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公開中のディズニー映画の最新作「ジャングル・ブック」(ジョン・ファブロー監督)の日本語吹替版で、黒ヒョウのバギーラを歌舞伎俳優の松本幸四郎さん、陽気なクマのバルーを西田敏行さん、母親オオカミのラクシャを宮沢りえさん、トラのシア・カーンを伊勢谷友介さんがそれぞれ声優を担当した。4人に「ジャングル・ブック」との出合いや見どころ、ジャングルでどんな動物に育てられたいかを聞いた。
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「ジャングル・ブック」は、ジャングルでオオカミに育てられた少年モーグリが主人公。モーグリは黒ヒョウのバギーラからオオカミのラクシャに託されジャングルの子となって幸せな生活を送っていたが、ある日人間を憎むトラのシア・カーンがジャングルに戻ってきて……という内容だ。
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――今回の声優のオファーが来て、ご自身の役柄を聞いたときにどう思いましたか。
幸四郎さん:僕は昔、中学校のころに「黒ヒョウ」というあだ名だったんです。なので、この話が来たときにはびっくりしました。(黒ヒョウに役に戸惑いはなく)スッと入れましたね。
西田さん:バルーはもう、俺ですね。ほとんど。一応掟が厳しいジャングルの中で、割と自由に、ゆるーく守っているというかね。決してインモラルってわけではないのだけれど、たまにはみでちゃうみたいなところもあるし。人もうまい具合に乗せながら使ったりする、結構世渡り上手っていうんですかね、そういうところもありますし、結構いとおしいやつですね。憎めないやつ(笑い)。やっぱりモーグリにとっての一番の心のよりどころというか、友達になれるやつですよね。その包容力というかキャパシティーはあると思います。
クマの声をいろいろ聞いてウウウーって感じを出そうかなと思ってやってみたら単に老けてるだけのじいさんの声になったんでやめました(笑い)。だから、普通にあんまりクマを意識しないで、西田敏行のままでぶつかろうと思いましたね。共通点があるので。「バルーを演じるということは西田敏行を演じればいいんだ」という楽な気持ちでやりました。
宮沢さん:自分の実際の子供もいながら、人間の子供モーグリもわが子のように育てるというとても愛情深く、本当に正義感のある、包み込むような優しさがあるラクシャですが、強いものとか権力のあるものに対しての正義感、弱いものを守る正義感みたいなところは、もしかしたら私と共通するところがあるかもしれません。強いものに吼(ほ)えるというか、そういうところは若干あるので共通しているかなとも思います。実際、私も1人の娘がおりますし、博愛的な愛情を日常の中で注いでいる毎日なので、そういう意味ではラクシャの愛の深さには私も負けない自信があります。
伊勢谷さん:物語の中で、さまざまな人間にとっての脅威でもあり、逆に自然の、ある種、体現とも取れる絶対的なプライドを持って存在している虎シア・カーンなので、圧倒的な力で押さえ込んでいく感じを表現していくのは、すごく大変でしたね。普段の話し言葉の中で出てくる抑揚では表現し切れなくて、そういう意味では人間でない存在になっていくのは、難しかったですね。大きさが難しいんですよね、(シア・カーンの)存在の。(シア・カーンは)ぶれないんですよね。誰かにとって悪にとらえられることであろうとも、彼の中に絶対的な芯がある。そういうところの絶対的な自信を持つようにしました。
――50年前のアニメーション「ジャングル・ブック」とはどんな出合いがありましたか。
幸四郎さん:原作もその前に読んでいますので。確か、丸善という洋書屋さんがあって、そこで買いました。アニメーションの「ジャングル・ブック」は(東京・)渋谷の宮益坂に洋画専門の映画館があって、そこで「ターザン」とか初期の「ガリバー旅行記」とか「キングコング」などを見ました。確かそのときに「ジャングル・ブック」も来たんじゃないかな。20歳過ぎていたと思います。われわれの世代は「ジャングル・ブック」といえばアニメでしたね。
