよさを伝えたいと思って演じました。それが出ていたらいいんですけれど」と期待を込める。
◇豊川悦司は「まさに太郎さん」
そして今回、明子と恋に落ちる北沢を演じたのが、テレビドラマでは約10年ぶりの共演となる豊川さんだ。渡邊孝好監督が、何年も前に今作を構想していた当初から鈴木さんと豊川さんに声を掛けていたことから、鈴木さんは「(豊川さんと)『荒地の恋』を実現するといいですね、とお会いするたびに話していたので、その豊川さんと北沢と明子として向き合えるのは最高の喜びです」と語り、現場での豊川さんを「お芝居をしなくても本当に太郎さんの雰囲気、こんなに絵になる人はいないなと思うことが何度もありました」と振り返る。
「太郎さんは、地味な白いシャツにスラックス、軍足を履いているんですけど。それで縁側で本を読んでいらっしゃったりすると、まさに太郎さんという詩人の姿がこうだったに違いないって思い込んでしまうほど、とても説得力があって。豊川さんは力まなくても、そのムードを伝達していく不思議な魅力がある方ですね。自分の役が好きだったことに加えて、太郎さんを演じている豊川さんのお芝居を見ながら、せりふを返していけるというのは、すごく楽しい作業でした」と笑顔で語る。
また、鈴木さんは「今回、数少ない大人の恋愛をしっかり描いた、年齢を重ねた女性と男性の心の通い合いみたいなものをしっかり描いてくれる作品をやらせてもらえたのは、本当にありがたいことだな、と。撮影前にも思いましたが、終わってみるとしみじみ素晴らしい方々と一緒に、渡邊監督の下、この年齢でも恋する女性を映像にしてくれるのはありがたいことだと思いますし、女性として今後もそういう役を演じられたら」と充実した表情を見せる。
◇詩人たちが「いとおしくなる話に」
また今作では、明子と北沢のラブストーリーとともに、1970年代後半から80年代を生きた個性的な詩人たちの人間模様が描かれている。鈴木さんは「詩人がメインになる話は珍しいと思いますし、いろいろなタイプの詩人がいるのですが、彼らがとってもいとおしくなるような話に出来上がっているんじゃないかと思います」とその魅力を語る。
「少し前の時代の話なのに、演じていて、だいぶ違うなと感じました。それは、時代というよりも、詩人という職業が、私にとって大きかったのだと思います。勉強もうんとした人たちだし、特に彼らは戦争に行って、生きて帰ってきた人たちなので、自分たちはなぜそこで命を失わずに生かされているのかということを常に考えながら、苦しむことを創作に変えていく人たちだったから。私個人として、その職業に感動したというんでしょうか。自分にはできない仕事なので、演じながら、詩人という生き方をしている人たちを見て、感じるということは、すごく豊かな時間でしたね」と鈴木さん。
50歳を過ぎ人生にもがきながら生きる北沢と愛に生きる明子、そして、それを取り巻く詩人たち。この物語を通して、「この人生はいい、この人生は悪いとかではなくて、自分の生き方にそれぞれ決着をつけて、認めてあげられればいいんじゃないかなと思ったりしました」といい、「自分が満足する生き方をしていれば、それが短命だったり、人から軽蔑される部分があっても、自分で選んだ生き方だといって認めて、それを終わらせていくというのは、それぞれの決着のつけ方。そんな生き方を認めてあげたくなるような人たちのお話です」とメッセージを送った。
「連続ドラマW 荒地の恋」は、9日から毎週土曜午後10時、WOWOWプライムで放送。全5話で、初回は無料放送。
◇プロフィル
すずき・きょうか。1968年5月31日生まれ、宮城県出身。1989年に映画「愛と平成の色男」で女優デビュー。91年にNHK連続テレビ小説「君の名は」でヒロインを演じて一躍注目される。2004年の映画「血と骨」で第28回日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞。主なドラマの出演作は、「きらきらひかる」(フジテレビ系)、「華麗なる一族」(TBS系)、「セカンドバージン」(NHK総合)、「夜行観覧車」(TBS系)など。今後の出演作として、NHK大河ドラマ「真田丸」(10日から毎週日曜午後8時~)、映画「の・ようなもの の ようなもの」(16日公開)がある。