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俳優の阿部サダヲさんが時代劇で初主演した映画「殿、利息でござる!」(中村義洋監督)が14日に公開される。映画は、磯田道史さんの著書「無私の日本人」に収録されている一編「穀田屋十三郎」が原作。江戸時代中期の仙台藩吉岡宿を舞台に、年貢の取り立てや労役で困窮する宿場町を守るため、十三郎(阿部さん)ら庶民9人が藩に千両を貸し、毎年の利子を全住民に配分する「宿場救済計画」を立てて奮闘する姿を描く。瑛太さん、妻夫木聡さん、竹内結子さん、松田龍平さんら豪華キャストが集結し、「ゴールデンスランバー」(2010年)などで知られる中村監督が本格時代劇に初挑戦した。
財政が厳しい仙台藩は百姓や町人たちに重税を課したため、破産と夜逃げが相次ぎ、小さな宿場町・吉岡宿はすっかりさびれてしまっていた。街の将来を案じる造り酒屋の主・穀田屋十三郎(阿部さん)は、町一番の知恵者・菅原屋篤平治(瑛太さん)から、藩に大金を貸し付けて利息を巻き上げるという秘策を聞かされる。明るみになれば打ち首必至だが、十三郎と弟の浅野屋甚内(妻夫木さん)をはじめ宿場町の仲間たちは、私財を投げ打ち計画を進め……というストーリー。
実話を基にした物語ということも興味深いが、なによりも主演の阿部さんをはじめとした実力派キャストたちによる演技のアンサンブルが随所で光っている。映画タイトルのテイストからコメディータッチの痛快時代劇を想像していたが、もちろん笑えるシーンもありつつ、人情や絆といった要素がちりばめられ、心温まる物語で爽快な気分にさせてくれる。悪党との殺陣勝負などといった分かりやすい時代劇要素はなく、庶民が藩に大金を貸し付けて利息を取るという興味深い設定や町人らが宿場を守るため金策に走り回る姿を描いた“無私”の精神には深く考えさせられ、素直に感動する。仙台藩の藩主・伊達重村役でゲスト出演している男子フィギュアスケートの羽生結弦選手が、思っている以上にはまっていて驚いた。14日から丸の内ピカデリー(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。