俳優の菅田将暉さんと女優の土屋太鳳さんがダブル主演の映画「となりの怪物くん」(月川翔監督)が27日にTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開された。累計発行610万部突破の人気マンガが原作で、昨年公開の映画「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」で知られる月川監督が高校生たちの心の機微を丁寧に描いた王道の青春恋愛映画だ。
原作は2008~14年に少女マンガ誌「月刊デザート」(講談社)で連載されたろびこさんの同名マンガ。行動が予測不能な超問題児で“怪物”と呼ばれる吉田春(菅田さん)と、ガリ勉&冷血の水谷雫(土屋さん)。それぞれ恋人はおろか心を許せる友達すらいなかったが、高校1年生の4月、雫が不登校の春の家に嫌々プリントを届けに行ったことをきっかけに出会うと、春は雫を勝手に初めての友達に認定し、すっかり懐いてしまう。
仕事で家にいない母親に認められるため、幼い頃から勉強だけを信じてきた雫にとって、友達や恋人は邪魔な存在でしかなく、初めは無関心だった。やがて春の本当の人柄に触れ、次第に心ひかれていく。いつしか春と雫の周りには、個性豊かな友達が集まり、楽しい学園生活を送るようになるが……というストーリー。春と雫の日常を彩る仲間たちとして池田エライザさんや浜辺美波さん、佐野岳さん、山田裕貴さん。高校生たちの良き兄貴分として速水もこみちさん、春の兄役で古川雄輝さんも出演している。
少女マンガが原作で、いまをときめく若手俳優・女優が集結と聞くと、最近はやりの胸キュンものに思われそうだが、ファンサービス的な恋愛ギミックは皆無に等しい。それぞれ孤独だった少年と少女が出会い、徐々に気持ちを通じ合わせていく中で、さまざまな「初めて」を経験し、人間として成長していく。分かりやすく言ってしまえば、ただそれだけのことを、高校1年の春から卒業まで、丹念に紡いでいる点は非常に好感が持てた。
菅田さん演じる怪物・春のキャラクターこそ、イケメンで天才、身体能力も高く、加えて大物政治家の息子という“とんでも設定”だが、登場人物はみな心のどこかに悩みや不安、葛藤、悔恨を抱えた等身大の高校生。彼らの織り成す群像劇としても魅力的。月川監督の演出の下、いつになく感情の起伏が少ない真面目キャラに徹し、その繊細さで新境地を開拓している土屋さんの演技には特に注目してほしい。(山岸睦郎/MANTAN)