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女優の有村架純さんの主演映画「夏美のホタル」(廣木隆一監督)が11日に公開される。映画は、森沢明夫さんの小説(角川文庫)が原作で、将来の夢や恋人との関係に悩むヒロインが、父との思い出の森で出会った親子との交流を通して、成長していく姿を描く。有村さんが主人公の河合夏美に扮(ふん)し、恋人の相羽慎吾を工藤阿須加さん、夏美が出会う親子を光石研さんと吉行和子さんが演じるほか、小林薫さん、村上虹郎さんらも出演。メガホンをとった廣木監督と有村さんのコンビは、「ストロボ・エッジ」(2015年)に続き2作目となる。
写真家になる将来の夢と、恋人の慎吾(工藤さん)との関係に悩んでいた夏美(有村さん)は、父の形見のバイクで思い出の森へと向かい、小さな商店を営む通称“地蔵さん”と呼ばれる店主・恵三(光石さん)とヤスばあさんことヤスエ(吉行和子)の親子に出会う。そこに居候することになった夏美は、恵三の友人・雲月(小林さん)の不遜な態度に腹を立てながらも、自然の中で自由にシャッターを切るなど充実した日々を送る。ある日、夏美は恵三が別れた家族との間に埋められない溝を抱えて苦しんでいることを知り……というストーリー。
将来や恋人の関係に思い悩むというのは、きっと多くの人が通る道だろう。今作の主人公・夏美もそんな人生の転機を迎えるのだが、それを表に出さず、明るく振る舞いながらも迷っている雰囲気を絶妙に表現している有村さんの演技に、一気に作品の世界観へと引き込まれる。千葉県大多喜町で撮影された風景がとても美しく、物語に彩りと深みを与えている。夏美が乗る初期のヤマハSR400の車体が自然とマッチし、バイクが主役ではないが、懐かしさを演出している。夏美と恵三のやり取りをはじめ、さまざまな出会いからは人と人の絆が感じられ、さらに夏美と慎吾の関係など、いろいろな形の愛情や切なさがひしひしと伝わってくる。雲月の「才能は覚悟だから」というせりふがあるが、心に響き、仕事をするということを改めて考えさせられた。思わず目頭が熱くなる場面もあるが、しいて言うなら、泣けるというより心に残る映画だ。11日から新宿シネマカリテ(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。