ダブル主演した映画「君の膵臓をたべたい」について語った浜辺美波さん(左)と北村匠海さん
女優の浜辺美波さんと人気グループ「DISH//」のメンバーで俳優の北村匠海さんが、ダブル主演した映画「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」(月川翔監督)がヒット中だ。クラスで目立たない存在の「僕」(北村さん)は、膵臓の病を患うクラスメートの桜良が書いていた文庫型の闘病日記「共病文庫」を病院の待合室で偶然見つけたことから、次第に桜良と一緒に過ごすようになるが、懸命に生きる桜良の日々はやがて……というストーリー。浜辺さんと北村さんに、お互いの第一印象や撮影エピソードなどについて聞いた。
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原作は、2016年の本屋大賞で2位にランクインした住野よるさんのベストセラー小説。物語は、母校の教師となった「僕」が桜良(浜辺さん)と過ごした学生時代を回想する形で、現在と過去の二つの時間軸が交差しながら進行する。現在の「僕」を小栗旬さんが演じ、桜良の親友で結婚を控える恭子役を北川景子さんが演じている。
◇どう桜良を演じるか楽しみだった
――お二人のお互いの第一印象と、演じてみて印象が変わった部分は?
北村さん 桜良という子が天真爛漫(らんまん)でクラスの中心にいるような女の子で、美波ちゃん自身、僕が初めてお会いしたときの印象だと、どちらかといったら、僕が演じた役柄の「僕」に近い感じだったので、自分もどちらかというとそっちの人間なので、そういう美波ちゃんがどう桜良を演じるのかすごく楽しみな面がありました。自分がもし桜良をやれといわれたら、かなり挑戦ではあるので。いざ本番になると、美波ちゃんが芝居で見せる弱さもある笑顔だったり、しぐさだったりをすごく感じましたし、病室のシーンで一緒に演じていて、死期が近い人なのかもしれないと芝居から感じさせてくれるような、美波ちゃんにしか出せないニュアンスだったり、芝居だったなとすごく思いましたね。
浜辺さん 私は、初めて北村さんとお会いしたときに「僕」とは真逆の明るくて、すごく外向的な方なのかなと思いました。(ドラマ「仰げば尊し」で演じていた)役柄的にもすごく派手な服を着てらっしゃったので、どちらかというと私の苦手ジャンルじゃないかな、と(笑い)。これから(今作を撮影する)2カ月間、どうやっていこうかとすごく不安だったんですけれど、リハーサルを重ねていくうちに本当にしゃべらない方だと思うくらい、「僕」に近い方だということが分かって、2人ともしゃべらない同士だからよかったなと思いました。
北村さん 苦手ジャンルじゃなくてよかったです(笑い)。
◇泣くシーンが肝「意識しないようにした」
――完成した映画を見た感想は?
北村さん 自分が出ている作品はこれまで客観的に見られなかったんですけれど、今作はすごく客観的に見られました。自分が主演というのにもかかわらず、自分がここまで一観客として見られて、しかも自分で泣けたというのがうれしくて。監督にも「本当に素晴らしい映画に出合いました」という話をしたんです。たくさん宣伝しているんですけれど、その自信にもなったというか自分の中で、この映画はやっぱりすてきな作品だと確信しましたね。
浜辺さん 私も客観的に見させていただいて、泣かされたくらい素晴らしい映画だったので、桜良ちゃんを演じられてうれしいと思いました。あと、現場で、12年後の北川さんと小栗さんに桜良ちゃんの思いが届くところを見ていなかったので、それを見届けることができてとてもうれしかったですし、桜良として客観的に見てもほっとしました。
――客観的に見てとお二人ともおっしゃいましたが、いままでと経験的に見て何が違いましたか。
北村さん 例えば「ディストラクション・ベイビーズ」のように断片的に自分が出てくると芝居が気になって仕方なかったんですけれど、自分の初主演映画作ということもあって自分がずっと出ているので、ストーリーを追えたというのがあるかもしれないですね。これまで深夜ドラマの主演はあったんですけれど、映画で主演を張れるということはなかったので、自分の中でも新しい経験でしたし、新しい見方になったと思います。
浜辺さん 私は最初のシーンから、映画のストーリー性だったり、世界観に引き込まれるような“強さ”を感じて、見ていて自分のお芝居とかではなくて、映画のお話に連れていかれたような気になるくらい、作品として楽しめたかなと思いました。
――お二人とも引き込まれたということですが、原作とはまた違うオリジナルの要素が映画には入っていますけれども、最初に脚本を読まれたときはどう感じましたか。
北村さん 「僕」という役柄では、映画を見ても分かる通り、自分が泣くシーンが一番、肝(きも)だなというのがあったので、ここをどう演じようかと。すごく悩んだ末に、気にしないようにしようと思って。「僕」という人間からしても桜良の死に向かっていく芝居はあまりしたくないと思って、桜良の「共病文庫」も、あの(読んで泣く)シーンを撮るまで1回も読まないようにして、泣くシーン自体も自分で意識しないようにしましたね。それは監督も同じ気持ちだったようで、あのシーンについては話し合うことは一度もなかったので。本番の当日に現場の雰囲気で作っていった感じなんです。
