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橋本愛&宮崎あおい:お互いに女子力低い? 2人が考える理想の母親像とは…

 女優の橋本愛さんが主演し、宮崎あおいさんと共演した映画「バースデーカード」(吉田康弘監督)が全国で公開中だ。映画は吉田監督によるオリジナル脚本で、亡くなった母親から毎年届くバースデーカードに書かれたメッセージを通して母親と娘の絆や深い愛情を描く。主人公・紀子を演じた橋本さんと、紀子が10歳のときに亡くなった母・芳恵役の宮崎さんに、役どころや撮影エピソード、美容面で気をつけていること、理想の母親像などについて聞いた。

 ◇年齢を重ねていくことを意識しながら演じた

 幼いころに母親を亡くした姉弟の姉・紀子を演じる橋本さんは、「紀子という女性の人生を描いているので、(演じるにあたっては)年齢に即した変化というのはありました」と切り出し、「あどけなさだったり、もろさや弱さみたいなものがある年頃から、大人になっていくにつれて細かった芯がどんどん太くなっていくという変容を、とても意識しました」と振り返る。

 紀子とは異なり、橋本さん自身は「私は(女性のほうが多い)“女家族”で育ったのですが(紀子は)その真逆で、父親と弟という“男家族”に女性(紀子)がいる空間に飛び込んだとき、どういう反応が生まれるのかは想像できませんでした」と感じたという。しかし、「ユースケ(・サンタマリヤ)さんが演じられたお父さんがすごくすてきだったし、須賀(健太)さんが演じた弟も弟感が強く、自分に弟はいませんが納得がいくというか、こういう弟だったら日本一周みたいなことを言っても好きにやらせてあげられると感じました」と姉としての優しい表情で語る。

 そして、「そういう絶妙な距離感みたいなものが現場に入って体感として分かったところがあり、(ユースケさんと須賀さん演じる)家族に助けられた部分がとても大きかったです」と感謝する。

 母親役の宮崎さんは、「台本を読んだときに、とても優しい子供たちに弱みを見せないお母さんだなと思っていました」と芳恵の印象を語り、「そのイメージは実際に演じ終わったあともあまり大きく変わりはなかったのですが、出来上がった映像を見たときには、こんなに優しく話しかけていたんだな、と」と自分でも驚いたという。「そこは必要以上にはあまり意識していなかった部分なので……。子供たちを前にすると、そういう声になるんだなと思いました」と分析する。

 ◇子供から大人までの紀子役が似ていたことが役立つ

 今作では母が子供たちに残した手紙が物語のポイントとなっているが、宮崎さんは子供たちに手紙を残していく母親を演じた。「(台)本読みのときに紀子役の4代がそろったんです」と宮崎さんは笑顔で切り出し、「みんな成長したら橋本さんになるんだろうなっていう感じで、ものすごくしっくりきました。目の雰囲気とか(紀子の各年代を担当する子役の)子供たちがみんな似ていて、その雰囲気がちゃんと橋本さんに伝わっていっているので、すごくイメージはしやすかったです」と心情を作り込むのに役立ったと説明する。

 そして演じる際には「目の前にいる小さな紀子を見ながら、奥にいる橋本さんを見ていたのかな、とも思います」と現場での心境を振り返る。

 手紙を残される側である橋本さんは、「手紙というのはその人の字が書いてあって、その字にはいろいろ宿っているわけで、手紙を見たときにはお母さんの生命というか息吹きを感じました」と語り、「お母さんは亡くなっているけど、それでもお母さんの存在というか気配は家族の中にずっとあって。いなくなっても4人家族ということが変わらないのは、手紙があったからこそ家族全体が持ち続けられた感覚だと思います」と解説する。

 さらに、「手紙を読んだときにどこか“生きている”と思ったのは、(バースデーカードが)お母さんとの1年に1回の会話、対話なので、手紙を読んでいるときがお母さんの存在というものを、一番色濃く感じた瞬間だったのでは」と紀子の気持ちに思いをはせる。

 ◇ともに自身が考える役割を果たすことを意識

 数多くの作品に出演する2人だが、仕事をする際の心構えとして、「ちゃんと自分の役割を全うするということ」と宮崎さんは言い、「10代や20代前半の若いころは、そこで自分が何をするべきなのかということよりは、楽しむとか一生懸命頑張るみたいなことが先になっていた気がする」と自身の経験を振り返る。

 続けて、「大人になって現場でお芝居をするのはもちろん、それ以外に現場でできる役割を考えるようになりました」と取り組み方が変わり、「メインに立つとき、今作のような形で参加させていただくとき、それぞれでの役割を全うしたいなと思っています」と宮崎さんは真剣な表情で語る。

