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主演映画「超高速!参勤交代 リターンズ」について語った佐々木蔵之介さん
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主演映画「超高速!参勤交代 リターンズ」について語った佐々木蔵之介さん

佐々木蔵之介:「超高速!参勤交代」まさかの「リターンズ」に「過剰に過激にやりすぎるしかない」

 2014年に公開されヒットした「超高速!参勤交代」の続編となる映画「超高速!参勤交代 リターンズ」(本木克英監督)が全国で公開中だ。貧乏で弱小の湯長谷(ゆながや)藩(現在の福島県いわき市)の藩主・内藤政醇(まさあつ)と藩士たちが、知恵と工夫を凝らして参勤交代をする姿を描く。前作は江戸へと向かう「参勤」の道中の物語だったが、今作では政醇らが湯長谷へと帰る「交代」中にさまざまな騒動が巻き起こる。前作に続き、政醇を演じる佐々木蔵之介さんに話を聞いた。

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 ◇物語は1カ月後でも実際は「2年たって年を取ってる」

 今作は前作の1カ月後から始まる物語だが、「実際、撮影は(前作から)2年たっていて、年を取っているんですけど(笑い)」と佐々木さんは言い、「なにか体に残ってるものなのでしょうか。いわき弁にしても各々のキャラクターにしても、みんな前作以上に伸びやかに演じられたのではないかなと思います」と振り返る。

 時代劇ならではの所作や方言などについては、「役者にとって方言はとてもハードルが高いのですが、この作品はある意味、方言が一つの主役だと思っています」と切り出し、「だから徹底してやりたいと思っていました。(方言は)“主役”であり、キャラクター造形の中ですごく武器になるものだと思う」と持論を語る。しかし、「あまりやりすぎてしまうと、音声さんから『もうちょっとマイルドにしないと、言ってることが分からない』と指摘されました」と笑う。

 2年ぶりに政醇を演じた佐々木さんだが、「前回で終わりだと思っていて、誰一人続編をやるとは思っていませんでしたから、『次やりましょう』と言われたときに、『やめときましょう。調子こいてやったらあかん』みたいに言ったんです(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに話し、「やり切ったと思ったものをもう一度やることになったので、過剰に、過激にやりすぎるしかない。それしか手はないと」と考えたという。

 その結果、「これ(ポスター)くらいの熱量に(笑い)。もう盛りだくさんです」と映画の宣伝ポスターを見ながら話し、「陣内(孝則)さんのメークもまさにそうで、この熱量がすごい。とりあえずやりすぎるくらいやってやろうと」と一致団結したことを明かす。しかし、「陣内さんは前回メークが濃いと言われていたのに、今回メークさんと相談してさらに濃くするという決断に至ったらしいです」と裏話を語る。

 それを受けて佐々木さんも、「顔を緑色に塗るしかないだろうと(笑い)」と感じたといい、「白目をむいて舌を出すという芝居はやることに決めていたので、じゃあ舌にも色を塗るかみたいな感じで、思いついたらやる、というふうにやっていました」と振り返る。

 ◇コミカルなシーンも凄絶な立ち回りも成立させるのが今作

 今作はコミカルな描写がありつつも、アクションシーンは時代劇ならではの迫力に満ちている。「前作の『超高速!参勤交代』の話が来たときには、ふざけたタイトルだなと思いました(笑い)」と佐々木さんは話すも、「ただパンチはあって、シナリオを読んだらめちゃくちゃ面白かった。それと同じで、お客さんもふざけたタイトルだなと思って見たら、『意外に時代劇』『意外にチャンバラをしっかりやっている』って感じたのでは」と分析する。

 さらに、「それが若い人にも(時代劇の)間口を広げて、時代劇ファンの人からも評価してもらえた部分があったので、(続編では)チャンバラはもっとやろうとなりました」と明かし、「殺陣師の方も、時代劇に携わっていて『ここまで立ち回りをやらせてくれる作品はない。非常にうれしい』とおっしゃっていました」とキャスト、スタッフともに殺陣にこだわったという。

 立ち回りについて佐々木さんがこだわったシーンの一つが、深田恭子さん演じるお咲と会話を交わしながら政醇が斬り合う場面だという。「シナリオで読んだときは、これをやるのかと思った」と打ち明け、「でも無理というのではなく、エンターテインメントとして成立させるのが『超高速!参勤交代』なのでは、と。成立させたら非常に上質な時代劇エンターテインメントが出来上がると思った」と語る。そして、「この作品ならではの立ち回りにできたのではないかと思っています」と自信をのぞかせる。

 時代劇の数が少なくなってきているが、「演じる立場として時代劇は所作や衣装、言葉であるとか、ちょっと取っつきにくいところはありました」と明かすも、「前作で内藤政醇という役と出会ったことで、それが大きく変わったというのはあります」という。

 続けて、「(今作は)時代劇でマラソン、ダッシュしているわけですから、時代劇でもはじけられるし、伸びやかにできる」と思うようになったと語り、「余計なものを取っ払って間口を広げ、時代劇って自由なんだと思わせてくれた作品でもあります」と深くうなずく。そして、「日本人だからこそ笑える作品かもしれない。ふんどしで走っとったら、なんか笑ってしまいますしね(笑い)」と笑顔で語る。

 ◇前作では果たせなかったご当地ロケに感慨

 前作でも困難の連続だったが、今作はさらにピンチが訪れる速度が上がっている。「負荷をかけないと成立しないので、ずっと走り続けたり、7人対1000人など、とにかくむちゃくちゃ」と笑い、「中途半端はできないということで、やりすぎることばかりでした。熱量は前回よりもあると思います」と自信をのぞかせる。佐々木さん自身のピンチの乗り越え方は「笑い過ごす」ことだといい、「ぎりぎりになるよりも、『笑(わろ)てまう』『ありえへんな』って笑いに転化する方が気持ちも楽になる」と分析する。そして、「与えられたピンチは見込みがあるから与えられたものだと思ったほうがいいのでは」と持論を語る。

 今作で注目してほしいポイントは「前回は(東日本大震災の影響で)できなかったいわきロケができたことです」と佐々木さんは感慨深げな表情を浮かべる。佐々木さん演じる政醇が藩主を務める湯長谷藩は現在の福島県いわき市にあたる。「いわき市民150人と一緒に『じゃんがら念仏踊り』を踊るシーンがあって、鎮魂の踊りでもあるので、地元の方とできて、皆さんが『殿、お帰り』というように迎えてくださった。映画がクランクインして間もない時期だったので、背中を押していただいた気がして、うれしかったです」と感謝する。

 さらに「小浜海岸で走るところ」にも注目してほしいといい、「前作ではロケハンはしていたけれど、まだ撮れる状況ではなかった。今回は復興して入江のところで撮影ができるようになったので、そこを走ったのは感慨深いものがありました」と思いをはせる。そして、「『ポレポレいわき』という地元の小さい映画館があるのですが、前作の観客動員が全国3番目を記録したんです。本当に皆さんが『リターンズ』させてくれたという思いがありますし、『リターンズ』した意義もこの2シーンから感じられ、うれしく思っています」と語った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1968年2月4日生まれ、京都府出身。大学在学中から劇団「惑星ピスタチオ」で活躍し、2000年にNHK連続テレビ小説「オードリー」で注目を集める。以降は映画やドラマ、舞台など幅広く活躍し、05年には自らがプロデュースをする演劇ユニット「Team申」を立ち上げる。15年には「超高速!参勤交代」で第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。17年には出演した映画「破門 ふたりのヤクビョーガミ」「花戦さ」「3月のライオン」の公開を控えている。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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