宮沢さん:私は映画が公開されたときは見ていない(まだ生まれていない)ので、「ジャングル・ブック」との出合いといったら絵本ですかね。小学校の図書室に置いてあって。
伊勢谷さん:僕もそういうイメージでしたね。僕はアニメーションについては全然認識していなかったと思います。ジャングル・ブックという人なのかと思ったら、ジャングルの本という意味だったんですね。それぐらいな感じでした。
西田さん:僕はアニメーションはね、そのころ仲のよかった友達と一緒に18歳くらいのときに(デートで行った)。ディズニー映画は子供の頃から「ダンボ」とか「バンビ」とか「ピノキオ」とか全部見ているので、いってみれば自分の情操を育んでもらった恩義があります。ディズニー映画が来る(公開される)と見るようにしています。
――この作品を見た親子にどんなシーンに注目してどんなふうに感じてほしいですか。
西田さん:モーグリの生き方、そしてジャングルの動物たちにとってはモーグリは人間だし、ちゃんと大地を四本の手足を使って歩いている彼らとちょっと違いますよね。二足歩行で歩いているジャングルにはいない存在です。その種族の異なるものを何の抵抗もなく受け入れて、愛して、育てるという幅広い自然の懐の大きさ、そういったものを感じなさいよと。自然は厳しいけれど優しいし、いろんなことを教えてくれるものなんだよということを暗に画として伝えたいんじゃないかなという気はしましたね。モーグリは人の子としてちゃんとまともなモラルをもってこれから成長していくんだろうなということを感じますよね。
伊勢谷さん:どうしても自分の役の話になっちゃうんですけれども、僕はシア・カーンのやり方は大嫌いなんですよ。これが100年前に描かれて、まだいまだに僕らはこれを参考にしてこうなってはならないと反省しなきゃいけないことをやっているんですよね。ということは人間が全然成長していないということだと思うんですね。だからお母さんが子供に何かを伝えるときにシア・カーンになりたくないという子供の気持ちを聞いて、なぜなりたくないんだと思う? 何がよくないんだと思う? とお子さんと話しながら、逆にどういう人間になりたいかというのを子供さんと話していただけると、人間形成のときに理想の自分を目指せるのでいいのかなと思います。
宮沢さん:たくさんありますけれど、失敗を恐れずに挑戦するということ。やっぱり、どうしても今の時代だと失敗ということはネガティブにとられるけれど、その失敗、挫折とか不安とかそういうことから学ぶことだったり、人として豊かさを得たりすることってあると思うんですね。もちろん幸せなこととか、穏やかなこととかそういうことからも得るものはあるけれど、そうじゃなくてこういうネガティブな部分から成長させてくれるものがあるということを、お母様とお子さんたちにも親子で感じてもらえたらいいなあって思います。
幸四郎さん:バギーラというのはモーグリに対してお父さんで、師匠で先生、そういう性質の動物として描かれているんだけれども、僕はバギーラは「若い頃に我が子を亡くしているんじゃないか」と思ったんです。バギーラはモーグリを一見、指導して教えて、守って、時には友達のようにしているけれども、先生になるということは、実は生徒に教えるのではなくて、先生が生徒から教わることが多いんじゃないかな。そういう気持ちが大事だということをバギーラを見ていて感じましたね。その先生もだんだん年老いていく……。自由にならないというところがまた、なんともいえず悲しいところなんですね。
――モーグリはオオカミに育てられましたが、皆さんだったら何に育てられたいですか?
西田さん:僕はやっぱりクマかな。バルーみたいな兄貴がいて、バルーみたいなお父さんがいて、バルーみたいなお母さんがいたら、結構楽しい家庭になるんじゃないんですかね。
伊勢谷さん:その家族じゃ何が本当か分からないですね(笑い)。僕はゾウですね。ストーリーの中でのゾウは尊敬されていたし、詩的でしたしね。
宮沢さん:ゴリラに育てられたら、木に登ったり、木と木の間を自由自在に鳥のように飛び回ったりするのがとっても気持ちよさそう。あの感じはちょっといいなと。
幸四郎さん:お三方がほとんどしゃべっちゃったから、同じようなことです(笑い)。
全員:ハハハ(笑い)。