――撮影で肝だと意識されたからこそ、突然のことなので意識しないようにした、と。
北村さん そうです。実際は(撮影で)共病文庫を初めて読んだときに、撮影中の思い出も重なって、「僕」という人間と桜良との役柄上の思い出も撮影当日、自分の中にしっかり落とし込めていたので、自然とうそのない涙がこぼれました。桜良のナレーションを聞きながらの芝居だったので、その声も自分の中に届くものがあって、文字を追いながら、声を聴きながら、現場に美波ちゃんはいなかったんですけれど、(美波さんのナレーションに)すごく助けてもらった感じでした。
――浜辺さんは脚本を読んでいかがでしたか。
浜辺さん 私は、桜良ちゃんのせりふがすごくすてきな言葉が多いなと感じて、演じるのが楽しみだったんです。すてきな言葉だからこそ、私が普段ではなかなか言わないような独特の言い回しだったり、せりふとして口に出したときにどう言おうとか、長いせりふが多かったので大変だろうなとか、それぞれ言い方を考えて、大変だなと毎回思いながら演じていきました。共病文庫も一部書かせていただいて。書いてあることを読んで参考にさせていただきました。
◇監督と読み合わせで会話のテンポをつかんだ
――お二人はどのようにそれぞれの役作りをしていったんでしょうか。
浜辺さん 監督と本の読み合わせをさせていただいて、桜良ちゃんの会話のテンポの取り方だったりをしっかりと教えていただきました。監督が桜良ちゃん役をやって、私が「僕」役をやって、「このテンポで桜良って入るんだよ」っていうのを感じさせていただいて、それからすごくやりやすくなりましたね。
北村さん 僕が中学校のころ経験した他人に壁を作る感覚とか、距離感だったりが「僕」という人間の高校時代と類似しているというのがあって、目線だったり、細かい部分とかは分かりやすかったですね。「僕」は多分、世の中のだいたいの人が理解しがたいキャラクターではあるかもしれないですけれど、自分の中ではすごくしっくりくるキャラクター。この役を演じる前は、結構、破天荒な役が多かったので、久々に自分の中で落ち着く役というか、演じやすさはすごくありました。今の自分とはまたちょっと違うんですけれど、過去を思い出す感覚で、自分で脚本を読んだそのままのナチュラルなトーンでせりふを言うように心がけましたね。
――浜辺さんは監督とやりとりをされたということですが、北村さんは?
北村さん 本番に入る前から、監督がイメージしていた僕の像と、自分のイメージがすごく一致していて。だから芝居で試す癖だったりとか、テンションだったりを監督が現場で微調整してくれるという感じでした。監督とは撮影中、焼き肉を食べに行ったりしたんですけれど、この作品とは違う話をしていました。他の作品のことだったり、監督が実写化したいマンガの話をしたりして。自分は結構芝居のときとプライベートをきっぱり分けるタイプなので。今回の撮影中は大人の人たちとワイワイしていたというイメージです。
――かなり自分に近い役なら、プライベートと分けるのは難しかったのでは。
北村さん そうですね。ただ、気持ちはあまりプライベートに持ち込まないようにしているというか。でも、服装に出てしまうということはあるんですけれど(笑い)。「仰げば尊し」をやっているときはチンピラみたいな服装で(笑い)。現場そのままの雪駄だったり丸いサングラスをかけたまま美波ちゃんに(初対面のとき)会ってしまったのでそういう第一印象だったのかなと思うんですけれど。今回の作品では服装は普通の感じでしたけれど、ホテルの部屋でギターを弾いたりして自分の時間と役の時間を分けるようにしていました。
<浜辺美波さんのプロフィル>
はまべ・みなみ 2000年8月29日生まれ。石川県出身。11年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞受賞。同年、「浜辺美波~アリと恋文~」で映画主演デビューを飾る。15年に人気アニメを実写化したドラマ「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」(フジテレビ系)に本間芽衣子(めんま)役で出演。同年、NHK連続テレビ小説「まれ」への出演が話題となる。その後も16年に劇場版アニメ「映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン」、17年に映画「咲-Saki-」に出演。9月公開予定の映画「亜人」にも出演している。
<北村匠海さんのプロフィル>
きたむら・たくみ 1997年11月3日生まれ。東京都出身。2008年の「DIVE!!」で映画初出演。13年にはダンスロックバンド「DISH//」のメンバー(ボーカル&ギター)としてメジャーデビューし、音楽と映像作品、それぞれで活躍。13年に映画「陽だまりの彼女」、14年にドラマ「信長協奏曲」(フジテレビ系)、16年は映画「ディストラクション・ベイビーズ」、ドラマ「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)、「仰げば尊し」(TBS系)と話題作の出演が続いている。
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