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女優の朝倉あきさん主演の映画「四月の永い夢」(中川龍太郎監督)が12日から公開される。朝倉さん演じる主人公が、ある出来事をきっかけに、亡くなった恋人の喪失感から解放されていく姿を描く。一人で考え込んでしまう主人公に共感したと語る朝倉さんに、演じたときの心境や共演した三浦貴大さんの印象、さらに最近はまっているものを聞いた。
◇感情の機微を丁寧に
朝倉さんが演じるのは、3年前に恋人が亡くなってから時間が止まったままの27歳の滝本初海だ。恋人の死をきっかけに中学校の音楽教師をやめ、今は「居心地のよい」そば屋でアルバイトをしながら、毎日をなんとなくやり過ごしている。そんな生活が、恋人が最後にしたためた手紙をきっかけに動き出し、初海の心も少しずつ変わっていく……というストーリー。
「過去にとらわれていて、自分の気持ちの置き所が分からなくて、道に迷っているような、孤独も持ち合わせているような、とても不思議な雰囲気を持っている女性だなと思いました」と台本を読んだときの初海に対する印象を語る朝倉さん。
朝倉さん自身、「一人で悩んでしまって、そこで止まってしまうことがよくある」という。それだけに、「前に進むことも、かといってそこにとどまることもできない、すごく微妙であやふやな状態」にある初海の心情は「なんとなく理解できた」半面、「もどかしくもありました」と複雑な心境を明かす。ただ、初海が過去に起きた出来事を「しっかり自分の中で受け止めて、前に進みたがっている」ことは感じられたため、その感情の機微を「丁寧に」演じていくことを心掛けた。
◇「居心地よかった」三浦貴大との共演
実は初海は心の奥に秘密を抱えており、それに対して、「誰かに相談するわけでも、解決に向けて行動するわけでもなく」、ひとりで抱え込んでしまっている。そんな初海に一歩踏み出すきっかけを与えるのが、三浦貴大さんが演じる、染物工場で働く志熊藤太郎(しぐま・とうたろう)だ。
三浦さんとは、2013年のウェブドラマ「ファーストクラス レンアイカンソク」に続いて2度目の共演。「三浦さんは、すごく真摯(しんし)に、取り繕うことなく、ナチュラルに役作りをされる方なので、私が関わっていくことでそれが変わってしまったり、私自身が影響を受けたりするのも嫌だなと思った」ため、三浦さんとは芝居でコミュニケーションをとる程度にとどめ、撮影中は、積極的に話しかけることはしなかったという。それがむしろ朝倉さんには「居心地よく」、「ほどよい距離感で私を見守ってくださっていました」と三浦さんの心遣いに感謝する。
◇はまっているのは…
「昔ながらのものが好き」という朝倉さん。畳の部屋に住み、旧式の扇風機やラジカセを愛用し、かつての教え子と一緒に銭湯へ行ったりする初海とは、「ナチュラルなところが似ている」と指摘する。
初海はまた、シャツにジーンズに斜めがけの布製のバッグなど、服装もナチュラルだ。アクセサリーもほとんど着けない。朝倉さんも、普段はシャツにジーンズやラフなワンピースなどシンプルでカジュアルな服装が多く、白、青、紺といった色を好んで身に着けるという。
ただ、最近、イヤリングに心引かれるそうで、「これまではイヤアクセサリーにはまったく興味がなかったのですが、20代後半になって、やっとそういうキラキラしたものを身に着けても違和感がなくなってきたような気がしています。小さいものから着けていきたいなと思っています」と笑顔を見せる。
朝起きて、朝食をとり、自転車でアルバイト先のそば屋に行き……と平穏かつ規則正しい生活を送る初海だが、朝倉さんも「よく寝ること」を心掛けており、「8時間はなるべく寝たい」と思っている。ちなみに朝倉さんは、最近、その栄養と美容効果に注目が集まっている「甘酒」にはまっているそうで、当初、「飲む点滴」という言葉を「まゆつばもの(笑い)」と思っていたそうだが、「これが本当の甘酒なんだよと人に勧められて飲んでみたら、甘酒っておいしいとはまってしまって(笑い)。また、調子もすごくいいです」と、その効果を実感している様子。砂糖や塩などの添加物のない、米と米麹で作られた一升瓶サイズのものを購入し、2週間ほどで飲み切っているそうだ。
◇すべては演出家のお陰
映画「横道世之介」(13年)ではアイプチの女子大生、ドラマ「下町ロケット」(15年)では技術者、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(17年)では主人公直虎の養女、そして今作の初海と、全く異なるキャラクターを演じてきた。しかし朝倉さん自身は、「演じ分けている自覚はない」という。俳優は、演技をしているとき、自分を客観的に見ているという話をときどき耳にするが、それについても、「私はあまり器用ではないので、客観的には見られてはいないです。(役に)入り込んでいるといえば入り込んでいる状態なのだと思いますけど……自分でもあまりよく分かっていないです」と打ち明ける。
その上で、どんな役を演じていても、「演出家さんのやり方によって変わってくるものが大きいので、もし何かイメージが違うというものがあるとしたら、それは演出の方のお陰だと思います」と言葉をつなぐ。
自身、「普段はおしゃべりで、ばーっとしゃべるタイプ」だそうだが、今回のインタビューでは、言葉を一つ一つ選びながら静かに語っていた。その姿や言葉に、控えめで誠実な人柄がのぞく。今作は、17年のモスクワ国際映画祭で、国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰をダブル受賞した。自身の主演作が受賞したことは、今後の演技の「励みになります」としながら、大っぴらに喜ぶそぶりも見せず、「作品全体にいただけたものなので、個人的に思うことより、賞をいただけるというのは、作り手としてすごく喜びの大きいものではないかと想像するので、中川監督と、映画を届けるために尽力した人たちの情熱が報われてよかったなと、本当におめでたいことだと思っています」と中川監督をはじめとする映画に関わった人々をたたえた。
<プロフィル>
あさくら・あき 1991年9月23日生まれ、神奈川県出身。2006年の東宝シンデレラオーディションに応募し、ファイナリストになったことをきっかけに芸能界入り。08年「歓喜の歌」で映画デビュー。テレビドラマ主演作「とめはねっ!鈴里高校書道部」(10年)を経て、NHK連続テレビ小説「てっぱん」(10年)や、「下町ロケット」(15年)、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(17年)など多数出演。映画では「神様のカルテ」(11年)、「横道世之介」(13年)、高畑勲監督の遺作となった劇場版アニメ「かぐや姫の物語」(13年)では、ヒロインの声を担当。舞台やラジオでも活躍している。映画「BLOOD-CLUB DOLLS」が18年秋公開予定。
(取材・文・撮影/りんたいこ)