 一方、「私が思っている役割は、映画を見た人全員を感動させること」と橋本さんは力を込め、「それを果たすためにはいろいろしましたけれど、現場を和ませるとか、座長としてコミュニケーションを取るみたいなことはあまりできなくて……」と反省を口にする。しかし、「今回は目まぐるしい現場だったので、そこに巻き込まれないよう“台風の目の中”にいることを維持する、というのが自分の役割だと判断しました」と今作における自身の立ち位置を捉え、「自分が判断した役割は果たしたつもりではいます」と自信をのぞかせる。

 多忙な日々を送る中、美容面で気をつけていることについては「あまりないかも(笑い)」と橋本さんが言えば、「私もないです(笑い)」と宮崎さんも同意する。運動に関しては、「あまりしないですけど、体が硬すぎるので最近ヨガに行くようにはしました」と話す橋本さんに、「空中ヨガですか? 普通のヨガですか?」と宮崎さんが尋ねる。空中ヨガが分からない橋本さんに「ハンモックみたいなのを使い、浮きながらやるものです」と宮崎さんが説明するも互いにあまり体に気を使っていないことに気付き、「お互い女子力が低いのかな(笑い)」と苦笑い。

 最近、気になっているファッションアイテムは?という質問には、「柄もの。柄ものやパッチワーク、刺しゅうものなどが好き。柄、柄したものを買っています」と宮崎さんは柄もの好きだと明かす。「私も一緒です」と橋本さんは切り出し、「刺しゅうが大好きで、あとスパンコールとか装飾が好き。お洋服がすごく好きなので、そういうものを基本的に求めて生きています」と笑顔で話す。

 ◇2人が思い描く理想の母親像は…

 今作で特に印象に残っているシーンを「宮崎さんと最初で最後、対面するシーンは脚本を読んでいてもすごく好きだった」と橋本さんは言い、「いいシーンにしたかったので、すごく集中もしたし、ほどよい緊張もありました。そのときの宮崎さんの顔も忘れられませんし、すごく宝物のような時間になったのが思い出深いです」と目を輝かせる。

 さらに橋本さんは、「(紀子が)20歳の誕生日のときにカレーを作るシーンがあったのですが……」と話し出し、「そのときにユースケさんが『アドリブで「カレーに隠し味で胃薬入れた」と言ってもいいですか』と監督に質問していたのが一番面白かったです。『それは次の作品でお願いします』と(監督には)言われていました(笑い)」と楽しそうに語る。

 宮崎さんは、「紀子と正男(須賀さん)の姉弟のやり取りが好き」と母親役らしいシーンに言及し、「橋本さんになったときの2人もそうですが、特に中学生時代ののんちゃん(紀子)と正男のやり取りがよくて、正男は野球、のんちゃんは友だちに彼氏ができちゃったから夏休みが暇になってしまい、2人に文句を言っているのんちゃんの顔とかがすごく可愛い」と言ってほほ笑む。続けて、「お母さんがいなくなったあとも、彼らなりにきちんと2人で寄り添って成長していってるなというのが感じられるので、姉弟のやり取りが全編通して好きです」と語る。

 娘と母という同性ならではの特別な関係性を軸にした今作。理想の母親像について、「理想というとまだ分からないですけど……」橋本さんは前置きし、「もし母親になるとしたら、一番の理想は無欲であること。子供のためなら何を捨ててもいいと無欲であることというのが、一番強いと思っています」と慎重に言葉を選びながら話す。

 一方、「自分の母親」という宮崎さんは、その理由を「大人になり親の気持ちが少しは分かるようになってきた今、特に思うのは、とても私の母は明るくて誰とでも仲よくなれて、私の友だちが実は私より母と仲よくなっていることが多いようなタイプ」と自身の母親の人物像を説明し、「そういう人を包み込むような優しさがある人になりたいなって思います」と思いをはせていた。映画は丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開中。

 <橋本愛さんのプロフィル>

 1996年1月12日生まれ、熊本県出身。映画「告白」(2010年)に出演し脚光を浴びる。13年には第36回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。主な出演作に、映画「桐島、部活やめるってよ」(12年)、「さよならドビュッシー」(13年)、「リトル・フォレスト」シリーズ、「残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―」(16年)、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」など。17年には出演した映画「美しい星」の公開を控える。

 <宮崎あおいさんのプロフィル>

 1985年11月30日生まれ、東京都出身。2002年に公開された初主演作「害虫」で第23回ナント三大陸映画祭コンペティション部門主演女優賞を受賞。主な出演作に、映画「ツレがうつになりまして。」(11年)、「舟を編む」(13年)、「世界から猫が消えたなら」「怒り」(ともに16年)など。NHK大河ドラマ「篤姫」、NHK連続テレビ小説「あさが来た」など。17年には出演した映画「ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~」の公開を控える。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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