女優の吉高由里子さん主演の映画「ユリゴコロ」(熊澤尚人監督)が23日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開される。沼田まほかるさんの人気ミステリー小説が原作。殺人を犯した女性の手記を青年が父の書斎で発見したことをきっかけに、出会うはずのなかった者たちが結び付き、壮絶なドラマが展開される。
カフェを営む亮介は、実家で「ユリゴコロ」と書かれたノートを見つける。書かれていたのは人を殺(あや)めることでしか世界とつながれない美紗子という女性の告白だった。内容が事実なのか創作なのか、多くの疑問を感じつつ、亮介はノートに引かれていく。そんな中、亮介の婚約者、千絵が失踪し……というストーリー。
吉高さんが美紗子、松坂桃李さんが亮介を演じる。千絵役で清野菜名さん、美紗子と運命的な出会いをする洋介役で松山ケンイチさん、千絵の元同僚役で木村多江さんらが出演している。
人の死でしか心のよりどころを感じられないという難役を、吉高さんは陰鬱さと透明感が同居した不思議な魅力で体現。ダークな世界観に一気にのめり込ませてくれる。美紗子が次々にターゲットを手にかけていくシーンでは、恍惚としながらもどこか憂いを感じさせる吉高さんの表情に深いドラマ性を感じる。あまりにもショッキングな怪演ぶりには背筋が凍り付いた。
物語はヘビーで叙情的だが、サスペンス的な展開や切ない愛も描かれ、心の奥底をわしづかみにされる。心情の振れ幅が大きい松坂さんの熱演にも注目だ。(遠藤政樹/フリーライター)